『フラガール』李相日監督インタビュー

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公開を目前に米アカデミー賞最優秀外国語映画部門の日本代表として出品されることが決まり、幸先のよいスタートをきった『フラガール』。昭和40年の常磐炭鉱が常磐ハワイアンセンター(1990年にスパリゾートハワイアンズに名称変更)として生まれ変わる軌跡を描いた感動のダンスムービーの魅力、面白さを李相日(り・さんいる)監督に語ってもらった。

「“常磐ハワイアンセンター”っていうネーミングがすごいですよね(笑)」と、名前が印象的だったという李監督だが、実はスパリゾートハワイアンズの存在は知らなかったそう。
「シナリオを書く段階で初めて現地を訪れたんです。失礼ではあるんですが名前からはしょぼいイメージがあって……でも実際は立派な施設だった。40年前にあれを見た人たちはもの凄くたまげたんじゃないかな。東京ドームができたときのような、いや、それ以上のインパクトがあったと思いますよ」。確かに炭鉱にハワイという発想は何とも奇抜だ。

続いて、監督してみたいと思ったこの作品の魅力を訊ねてみた。
「この映画には2つの大きな要素があって──ひとつは、少女たちがひとつの目標に向かって頑張るという、ここ数年定番になっているストーリーであること。もうひとつは、石炭から石油に変わっていく時代の変革期に生きた人々や日本の歴史から消滅してしまった影の部分に光をあてていること。ひとつの映画のなかに光と影が混在している、そこに監督する意味があると思ったんです」と語るように、ダンス教師と少女たちの友情、揺れ動く時代の波に揺さぶられた男たちの悲哀が丁寧に描かれている。

そして、最大のみどころは何と言ってもフラダンス! 監督がフラガールたちに求めたものは、意外にも「容姿端麗ではないこと」だった。
「炭鉱の煤けた少女たちが、安っぽい言葉ですけど蝶になるというか──そのギャップを描きたかったんです。だから、大袈裟に言うと美人はいらないなと(笑)。もちろん、ダンサーである前に女優であることは絶対条件。映画では数名にしかスポットをあてられないけれど、ダンサーひとり1人に人生がある。全員で踊ったときにそれが表現できないとダメだと思ったんです」。

そうして選ばれた女優たちは、3カ月以上の猛特訓を重ね撮影に挑んだ。彼女たちの上達を側で見ていた監督は「上達してくれないと本当に困る!と思って応援してました。でも、自信が出てくると人間って表情が変わってくるものなんです。それを傍目で見ることは感慨深かったですね」と、撮影を振り返る。なかでも松雪泰子、蒼井優のソロのダンスシーンは美しく力強く迫力に満ちていた。ダンス教師・平山まどか役の松雪泰子について──
「松雪さんは本当に一生懸命な人。披露するダンスはひとつだけなんですが、踊り子たちが踊る全てのダンスをマスターしたんです。その説得力はすごいと思いました」。

一方、母親の反対を押し切ってダンサーの道を選ぶ美紀子役の蒼井優を「モンスター女優」だと言う李監督。
「僕が行きたいところと蒼井優が行きたいところが同じだったんですよね。例えば、女優・蒼井優が踊るのではなく、キャラクター・紀美子が踊るという捉え方とか──目指している先が同じだった。一を聞いて十を知るっていうのかな、こっちが得るものの方が大きかったですよ」方々の監督がこぞって彼女を起用したがるわけはそこにあるのかもしれない。

また、炭鉱がハワイに変わるという見た目の変化も重要だったと話す。
「炭鉱町のズリ山(石炭屑の集積の山)をハワイのシンボルであるダイヤモンドヘッドに見えるようにしたいっていうのはありましたね。あと、“ハワイアンダンサー募集”とか張り紙ひとつにもけっこうこだわりがあるんですよ(笑)」。美術監督は『THE 有頂天ホテル』『キル・ビル』の若き映画美術の巨匠、種田陽平。ちなみに李監督とは『69 sixty nine』に続く2度目のタッグとなる。

最後に監督自身もフラダンスをやってみたくなったのか訊ねると「ならないです(笑)」という答えが返ってきたが、映画『フラガール』が空前のフラダンスブームの追い風となることは間違いないだろう。

《text:Rie Shintani》
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