「世の中をもっと美しく見るようになった」『サマリア』キム・ギドク監督インタビュー

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『サマリア』キム・ギドク
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「援助交際」という行為を通して、罪とともに生きる人間の純粋さと狂気を見つめた『サマリア』。10代の少女を主人公にした本作で2004年のベルリン映画祭銀熊(監督)賞に輝いた韓国の異才、キム・ギドク監督が来日し、日本での公開を前に自作への思いを語った。

『魚と寝る女』『悪い男』などで常に世の中にショッキングな影響を与えてきたキム・ギドクだが、『サマリア』ではクァク・チミンとハン・ヨルムという若く美しい2人の女優がその世界観を担っている。彼女たちとの出会いについて監督は「2人とも無名の新人だったがとても頭がよく、一緒に仕事ができて嬉しい」とコメントを寄せた。ちなみにチェヨン役のハン・ヨルムはキム・ギドク監督の最新作『弓』でも主演を務めている。

演技についてはすべて役者に任せているそうだが、シナリオに書かれていない登場人物の人生についてはよく話し合うという。「俳優たちには“登場人物を真似るのではなく、その役自身として生きて欲しい”と必ず言います。しかしつい最近もある韓国の女優が俳優としての人生を悩み、自らの命を絶ってしまうという悲しい事件があり、役を生きることによって俳優は魂に傷をたくさん負っているのだなぁと改めて思いました」と、22日に亡くなった女優のイ・ウンジュ(『ブラザーフッド』)の死を悼んだ。

『サマリア』が作られるきっかけになった「援助交際」は韓国でも問題になっているが、あまり報道はされないという。この映画ではその存在を世間に知らしめると同時に「加害者と被害者の関係からではなく、人と人との問題としてこの事件を描けないかと思いました」という監督自身の立場も示している。

2004年だけでも『サマリア』でベルリン映画祭銀熊(監督)賞、『うつせみ』でヴェネチア映画祭監督賞を受賞し、いま最も三大映画祭(カンヌ・ヴェネチア・ベルリン)制覇に近い監督として世界の注目を集めるキム・ギドク監督だが、その実感はないと言う。「自分は映画祭に行って賞を獲る人ではなく、映画を作る人であると考えています。私が映画を作ることと、私の作った映画がたどる運命は別のものです。受賞を望む人がいる反面、獲らないようにと望んでいる人も多いのではないでしょうか」。

キム・ギドク映画の代名詞とも言える“痛み”の世界観に“癒し”の割合が増えているのでは、との指摘に対しては「映画を作り始めた頃は世の中に対するコンプレックスや憤怒が爆発していて加虐と自虐の反復でした。しかし『コースト・ガード』('02)以降は社会に対する自分の見方が変わってきて、世の中をもっと美しく見ようとするようになりました」と、自身の変化を認める発言をした。

「私の映画は“クローズアップ”、“フルショット”、“ロングショット”の3タイプに分けられますが、『サマリア』は人間の全体を見る“フルショット”の部類に入ります。それぞれの異なった視点でとらえたイメージをふまえて観てもらうと、私の映画をより正確に理解し、魅力を味わっていただけると思います」と締めくくった言葉からは、自作に対する愛情と世界に認められつつある映画監督としての勢いもうかがえた。

劇中音楽にエリック・サティの「ジムノペディ」を用いた理由について「著作権が発生しないから(笑)」と答えるなどユーモアも垣間見られ、以前とは別人のように明るい表情が印象的だったキム・ギドク監督。この続きはぜひ劇場で確かめて欲しい。
《text:cinemacafe.net》
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