秋の夜長、人恋しくなったときに──vol.1 親子の愛で人恋しさを極める

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『この道は母へとつづく』 -(C) 2004 Filmofond Lenfilm Studio
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秋本番! 人によって、食欲の秋とか、芸術の秋とか、スポーツの秋とかいろいろですが、そのしっとりとした雰囲気のせいか、人恋しい秋というのもあり。秋の夜長。片恋の人は想いが募り、好きな人すらいない場合はむしょうに寂しさがこみ上げたりして。もちろん、遠くに暮らす家族たちの声が聴きたくなることもあるでしょう。

そんな人恋しい気分のときに、これを観てしまったら号泣必至。ロシア映画『この道は母へとつづく』です。孤児院で育った6歳の少年・ワーニャが、たったひとりで母を捜して旅に出るという話。実話にヒントを得た監督が、恵まれない子供たちのために、深刻なロシアの社会問題を背景に取り上げたヒューマン・ドラマです。

すさんだ孤児院で暮らす孤児たちの願いは、条件の整った良い家庭に引き取られること。ですから、ワーニャは裕福で優しそうなイタリア人夫婦に気に入られ、仲間たちからとてもうらやましがられるのです。始めは本人も満足げ。ところが、すでにとある夫婦に引き取られた友達を訪ね、彼を捨てた本当の母親が孤児院を訪ねてきたことで、すっかり動揺してしまうのです。「僕がイタリアに行った後、本当のママが僕を探しに来たらどうしよう」。

「本当の母親はどんな人かもわからない。馬鹿なことは考えず、黙ってイタリアへ行き、幸せになるんだ」。そう周囲に言われても、全く納得できない彼。もう、頭の中は、ほんとうのママのことでいっぱいです。母親に会ったところで、受け入れられる保証はないし、幸せになれるとも限らない。それでも彼は、「ひと目でいいから、ほんとうのママに会いたい」と孤児院から脱走するのです。

彼のように、実の親を知らないという経験がないならば、その切実な想いを完全に理解するのは無理でしょう。「自分を捨てた人に、なぜそんなに会いたいの?」と。でも、損得勘定で凝り固まった周囲の大人たちの包囲網を必死にすり抜け、健気に歩むワーニャが、その気持ちを万人が理解する手助けをしてくれます。子供が母を求める心に理屈などは通用しないのだと、あらためて知らされます。親が子を、子が親を傷つける事件が連日報道されていますが、もし、そのせいで心がざわつくことがあったなら、再度、理屈抜きの親子の愛を確認する手がかりとして、この映画を観ることをおすすめします。

もちろん、なんとなく人恋しい…そんなあなたにも。誰にでもある、愛を求める素直な気持ちが、とことん純化されて出来たような少年・ワーニャ。彼の姿を見て、人恋しい秋にどっぷり浸ってみては?

《text:June Makiguchi》

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