『マリといた夏』イ・ソンガン監督来日インタビュー

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夏になっても衰えを知らない韓国映画。秋に向けて話題作が待機する中、夏にぴったりの韓流アニメーションがついに上陸する。『マリといた夏』は権威あるアヌシー国際アニメーションフェスティバルでグランプリを受賞、イ・ビョンホンやアン・ソンギが声優として参加しているのも侮れない。監督を務めたイ・ソンガンにその制作秘話を聞いた。

大学で心理学を学んだ後、絵画の道へ進んだイ・ソンガン監督をアニメーションの世界に引き込んだのはヨーロッパの短編アニメーション映画だった。「それらとの出会いによって商業的な価値とは違う、美術や芸術としてのアニメーションの可能性に興味を持ちました。具体的にはロシアの作家、特にユーリー・ノルシュテイン(『話の話』)などに影響を受けました」。ちなみに宮崎駿監督を始めとするスタジオ・ジブリのアニメ作品も大好きだという。

上映時間80分のこの映画が完成するまでには、約3年の期間と30億ウォン(約3億円)の製作費がかかっている。「製作期間が長すぎて退屈でした(笑)。自主映画で短編を作っていたときのノウハウをそのまま応用したので、独自のアニメ制作システムを学ぶ必要があったのです。見習いの学生にも仕事をさせたりして、結果として既存のアニメとは違うものになりました」。

そんな手作りのささやかな作品に、イ・ビョンホンやアン・ソンギの名が声優としてクレジットされているのはファンならずとも気になるところだろう。「声優は、本編が完成してからイメージに沿ってキャスティングしましたが、みな一生懸命で実力があり、誠実に仕事をしてくれました」。

とはいえ韓国のアニメ事情はまだまだ厳しいという。「実写のほうが圧倒的に製作本数は多く、アニメは子供向けのものがほんのわずかに作られているだけです。80年代に長編アニメが製作できなかった経済事情も原因のひとつです。今は若手を中心に良質な短編が作られるようになってきてはいますが、商業的に成功したものは多いとは言えません」。

もの静かながら時折り交える冗談にはユーモアのセンスが光る監督。本編に出てくる「ジュンホ」にどことなく似ている。そんな監督のお気に入りは風呂場のシーンだという。「韓国の田舎には昔は大衆的な風呂場があり、子供の頃にふざけた思い出があります。ただ、銭湯のシーンは18歳未満が観覧禁止にならないように気を使いました(笑)」。

「私にとって映画は他人と心を通わせていく方法のひとつなので、監督として作り続けられるだけで幸せです。アニメは全て思い通りにできますし、実写は人間の内面を描くのに優れています。映画とはその2つの長所を合わせたものではないかと思います」。誰よりも、自分自身のためにこの映画を作りたかったというイ・ソンガン監督。「これは私の精神的な自画像です。40代の疲れた精神を持った同年代の人に観てもらいたいです。日本の観客にもこの映画を観て幸せになってもらえれば」。この夏休みはノスタルジックなアニメーションの世界でしばし癒されてみては?
《text:cinemacafe.net》
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