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『薬指の標本』ディアーヌ・ベルトラン監督来日インタビュー

「博士の愛した数式」の映画化も記憶に新しい作家・小川洋子の原作に、フランス人監督が心酔。「薬指の標本」を偶然立ち寄った書店で見つけた友人から紹介されたというディアーヌ・ベルトラン監督は、読み始めてすぐにその世界観に夢中になってしまったという。

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「博士の愛した数式」の映画化も記憶に新しい作家・小川洋子の原作に、フランス人監督が心酔。「薬指の標本」を偶然立ち寄った書店で見つけた友人から紹介されたというディアーヌ・ベルトラン監督は、読み始めてすぐにその世界観に夢中になってしまったという。

「冒頭、工場で働くヒロインが不注意で欠けたビンに触れて薬指の先を切り落としてしまいます。ああいう事故はほんの一瞬のうちに起こりますから、ゆっくり描くことはできなかったんです。つまり彼女は薬指を失ったあとに特別な人として生まれ変わったわけです」。

事故後、知り合いのいない港町に移ってきた彼女は、小さなホテルにやってきて、港で働く船員と同じ部屋をシェアすることに。早々に仕事を探し始めた彼女の目に入ったのは、深い森の中にある古びた建物に貼られた、とある求人募集だった。「ヒロインは普通の世界で生きていくこともできたのに、不思議な魅力を持つ標本技師に魅せられた。それは、彼女が特別な人になったからなんです。不幸な出来事が彼女の背中を押すようにしてどんどんかつて経験したことない人生に導いていく。やがて彼女と標本技師との関係は絶対的な、100%の関係になっていきます。密度は高いけど、標本技師はミステリアスな人でいつも彼女と距離を保って、恋人同士のように接することがない。もし彼女がホテルで同じ部屋の船員と恋に落ちていたら、普通のラブストーリーになったかもしれないわね。でもあの船員は、すぐにいろんな女の誘惑になびいてしまうからダメね(笑)」。

人々が永遠に遠ざけたいと思う品が持ち込まれる標本室。そこでひとりで作業する標本技師。彼に対する彼女の気持ちは徐々に強いものになっていく。「でも標本技師と生きていこうとすると、ものすごく深いところまで分かり合わなければならない。それはリスクがあってコワいことかもしれないけど、彼女はそれを選んで受け入れていくんです。小川洋子さんの作品には、力強くてナゾに満ちた存在が多いんです。もしこの作品を見る方で、なんともいえない不思議な魅力を持つ相手に心を惹かれたとしたら、迷わずにスッと入り込む勇気を持てばいいと思うわ。きっと新しい発見があるハズだから」。

「この作品は物語の発端〜展開〜終えんという、ごく普通の作品とはタイプが違います。特に音楽にも注目してみてください。とてもゆっくりとしたリズムで、まるで映画を見ながら旅をしているような、そして旅をしている自分自身と最後に正面を向いて出会えるような作品です。セックスも美しい愛も出てくるけど、それらすべてが自分自身を見つける深い質問に行き当たる映画だと思います」。

ちなみに、監督自身に何を標本として残したいかを尋ねると、「この指輪ね」と手元のリングを大事そうにさわった。「すごく大切にしているからこそ、自分の近くから離すこともあるでしょ。愛するがゆえに別れることもあるように、ね」。

《text:Shin Kumagai》
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