鏡リュウジが読み解く『マッチポイント』の魅力とは!?

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最後の最後のドンデン返しが、一番占いに関わってくる問題。単なるLuckを超えた、まさに占星術的な物語。

これは現在恵比寿ガーデンシネマ、シネスイッチ銀座ほかにて全国公開中のウディ・アレン監督最新作『マッチポイント』について、心理占星術家の鏡リュウジが寄せたコメント。映画の大ヒットを記念して、鏡リュウジ氏によるスペシャル・トークショーが行われた。本編上映後に登場した鏡氏は「今日は男性が多いですね。僕のトークショーはいつも95%が女性なので今日は景色が違いますね。映画も大ヒットということで、配給の担当者さんから先日大入袋が送られてきました! 中身は何が入っているかと思ったら…なんと、5円玉。縁起モノですからね」と会場の笑いを誘うと、占星術からみる『マッチポイント』について語り始めた。

司会「鏡さんがこの映画に出されているコメントは実に興味深いですね! この映画は、占星術という点からどうコメントできますか?特にラストに関してはどうでしょう?」

「先ほどスタッフの方から聞いたのですが、意外に観た人の何割かはこの映画のラストのオチが分からないらしいですね。本日ご鑑賞頂いた皆様は大丈夫ですか!? 主人公のクリスは最後逮捕されませんが、今後罪の意識を抱えながら上流社会を生きていかければならない。この映画のラストは典型的な運命のおとぎ話。僕は観終わったあとでいくつかのヨーロッパのおとぎ話を思い出しました。皆様、こんなおとぎ話ご存知ですか? 旅人が道の途中で死神に出会う。死神なんて怖いから必死で逃げる。しかし、やっと宿に着いたと思ったら強盗にあって殺されてしまう。そこで死神は旅人に言うんです『このことを教えてあげるつもりだったのに、どうして逃げるんだ』…というお話なんですが、運命から逃れようとしても逃れられない。逆に飲み込まれてしまう——これは精神分析の元でもあります。ギリシャ悲劇でもありますが、こういったものは後味が悪くてクセになりますね。」

司会「恋愛面ではどうですか?」

「きっと男と女では見方が違いますよね。トークショーの前に女性のスタッフの方とお話をしていたのですが、その方はノラに自分を投影して観ていた、と。だから初めてノラとクリスが会うシーンでも、どうにかしてこの男を落としてやろう、と思ったというんです。でも僕たち男性は全く逆。あんな女性が目の前に現れたら警報鳴りまくりですよね! ノラみたいな女性はいわゆる“ファムファタール=運命の女性”的。運命を狂わされてしまうのですね。」

司会「会場の女性のお客様で、クリスを許せない方いらっしゃいますか?」

「結構いらっしゃいますね。許してあげてください(笑)会場の男性で、クリスの気持ちが分かるというかたいらっしゃいますか? いらっしゃいますね、正直ですね(笑) 女性と男性はニワトリとライオンくらい別の生き物といいますしね。」

司会「どちらがニワトリでどちらがライオンというのは敢えて言わないですが(笑)この映画では、意外とクリスの奥さん・クロエの存在は忘れられがちなのですが、鏡さんは彼女をどう分析されますか?」

「ちょっと古いですが、クロエ(妻)とノラ(愛人)を見ていて『東京ラブストーリー』というドラマを思い出しました。織田裕二さん演じるカンチを取り合う2人の女性、鈴木保奈美さん演じる赤名リカと成森有美さん演じるさとみがいて、女性はリカに感情移入するんですよね。さとみがあまりにも男に媚びている、という理由で。でも、ある女性のジャーナリストが面白いことを言ったんです。『リカも男に媚びてるよね』って。なるほど、って思いました。今の女性は自分が男に媚びてないと生きていけない。だからリカ程度の媚びは自分の許容範囲と受け入れてしまっているんです。」

司会「この映画は、いわゆる“勝ち組、負け組”という見方も出来ると思いますが、クロエは勝ち組になるのでしょうか?」

「はい。圧倒的な勝ち組ですね! 裕福な両親という確実な庇護の下にいて、好きな人も手に入れてしまう。何も知らない顔して、もしかしたら全部知っていて見ないフリをしているもかもしれない(笑) 一方、ファミリーにまつわる話というのもとても古典的ですよね。現代医学では“運命”という言葉は使わずに“家庭の問題”という言葉を使用したりするのですが、一家にひとつの闇があると僕は思うんです。だから郊外のマンションや団地なんかをみると気持ち悪くなる。それと同様の気持ち悪さをこの映画では感じましたね。実に気持ち悪い。でも、そこがクセになりそうで秀逸なのですけどね。」

司会「そういえばクリスみたいな人って今はいないですよね? 少なくなってるのでしょうか?」

「そうですね。野心的な男性が減ってきているのかもしれないですね。逆にノラみたいな女の人は沢山いるのかもしれないですね。きっと映画を観た人が『クリスを嫌い!』というのはモテるから、なのでしょうか。」

司会「クリスのその後についてはどう思いますか? 彼はこの後どうなっていくんでしょう?」

「きっと彼は全てをずっと隠し通すのだと思うんですよ。彼には子供ができましたよね。だからもしかしたら、現世だけで解決されずにその隠し事が次の世代まで続いてしまってカルマとなっていくのかもしれないですね。」

司会「クリスとクロエの相性ってどうなんでしょう?」

「悪くないのではないでしょうか。言葉は悪いですがクロエの無頓着加減が救いなのかもしれないですね。きっと彼女のその性格がこの家族の闇を取り払ってしまうかもしれない(笑)」

司会「運命の結果って分からないですよね…」

「意思も運命に巻き込まれてしまうんですね。」

司会「もし鏡さんのところにクロエとノラが鑑定依頼にきたら、どんなアドバイスをしますか?」

「ノラはどうしたら彼を取り戻せますか、としつこく聞いてくるタイプですよね。普通鑑定のときには言わないですけど、もし『無理です』と言ったとしても『そこをなんとか!』といって詰め寄ってくるカンジ。自分の思ったとおりに進めていきたい、そのためのアドバイスを強引に求めるタイプです。逆にクロエは、『結婚式はいつすればいいですか?』と聞いてくるタイプですね。」

司会「鏡さんはウディ・アレン監督の『ニューヨーク・ストーリー』で映画のお仕事を初めて携わられたのですよね。ウディ・アレン監督との相性はいかがでしょうか?」

「彼のいけずな、いじわるな感じが好きですね。彼の映画には皮肉が込められている。そこが好きです。でも『スター・ウォーズ』のような明朗で分かりやすい映画も好きなんですよ! 皮肉といってもフランス映画のように、不条理に作ってますよ、という風に不条理を描いている映画は逆にしらけてしまうんです。でもウディ・アレンは違う。皮肉もあり、笑えるところもあってというのがいいんです。今回はラストも良かったけどロンドンの描きかたも良かった。このロンドンの描き方はウディ・アレン流にデフォルメされた、つまり皮肉だと思いました。上流階級やロンドンの描き方も明らかにパロディなのではないかと。どう思いますか?」

司会「ウディ・アレンとしてはいろんな意味でめずらしい映画ですね。いつもNYを舞台にしていた彼がロンドンで撮った映画というだけでももちろんですが、クラシカルなものを現代版としてなぜ今とるのかという意味でもそうですし。彼は“運”というテーマでは『重罪と軽罪』という映画でも描いているのですが、今作とはその描き方が全く違う。特にラスト。つまりウディ・アレンがクラシカルな、たとえばシェークスピアとかを映画にした感じでしょうか。」


会場は終始笑いが絶えず、和やかな雰囲気。鏡リュウジさんならではの映画の読み方に、本編を観終えたばかりの観客は深く頷いていた様子だった。第2弾は9月26日(火)、ビューティークリエイターのTAKAKOさんをゲストに迎えて“恋愛も仕事も勝負の秋!「運」を味方につけて、ギリギリの人生のマッチポイントに勝つ!”と題したトークショーが開催されるので、こちらもお見逃しなく!


・詳しくは公式サイト
《text:cinemacafe.net》
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