秋に楽しむ美味しい人生vol.1 日常に潜むエクスタシーに乾杯!

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『厨房で逢いましょう』
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なんだか急にしのぎやすくなり、秋の気配を感じるようになりましたね。夏バテ気味で、食欲が落ちていた人も、やっとモリモリいきたい気分になってきたのでは? そこで、9月のコラムは「秋に楽しむ美味しい人生」というテーマで、人生と食の美味しい関係について取り上げたいと思います。

美味しいものを食べると、誰でもうっとりと笑みを浮かべてしまいますよね。先日、行きつけの築地のお寿司屋さんで、一かん口にするごとにいちいち笑みを浮かべていたら、職人さんにこう言われました。「みんな、美味しいものを食べたときって同じ顔をするんだよね。外国の人も、子供も大人も、男性も女性も」。その職人さんは、その顔を見るのが何より嬉しいのだそうです。きっと全ての料理人がそうであるように。

その笑みの出所こそ、日常の中に起きる至極の絶頂感のひとつです。食べるという行為自体が、セックスに匹敵するほどエロティックだという人もいるようですが、運がよければエクスタシーを感じられるという部分でも似ているかもしれません。どちらも、好意を寄せていない人と“する”のは全く楽しくないものですし(笑)。

ところで、食とエロスの強い関わりを感じさせる映画『厨房で逢いましょう』が現在公開されているのをご存知ですか? 人づき合いが苦手だけれど、美味しいものを食べ、自ら作り出すことが何よりの生きがいという巨漢の天才シェフが登場するドイツ映画。この作品で巨漢のグレゴアが作り出しているのが、“エロティック・キュイジーヌ”と呼ばれる料理。ひとくち口にするだけで誰もがうっとり、恍惚の人に…。ある日、グレゴアはカフェでウエイトレスのエデンと知り合います。彼女は人妻ですが、日常に少し疲れ気味。そんな彼女が、あるきっかけからグレゴアの料理の虜となり、彼の厨房に足繁く通うように。やがてグレゴアはエデンに想いを募らせていくのですが、エデンは“エロティック・キュイジーヌ”によって以前より心の充足感を得られるようになり、夫との関係をより親密にすることに成功します。ところが、情熱的になっていく妻とグレゴアの関係を疑い始めたエデンの夫によって、事態は思わぬ方向へ…。

結末はお話できませんが、美味しい料理が結ぶ関係の行く末は気になるところですよね。よく「夫は美味しい料理を作る妻から逃げない」といいますが、確かに一度味をしめると人間、もう元には戻れないもの。餌付けされた動物が離れないのと同じです。それほどまでに、人生において“美味しさ”とは大きな意味を持ちます。体に必要な栄養についてだけ言えば、食物に美味しさは必要ないのかもしれません。でもそう考えたとき、伝説の指揮者、エフゲニー・ムラヴィンスキーが音楽について語ったこの言葉を思い出しました。「人間にとって音楽は、どうしても必要なものではない。しかし、音楽がないことは不幸なことだ」(西岡昌紀著「ムラヴィンスキー 楽屋の素顔」 リベルタ出版)。

美味しい料理もまさにそうだと思います。つきつめれば、“美味しい料理”という部分は、“料理を美味しく感謝して食べられる心”という意味ですが。音楽も美食も十分に味わえない人が地球上に大勢いる中で、私たちはなんて幸せなんでしょう。その幸せに感謝しながら、今日も美味しいお料理、いただきます!!

《text:June Makiguchi》

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