おうちシネコンコラム vol.1 日本の“クロとシロ”、イギリスの“V”コミックヒーローが掲げる世界共通のメッセージ

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『鉄コン筋クリート』
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独裁国家となった近未来のイギリス社会を舞台に仮面を付けた謎の男“V”が、腐敗した政府から市民を解放する姿を描いた『Vフォー・ヴェンデッタ』は、イギリスのコミックが原作。それを『マトリックス』シリーズ(監督、脚本、製作総指揮)で一気にその名を知らしめたウォシャウスキー兄弟が脚本を手掛けたというのだから注目されるのは当然のこと。見たことのない映像を創り出した彼らがコミックの世界をどこまで膨らますことができるのか──未知の世界を観客は期待するのだ。例えば、国会議事堂と中央刑事裁判所は実際にミニチュアを制作、ビクトリア駅でのVの最後の闘いはスローモーションで撮影など、現代の技術あってこそ為し得る映像が隅々に張り巡らされている。また、カメラの前で実際に髪を剃り坊主になったナタリー・ポートマンの体当たり演技も注目を浴びた。そして、最大の面白さはやはりストーリー。国家の不正や情報操作を露わにする現代社会にも通じる思想や倫理の問題が描かれているからこそ面白い! Vのあの不気味な笑みの仮面に導かれ、いつの間にか政治とは? 国家とは? テロとは何かを真剣に考えさせられる不思議な魅力を持った作品なのである。

同じくコミック原作の『鉄コン筋クリート』はご存知、松本大洋の最高傑作と言われる作品。こちらは実写化ではなく映像化としてスクリーンに登場する。監督に選ばれたのはハリウッドのVFXの第一人者マイケル・アリアス。本作が監督デビューではあるが、ウォシャウスキー兄弟の指名で『アニマトリックス』でプロデューサーを担当したことからもその腕が確かなものであることは明らか。彼が惚れた“鉄コン”の魅力は『Vフォー・ヴェンデッタ』と同じく作品の持つメッセージ性──義理と人情とヤクザの街〈宝町〉で生きるクロとシロ。彼らが街の再開発を阻止しようともがく姿を通じて描かれる善と悪、純粋と凶暴、現在と未来…そして、かけがえのない存在。もちろん、それらを伝えるには声優の演技力あってこそだが、キャスティングがこれまたすごい! 『硫黄島からの手紙』でハリウッドデビューを果たした二宮和也、多くの監督から一緒に仕事をしたいとラブコールが絶えない蒼井優をはじめ、トップを走る役者が顔を揃えている。『Vフォー・ヴェンデッタ』でVを演じたヒューゴ・ウィーヴィングは「仮面を通してVの心情を表現するのは本当に難しかった」と語っているが声優も同様。いや、動作がないぶん難しさはそれ以上。原作コミックのイメージを壊さずに映像化することは本当にすごいことなのだ。

《text:Rie Shintani》

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