鬼才監督クリストファー・ノーランの下、マジシャンに扮したヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベイルが壮絶な騙し合いを繰り広げる…。この説明だけで、本作がどんなにゴージャスかを察してもらえるだろう。名声を賭け、プライドを賭けて戦い続ける2人にカッコよさはなく、むしろ見苦しい。それは、彼らが越えるべきではない一線を遥かに越えたところで戦っているからだ。ボーデン(クリスチャン・ベイル)がアンジャー(ヒュー・ジャックマン)の妻を死に追いやれば、アンジャーは自分の美しい助手を使ってボーデンの秘密を探らせようとする。美しい助手を演じるのは今をときめくスカーレット・ヨハンソンだが、彼女がさほど魅力的に描かれていないのは、彼らの対決においては麗しのスカーレットさえも最重要の存在にはなり得ないからだ。そのほか、ふたりの行く末を見届ける紳士役で名優マイケル・ケインが、マジックの鍵を握る科学者、ニコラ・テスラ役でデヴィッド・ボウイが登場するが、彼らさえも狂気じみた対決の前には脇役。ここまでくるとゴージャスを通り越してもったいないとさえ思えてくるのだが、クリストファー・ノーランだからこそできる贅沢なのだろう。では、この『プレステージ』での肝心の対決はどんなエンディングを迎えるのか。ノーランの前作『バットマン ビギンズ』のブルース・ウェインと執事・アルフレッドの関係に胸キュンした人(そんな人はいない?)は、とりあえず心穏やかにラストシーンを迎えられる…かも?