
と、2人ともこの作品を通じて大きな成長があったと語る。
美波「脚本を読む前に、本橋(圭太)監督の『RED LINE』という作品を拝見したんですが、そのリズム感やカット割りの多さがとてもアメリカっぽかったんです。だから『逃亡くそたわけー21才の夏』もきっとそういうイメージなのかなと思って──テンポのいい映画だと思いました。花ちゃんを演じていて感じたのは、絡まった結び目をちょっとずつ解いていくような喜び。とても演じ甲斐がありました」。
吉沢「物語は花ちゃん目線で進んでいきます。だからこそ、なごやん役はいろいろやりようがあるなって思ったんです。今回は撮影中に台本をまるごと何度も読み返してみたんですが、それは今までやったことがない作業。現場で生まれた感情や予想外のハプニングで、準備した自分の考えと合わなくなっても、一から台本を読み返してもう一度組み立てる──なんか、その作業が面白かったんですよね」。
1ヶ月近く家に帰らずの撮影の日々。映画同様にロードムービーを体験したわけだが、「どっぷり撮影に浸ることができて、ほんとに楽しかった!」と、美波さん。「この映画の面白いところはロードムービーでありながらも、いろいろな視点で見られること」という吉沢さんは、撮影前に『パリ、テキサス』といったロードムービーを何本か観て準備をしたそう。
また、準備と言えば美波さんは東京出身でありながらも博多弁に挑戦! 流暢な博多弁を披露している。
美波「福岡の方に読んでもらった台本をテープに録音。それを繰り返し聞いて耳を慣らしましたが、イントネーションのコツを掴むまでは大変でした(苦笑)。ただ、面白かったのは方言の台詞が思いのほか心地よかったこと。感情が出しやすかったんですよね」。
それとは対照的に、なごやんは“東京コンプレックス”を持っている名古屋人。
吉沢「鬱の方のとる行動や発言を知っていたいとは思っていて──精神病院に入っていたことのある人の日記をネットで読んで参考にしたりしました。あと、弱々しいなごやんを見せたいと思ったので、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』のスタッフ、ヘイポーさん(斉藤敏豪)のVTRを見てリアクションを研究。なぜかそこになごやんを演じるヒントがあると思ったんです(笑)」。
一方、美波さんは演じるにつれて「なぜ、花ちゃんがこんな台詞を言うのか分からない……」と、壁にぶつかったこともあったのだとか。
美波「そんな時、吉沢さんに『もう一度、台本読み直してみたら?』って言われたんです。撮影自体もロードムービーのような感じだったので、台詞を読み返すことで、花ちゃんと自分の経験が自然と重なった。それを感じたときはもの凄く心地よかったです。」
熊本県の阿蘇山をはじめ、ほとんどの撮影が山の中だったということもあり、「ハプニングがない日はなかった!」と振り返る2人。特に思い出深いエピソードを訊いてみると──。
吉沢「台風とか霧とか、とにかくハプニングの連続でした。一番危険だったのは阿蘇山のシーンですね。ガス濃度が低い時を狙って撮影しなくちゃならなかったので……」。
美波「ほんといろいろあるんですが、吉沢さんの魂が抜けたような顔かな(笑)。ホテルで仮眠をとった後の顔が別人のようになってしまったことがあって、あれにはびっくりしました。あと、旅の後半で花ちゃんの感情が徐々に高まってホテルで泣くシーン。自分的にも気持ちのいい演技ができているな、と思っていたら──『ごめんなさいっ! カメラが回ってませんでした』って声が……(苦笑)。今ではいい思い出です」。
撮影から1年以上たっていても鮮明に当時のエピソードが思い出せるというのは、オールロケ&ロードムービーさながらの旅を体験したからこそ。最後に「ここを観てほしい!」というそれぞれが思う作品の見どころを訊いてみた。
美波「花ちゃんとなごやんのように躁鬱を抱えていない人であっても、人生につっかかりを持っている人って多いと思うんです。そのつっかかりがポンッと抜けるような、そんな作品です」。
吉沢「映像もカメラワークも今までないような感じに仕上がっている映画です。音楽もかっこいい。そういうビジュアル的な面白さも観て欲しいですね。もちろん、内容も──結果どうこうではなく、花ちゃんとなごやんのように“経験する”ことに意味があるんじゃないかなと。一歩踏み出せずにいる人は、きっと何かを持って帰れると思います」。
(text:Rie Shintani / photo:utamaru)