キタノ映画で“素”の自分をさらした鈴木杏が『監督・ばんざい!』を語る

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『監督・ばんざい』鈴木杏 photo by utamaru
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カンヌ国際映画祭60回記念企画「To Each His Own Cinema」にて世界の映画監督35人に選ばれた北野武が監督13作目として仕掛けた新作は、ギャングでもヴァイオレンスでもないウルトラ・バラエティ・ムービー『監督・ばんざい!』。一言で説明するならばツッコミどころだらけのおバカ映画である。キタノ・タケシ監督(ビートたけし)の暴力映画封印宣言から物語は始まり、小津安二郎風人情劇やらホラー映画やらワイヤーアクション全開の時代劇やら、とにかく爆笑エピソードが盛りだくさん! そんな北野作品に挑んだ鈴木杏に映画の面白さをインタビューした。

鈴木さんが演じるのは金儲けのためなら何でもやる詐欺師の娘。母親役は北野組ではお馴染みの岸本加世子。ベテラン女優を相手にボケとツッコミ満載の演技を堂々と見せている。これまで優等生的な役柄が多かっただけに「えっ、鈴木杏が!?」と驚く人も多いだろう。しかし当の本人は「この役は素の私にとても近いんです」と意外なコメントを返してきた。
「過去の作品のキャラクターで鈴木杏を見てくださっている方にはすごく新鮮なのかな、と。家族や友達から見ると、今までの役の方が意外のようなんですけどね(笑)。今回の私の役は直接笑いをとる役ではなかったので、笑ってもらおうという意識はなかったのですが、自分自身が楽しめるように心掛けました」と、役の幅がグンと広がったことを話す。

唖然としてしまうほどの仰天ストーリーに加え、衣裳や小道具もかなりユニーク。“ぶっ飛んだ役”を演じるにあたっては、その衣裳が助けになったという。
「台本を読んだときに『ちょっとおかしな子なんだな…』というのは感じていて、大体の雰囲気を感じることはできたんです。そして衣裳を見て『ああ、分かった!』って、この役をどう演じたらいいのか掴めました。だから役作りが難しかったということはなかったんです。と言っても、実際に着て慣れるまでは恥ずかしかったですよ(笑)。なのに慣れてくるとそのまま買い物に行ったりできる。慣れって怖いなって思いました」。

衣裳の一部なのか生きている動物のつもりなのか、ショルダーバッグから常に顔をのぞかせているアヒルのガー君の存在もかなりインパクトがある。

さらにこの『監督・ばんざい!』では鈴木杏のコテコテの“ズッコケシーン”を見ることができる! しかもビートたけしの直伝!
「普段やったことのない動きなので、なかなか上手くできなくて…悩んでいたら監督が目の前で実際にズッコケてくれたんです! あのズッコケを生で見られたのは嬉しかったですね。でも、完成した映画の自分のズッコケシーンを見て『まだまだだな』って(笑)。それから、岸本加世子さんとビートたけしさんの呼吸の合ったアドリブのすごさに驚きました。たけしさんの突然のアドリブを絶妙なタイミングで返す岸本さん──そのアドリブ力を目の当たりにして、今後の自分の課題はこれだって思ったんです」。

岸本加世子をはじめ大杉漣、寺島進といったいつもの“北野組”に加え、江守徹、吉行和子、内田有紀、木村佳乃といった多才なキャストが次々と登場するのも見どころのひとつ。作品を観る限りではさぞかし面白い現場だったと想像できるが…北野組での撮影、現場の雰囲気、監督の印象を訊いてみた。
「北野組は本当に確立されているんです。監督に付いていけば間違いない! という絶対的な信頼感があるので、必要以上の言葉を交わさなくても心が通じている。常に全員が同じ方向を見ていて、とても安心感のある現場でした。また北野組に参加させていただきたいです」。

『監督・ばんざい!』には北野武監督のやりたかったことが全て盛り込まれているそうだが、鈴木杏さんは監督・北野武、主演・ビートたけしの作りだす北野ワールドのどんな面白さに惹かれたのだろうか。
「あるようでないような、ほんとに今まで誰も見たことのないようなストーリーだと思うんです。“世界の北野”と言われる監督が撮るすごいシーンと、ビートたけしさんが演じる面白さが絶妙に絡み合っているなと。楽しみ方としては、あまり考えずに観た方がいいですね。追求しても答えが出てこないことがたくさんあるので(笑)。ガー君もぬいぐるみなのかペットなのか何なのか、その辺は考えずに演じていました。印象に残っているキャラクターですか? やっぱり…井手らっきょさんですね。絶対にかなわない(笑)」。

ちなみにガー君の動きは鈴木さんのアドリブなのだとか。ということは彼女にも“笑い”の才能があったということ!? “今までにないストーリー”には鈴木杏の“今までにない一面”がたくさん詰まっているのだ。

最後に新たに掲げた目標について語ってくれた。
「観てくれる人が抱いている鈴木杏のイメージを常に壊していきたいと思っているので、そういう意味ではすごく大きな一歩だったと思います。でも難しくなっていくのはこれからなんですよね。作品の中で自分がちゃんと生きていられるような、作品のいいスパイスになれるような、そんな女優になりたいです」。



hair/make:晋一郎
《text:Rie Shintani / photo:utamaru》
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