オススメ!GWムービー vol.4 愛に迷える子羊と映画監督の卵に贈る仏映画

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『フランドル』 -(C) 2005 3B PRODUCTIONS/ARTE France CINEMA/LE FRESNOY
  • 『フランドル』 -(C) 2005 3B PRODUCTIONS/ARTE France CINEMA/LE FRESNOY
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これまで3週にわたり、GWおすすめ映画として、娯楽要素の強い作品を紹介してきましたが、今回は締めとして、あるアート系のフランス映画をご紹介したいと思います。その名も『フランドル』。哲学教師の経験を持つ、フランスのブリュノ・デュモン監督が、絵画のように美しい風景を誇る故郷フランドル地方を舞台に、愛について描いた映画です。彼はこれまで、『ジーザスの日々』『ユマニテ』で高い評価を得ながらも、その衝撃的な作風ゆえ、賛否両論を巻き起こす作家としても知られています。そして、難解とも言われているのですが…。

今回の作品は、ある男が幼なじみの女性に「愛している」と言うまでの変遷を、戦争にまつわるエピソードを交えながら綴った物語で、比較的分かりやすいのでおすすめ。愛について、じっくりしみじみ考えるには、もってこいのきっかけになってくれるのです。

さて、その彼に先日お会いしたところ、さすがは哲学者らしく面白い映画論を展開してくれました。
「哲学者・ヘラクレイトスが『反対の原理』というのを説いています。存在は常に反対のものが混じっているものということ。良いものと悪いもの。熱いものと冷たいもの。それがハーモニーになるということなんです。ペンだってそうでしょう? 穴があいたキャップと、尖ったペン、2つの違ったものを一つに融合させている。違うからこそ、ひとつになることができ、そこにハーモニーが生まれるんです。映画におけるカットも同じなんですよ。戦争と愛。女の美しさと、男の乱暴さ。フランドルの優しい風景と戦争の暴力に満ちた乾いた土地。2つの違ったものが組み合わさってハーモニーを生んでいるんです。これがまさに、哲学的考察がシナリオを作ったという良い例だと思います。反対のものを合体させることによって、ハーモニーが生まれ、リズムが生まれるんですよ」。

この作品を観ていて、物事の対比がユニークで印象的だな、心に残るなあと思っていたら、そういうことだったんですね、と膝を打った私に、さらにこう話してくれました。
「そのことを観客は後で感じるんだと思います。そもそも映画芸術は、後で思い返すもの。観ている時は退屈するかもしれないし、衝撃的な映像にウンザリするかもしれない。でも、後になっていろいろなことが心によぎり始める。絵画もそうです。私はゴッホの絵を見たときは何も思わなかったのに、後で強い印象が蘇った。それは時間がかかる化学反応のようなもの。何かが起きつつあるけれど、時間がかかるんです。この映画には暴力的なシーンもあり、観ているのはつらいかもしれない。でも、その中で起こっているのは何かが構築されていく過程。後で重要になってくるのです。旅行も同じかも。そのときは面倒だと思っても、後でいろいろな思い出が残るものです。そこが重要なんです。ですから、映画を撮るためには、映画学校へ行くよりも、人間について理解を深めたほうが良いと思うのです。例えばシェイクスピア。彼は人間の心を完璧に知っていたのではないでしょうか」。

というわけで、この映画、愛だけでなく、映画論についても学べます。愛に迷う子羊だけでなく、映画監督の卵にもおすすめです。

《text:June Makiguchi》

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