

机の上の翻訳の仕事そのものはいまも昔も変わりません。ただし最近は日米同時公開といった流れで未完成のビデオで仕事をすることが増えてきました。その上、公開前に映像が盗まれることを恐れて、台詞をしゃべっている俳優以外、画面が真っ黒に塗りつぶされていたりする。アクションが分からないわけですから、「Go!」という台詞があっても「行け!」なのか、「逃げろ!」なのか、「やっつけろ!」なのか訳しようがない。
翻訳者には頭の痛い話です。しかし、最近「大作」とうたわれるハリウッド映画は全て、こういう状況といっても過言ではありません。
意外でしょうが、あまり出来の良くない映画、つまりシナリオがよく練られていない映画ほど翻訳するのが難しい。いつの間にか登場人物がいなくなって、「あの人はどうなったの?」という腑に落ちない展開のシナリオのことです。反対に優れた映画には1つとして無駄な台詞がなく、全ての言葉に存在意義がある。たとえ内容が哲学的で難解な映画であっても、シナリオが素晴らしいものは翻訳しやすいものです。
特に印象に残っている作品を挙げるとしたら──ミュージカル映画『エビータ』のラストシーンですね。演じるマドンナが「私は後悔していない」と、歌いながら死んでいくのですが、そのときの台詞「The choice was mine.」(私は人生の選択を自分でしてきた)はとても気に入っています。
俳優は映画を作る上での道具のひとつにすぎないので、俳優自身の素顔は関係ありません。ただ、監督にはそれぞれスタイルがあります。例えばウディ・アレンには独特のユーモアがあり、各行にジョークが盛り込まれている。限られた文字数でそれを理解させることは不可能に近いですね。また、リドリー・スコットの作品であれば、カット場面がとても多いのが特徴。つまり場面が目まぐるしく移り変わるので、当然台詞も短くなってしまう。いかに短い言葉で内容を追うかが勝負になります。


残念ながらありません(笑)。たとえ想いを寄せていた俳優であっても、本人に会った瞬間にときめきは消えてしまうものです。もちろん素晴らしい人たちであることは変わりないですよ。サム・シェパードとはまだ会ったことがないので、どんな人なのかしら? 素敵な人なのかしら? と想像することはあります。
映画を観終わった後に「字幕を読んだ」という意識が残らない翻訳が良い翻訳だと思っています。スポンジが水をあっという間に吸い込むように、字幕が頭の中にスッと入り込む──あたかも英会話を聞いて理解したと錯覚させる翻訳ですね。映画にのめり込んでいれば字幕は意識しないもの。読み切れない字幕、意味が通じない字幕だと観客は映画よりも字幕に意識がいってしまうので、それは絶対に避けるべきことです。翻訳家を目指している人の多くは、英語やフランス語を勉強していればいいと思っているかもしれませんが、それはあくまでもスタート。字幕翻訳の上で一番決め手になるのは日本語です。英語の日常会話をいかに適切な日本語で、しかも端的に言えるかが重要──母国語を知ることが大前提です。
この作品で難しかったのは、ジョディ・フォスターが演じる作家、アレックス・ローバー(本名はアレクサンドラ・ローバー)と少女のニムがメールのやり取りをするシーンです。ニムはアレクサンドラのことを男だと思っているので、人称や性別をどう訳すのか気をつけました。コンクールにもこれに似たトリッキーな問題を取り入れていますから、ぜひ頑張ってほしいです。
(text:Rie Shintani/Photo:Yoshio Kumagai)

東京都出身、『地獄の黙示録』で注目され、以降数多くの大作、話題作を担当。第一線で活躍を続ける、日本の映画字幕翻訳の第一人者。海外映画人との親交が深いことでも知られる。
日本語を学ぶことの大切さを改めて痛感しました。いつかは戸田さんのように通訳と字幕翻訳をこなせるようになりたいです。(シネマカフェ読者・上條みずかさん)



| 応募資格 | どなたでもご応募いただけます。 |
|---|---|
| 応募条件 | お一人様、1シーンにつき1作品、最大3作品までご応募できます。 |
| 応募方法 | WEBまたはFAXにてご応募できます。 |
| 審査部門 | 審査は以下の3部門別に行います。 中学生以下の部/高校生の部/大学生・一般の部 |
| 応募締切 | 2008年9月5日(金)19:00まで |
| 審査員 | 戸田奈津子さん(審査委員長)/神田外語グループ教職員 |




表彰状・トロフィー&
Apple「MacBook」+奨学金5万円(1名)
ペンタックス「K200Dレンズキット」+奨学金5万円(1名)
ニンテンドーDS Lite
+スクウェア・エニックス「地球の歩き方DS」全10タイトルセット
+奨学金5万円(1名)
表彰状&ブリティッシュヒルズ宿泊券(ペア)
表彰状&角川映画セレクト・映画DVD10枚セット
表彰状&『幸せの1ページ』劇場鑑賞券&「幸せの1ページ(NIM'S ISLAND)」英語版原作本(人数分)
発表:
厳正な審査の上、2008年10月中旬に、コンクールWEBサイトにて発表いたします。
受賞者の方々には、コンクール事務局より別途ご連絡させていただきます。
お問い合わせ:神田外語グループイベント事務局(メールフォーム)
フリーダイヤル 0120-815-864(日・祝日及び、8/12(火)〜8/17(日)を除く10:00〜17:00)
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コンクール開催を記念して、本作の劇場鑑賞券をペアで50名様にプレゼント。コンクールに応募した後は、劇場で戸田さんの字幕を確かめて!
〆切り:8月31日(日)
募集は〆切りました。
多数のご応募ありがとうございました。

ベストセラー冒険小説家・アレクサンドラ(ジョディ・フォスター)は、潔癖症の引きこもり。彼女が書くヒーローとは似てもつかない女性だ。そんなある日、アレクサンドラは南の島の少女・ニム(アビゲイル・ブレスリン)から、物語のヒーローに宛てたSOSのメールを受け取る。ジャングルで独りぼっちのニムを救うため、アレクサンドラは一大決心をし、初めて家の外へ出てサンフランシスコからボルネオ、そして南太平洋へと旅立つ。果たしてニム、そしてアレクサンドラの運命は!?
2008年9月6日より丸の内ピカデリー2ほか全国にて公開
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