「自分らしくあれ」と訴えるドキュメンタリー『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督と仲間たちが、ゲイやトランスジェンダーの青少年のための学校、ハーヴェイ・ミルク・ハイスクールの援助金作りに立ち上がるドキュメンタリー。シンディ・ローパー、ザ・ポリフォニック・スプリーら、企画に賛同したミュージシャンたちが『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のミュージカルナンバーをカバーし、チャリティアルバムとして制作する過程をカメラにとらえている。
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その一方、スクールに通う生徒4人へのインタビューも敢行。その中のひとり、エンジェルは女の子として生きたい男の子だが、親の理解を得ることができないでいる。おしゃれで、髪型ひとつにも気をつかうエンジェルに対し、マッチョな男の子が着そうな、大きなシルエットの洋服を親は買い与える。「こんな服、私らしくないのに…」と泣き崩れるエンジェル。
仮にエンジェルが自分の性に違和感を覚えていない人間だったとしても、その服を着るタイプの人間ではない。ゲイやジェンダーの問題以前に、子供を理解せず、受け入れない親の存在、さらにはハーヴェイ・ミルク・ハイスクールというものが存在しなくてはならない現状に映画は疑問を投げかける。
音楽ドキュメンタリーとしても出色で、レコーディング風景に向けられた眼差しにも愛がある。途中まで熱唱したにもかかわらず、冒頭から歌い直すことになったルーファス・ウェインライトががっくりとうなだれる姿や、歌いこなせずに若干苛立つベン・クウェラーがユニット仲間のベン・フォールズから「上手く歌えるようにしろ」と軽くあしらわれる(可愛らしい)光景にも、ミュージシャンそれぞれの個性が。ささやかなところに至るまで、この映画は「自分であれ」と叫んでいる。