芸術の秋。映像のアートに浸る vol.3 キム・ベイシンガーは、かなりのツワモノ?

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ジョン・アーヴィングの小説を映画化した『ドア・イン・ザ・フロア』に登場するキム・ベイシンガーは、ほんとうに美しい。1953年生まれだから、今年で52歳。若者を一目で魅了してしまう大人の女の役柄を、ごく自然に演じています。キム・ベイシンガーといえば、かつてはお色気路線まっしぐらで、あまり女性ウケするタイプではなかったはず。何しろ、16歳にしてジュニア・ミス・コンで堂々優勝。モデルから女優に転向し、美貌を武器にヒロイン役を次々こなしていたのですから。それでも、サスペンス、コメディ、官能映画(って『ナインハーフ』のことです)など、いろいろなジャンルに挑戦していたあたりが、ただ者ではなかったけれど。

若いうちは同性に受ける必要もないのでしょうが、女優としてずっとやっていくためには、“哀れなお色気おばさん”になる前に、どこかで路線変更をする必要があったはず。でも、なんとなく、美人女優であるがゆえにツブシのきかない感じが漂い始めていたところに、ドカンと『L.A.コンフィデンシャル』でオスカー受賞。今では、美しき演技派という評判が、すっかり定着しています。

いつまでたってもゴージャスなのに、『8 Mile』で見せたような鄙びた感じを出すのも上手いし、『セルラー』で見せたような神経衰弱感を醸し出すのもお得意。今回演じているのは、大きな喪失感を抱えた女性で、精神的に危うく不安定。そんな、とてつもなく孤独な女性を、単なる変人のように見せるのではなく、悲しみの権化として見せるには、かなり高度な演技力が必要なはず。共感はできなくても、観客が心のどこかでその悲しみを理解できる。そんな人物を演じきった彼女は、オスカー女優の名に恥じない、さすがに大した女優なのでした。

演技派を目指す美人女優に苦労はつきもの。可愛い子ちゃんから脱皮するために、これまでもいろいろな女優が悪戦苦闘してきたのはご存知の通り。エリザベス・テーラーが汚れ役に挑戦したり、ニコール・キッドマンが特殊メイクをしてみたり、シャーリーズ・セロンが増量したり。そういった、“いかにも”な苦労を表に出さず、うまく切り抜けたキム・ベイシンガーは、かなりのツワモノと言えるのかもしれません。


《text:June Makiguchi》
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