2006年を占う映画 vol.1 『ホテル・ルワンダ』

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1年間の映画館総入場者数が、前年比で7〜8%減になるとの調査がでていた2005年のアメリカ。1985年の12%減に続く、20年で最低の落ち込みになってしまったそうなのです。お正月早々、陰気な話で恐縮ですが、これぞ来年の映画界を占うための大きな手がかり。低迷するハリウッドでは、2006年、事実に基づいた映画は多く作られ、公開されていくはずだからです。

その方向性を象徴している代表的な映画が、1月14日公開の『ホテル・ルワンダ』。内戦によって1994年に引き起こされた大量虐殺のさなか、多くの人々を自らが勤めるホテルに匿ったポール・ルセサバギナの物語です。初めは、家族を守るために必死だった男が、やがて彼を頼ってやってくる人々、結果的には1200人もの命を救ったという話です。

この映画は、2004年12月に全米公開。数館での小規模上映だったにもかかわらず、評判が評判を呼び、翌月には2300館での拡大上映となった作品。同年のアカデミー賞には、主演のドン・チードルをはじめ、主要3部門で賞レースに絡みました。それを機に、公開のめどがたっていなかった日本でも知られるところとなり、ネットでの署名活動がスタート。3ヶ月で4000件もの署名が集まり、緊急公開に至ったのです。

人間から良心を引き出すことができる映画。それが一番の魅力なのかもしれません。映画を観るだけで誰かが救われるわけでもないし、世の中が急に良くなるわけでもない。でも、いろいろなことに気づいていくことで、皆が力をあわせるようになれば、世界はもっと良くなるのでは? 映画自体はもちろんのこと、作品にまつわるさまざまなエピソードが、その可能性を強く訴えかけているようにも思えます。

映画の中で印象的なシーンのひとつ。それは、虐殺を知りながら、何も手を下さず見過ごそうとする先進国へ戻らざるおえない西欧人ジャーナリストが、「恥ずかしい」とつぶやくシーンです。困っている人がいると知っているのに、何も手助けしないのは、確かに人間として恥ずかしいこと。それを自覚させてくれ、「今こそ、何か始めたい!」と思わせてくれる、とても美しくパワフルな映画なのです。

《text:June Makiguchi》
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