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厳しい現実の中で生きる人々の一瞬のきらめきを描く『長江哀歌』ジャ・ジャンクー監督

カトリーヌ・ドヌーヴが審査員長を務めた2006年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞グランプリに選ばれた『長江哀歌』。本作は、2009年に完成予定の三峡ダム建設を背景に、そこに暮らす名もなき人々の生活を描いている。監督は、『世界』、『プラットホーム』のジャ・ジャンクーだ。

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『長江哀歌』ジャ・ジャンクー監督
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カトリーヌ・ドヌーヴが審査員長を務めた2006年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞グランプリに選ばれた『長江哀歌』。本作は、2009年に完成予定の三峡ダム建設を背景に、そこに暮らす名もなき人々の生活を描いている。監督は、『世界』『プラットホーム』のジャ・ジャンクーだ。

監督にとって、本作は長編5作目となる。2005年に撮影がスタートしたが、当初は記録映画を作る予定だった。
「この三峡というのは元々私にとって身近な場所ではありませんでした。僕が暮らしている中国北部から2,000キロも離れている場所なんです。でもこの三峡は2600年もの歴史を持つ町であり、それをたった2年間で全て取り壊そうとしている。しかも100万人の人がそこから立ち去らなければならないんです。その状況を目の当たりにしたとき、何か中国のいまの状況というのを集約したような印象を受けました。僕はとても興奮しましたし、そのことが映画を撮るきっかけの一つになったのは確かです。また、地元の人の非常にアグレッシブに生きる姿というか、生きることに積極的でエネルギーあふれる彼らの姿も僕にとって非常に魅力的でした」。

かといって、国家のプロジェクトに翻弄され、苦しい生活を送る市井の人々がテーマではないという。
「僕がこの作品で一番撮りたかったのは、社会的な事柄が個人にどのように影響を及ぼしたかということではなくて、もっと個人の自我の問題なんです。厳しい現実に放り投げられるけど、その中で生きていこうとする各個人が自身の現実にどう折り合いをつけていくか。そんなときにどんな行動をとって、どんな選択をするのか。そこでまた、自由を得ることができるのかどうか。そういう個人の主体的な姿です。だから、確かに中国での出来事を撮った作品ですけど、中国に限らず日本のみなさんがご覧になっても共感を持っていただけるんじゃないかと思います」。

撮影は三峡ダム建設で水没する運命にある奉節(フォンジェ)で行われた。伝統や文化が全て失われつつある古都だ。
「奉節に初めて行った時、船から降りた途端に13、4歳の少年に声をかけられました。『住むとこある?』と。要は旅館を手配しましょうか? ということなんです。次に『ごはんを食べますか?』。僕が『もう決まってます』と答えたら、『じゃあ車は?』と、交通手段を持ってるかどうか訊いてきました。13歳かそれくらいの子供が仕事として客引きをしているということに驚きました。その後、ずっと僕らの後についてきたんですが、その彼が作品の中で歌を歌ってる少年です。奉節の住民たちの、生活に対する意欲が強いことが印象深かったんです」。

時代や社会の大きなうねりに翻弄されながらも、毎日を精一杯生きている人々の一瞬の輝きは、監督が言うように中国だから、日本だから、と国でくくれるものではない。監督が「“山水画”のイメージで撮影した」と言う本作に、日々の生活の何気ないきらめきを感じてほしい。
《シネマカフェ編集部》

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