2006年を占う映画 vol.3 2006年、邦画を面白くするのはベテラン? 『カミュなんて知らない』

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新作『輪廻』が世界40カ国で公開されるという『呪怨』の清水崇監督。自作のリメイクでハリウッドデビューを果たした『リング2』の中田秀夫監督。ホラー映画とその作り手たちが世界でメジャー級の注目を集める邦画界。益々、若手や中堅クリエイターたちに期待が集まる中で、近頃は「さすがはベテラン!」という凄みを見せつけてくれる監督たちの活躍にも注目が集まっています。

『博士の愛した数式』の小泉堯史監督もそうだし、『カミュなんて知らない』の柳町光男監督もそう。どちらの作品も、昔ながらの由緒正しき日本映画の風格を残しながら、新しい時代のエッセンスを取り入れた秀作なのです。

とくに、『カミュなんて知らない』は、『さらば愛しき大地』の柳町監督が、10年ぶりに手がけた作品とあって、国内外のファンを喜ばせている作品。監督が得意とする“不条理”をテーマに、実際にあった殺人事件を題材にした学生映画の製作現場を舞台にしています。監督自らが早稲田大学で客員教授をしていた経験から生まれているだけあり、登場人物のほとんどが学生。しかも、映画の視点は、上から見たオヤジ的なものではなく、完全に学生たちと同化しています。だからこそ観ている者は、学生気分を満喫できたり、次々に持ち上がる難題に彼らと一緒にハラハラしたり、怒ったり、冷たい視線を送ったりできるのかもしれません。しかも、映画の構成は、学生たちの日常と、学生映画の世界とをリアルに一体化させているものなので、スクリーンの反対側にいる者ですら、“不条理劇”の中に放り込まれたような、とてつもない緊張感とやるせなさを感じつつ、恐怖におののいてしまうのです。実は、ホラーの次に日本を、いえ世界を恐怖に陥れるのは、「ヤナギマチの不条理ドラマ」だったりして。

低迷していた邦画界を救ったのは、宮崎アニメやホラーだったかもしれませんが、柳町監督の新作を観ていると、ベテランが持つ技と経験の詰まった骨太映画をもっと見たい、そして日本映画をもっと盛り上げてもらいたいと思うもの。エンターテインメント性の高さと硬派な社会的テーマの融合、そして何より緻密な構成は、やはり超一流のベテランだけが次世代に伝えられるものであるはず。2006年は、海外だけでなく、日本にもこんな巨匠たちがいて、現役バリバリで活躍中であること、ぜひ多くの人たちに実感してもらいたいものです。

《text:June Makiguchi》
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