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砂漠化が進むモンゴルの現状を訴えるナーレンホアの魂『白い馬の季節』

『草原の愛 モンゴリアン・テール』や『天上草原』、『モンゴリアン・ピンポン』など、内モンゴルを舞台にした作品には傑作が多い。そうした作品のみずみずしい緑の草原と、そこに暮らすモンゴルの人々の温かさに癒されてきた。しかし、『白い馬の季節』はそうしたモンゴル作品とは一線を画している。草原は乾ききり、砂埃が風に舞い、まるで砂漠のように見える。そんなモンゴルの姿を描いた本作で遊牧民のインジドマを演じたナーレンホアに話を聞いた。

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『白い馬の季節』 ナーレンホア
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『草原の愛 モンゴリアン・テール』や『天上草原』、『モンゴリアン・ピンポン』など、内モンゴルを舞台にした作品には傑作が多い。そうした作品のみずみずしい緑の草原と、そこに暮らすモンゴルの人々の温かさに癒されてきた。しかし、『白い馬の季節』はそうしたモンゴル作品とは一線を画している。草原は乾ききり、砂埃が風に舞い、まるで砂漠のように見える。そんなモンゴルの姿を描いた本作で遊牧民のインジドマを演じたナーレンホアに話を聞いた。

ナーレンホアは本作でプロデュースも担当しており、監督で主演のウルゲンを演じたニンツァイは彼女の夫でもある。本作を製作するに至った経緯をナーレンホアはこう語る。
「彼(ニンツァイ)と前回共演した『天上草原』でロケをしていたときに、たまたまある草原の風景を目にしたんです。その風景は私が小さい頃に目にしたものとは全く違うものでした。私がモンゴルの遊牧民の生活として想像していた、まるで詩のようにロマンティックな大草原を遊牧民が移動していく姿は、もうそこにはありませんでした。多分、その遊牧民の人々は非常に矛盾した葛藤を抱えていたのだと思います。草原を捨てて街に出て安定した暮らしを選ぶのか、もしくはあくまでも遊牧民として生活を続けるのか…。それがこの作品を撮る大きなきっかけになりました。どうしてもこれを映画で表現しなければならないという、強い激情のような思いに突き動かされたのです。そして、監督のニンツァイは脚本を書き始めました。この脚本はどの小説を基にしたわけでもなく完全なオリジナルです。ある家族の姿を通して、モンゴルの社会問題などをそこに内包させて作り上げていきました」。

とはいえ、こうした社会問題を描いた作品には金銭的な苦労があった。
「私たちはお金のことは一切考えませんでした。興行的にどうこうしようなどとは考えずに、ただ、遊牧民の人たちが直面する苦難をなんとか映画という形でみんなに観てもらう、分かってもらおうという気持ちしかありませんでした。でもこんなに考え込ませるような映画はダメだと言われたんです。こんな、遊牧民の社会問題を描いた重苦しい作品は誰も観ないだろうと。娯楽性が全くないし、いまや都市に住む人たちは、都市での生活に疲れているのに、そんな人たちがこの映画をわざわざ観てくれるはずがない。だからお金は出せませんという人たちがほとんどでした。だから最終的には自分たちでお金を出すしかなかったんです。(監督の)ニンツァイは本当に頑固で“どうしても自分のやり方で自分の撮りたいものを絶対に撮るんだ”という感じで、彼は映画の中のウルゲン、私はインジドマそのもので、インジドマが支えるしかなかったんですね(笑)」。

確かに本作は現在のモンゴル遊牧民の苦難をテーマに描き、監督はそれを社会に訴えたいという。ならばドキュメンタリーの方が効果的だったのではないだろうか?
「ドキュメンタリーにすると、今を、今の彼らの姿を記録するというだけになってしまうのです。私たちが本当に描きたかったのは彼らの心であり、それはひいてはモンゴル人みんなの心でもあったのです。かつてはチンギスハーンの末裔として輝かしい祖先を持っている民族が、いまやこのような状況に陥っているという哀しみを、ドキュメンタリーでは映せない。それにこの非常に大きなテーマを、劇映画として、この哀しみを自分のものとして、世間に知らせたいというだけでなく、モンゴルで暮らす人たちにも考えてほしいという思いもありました。自分たちの民族がこのような状況に追い込まれているのはなぜかということを、自分たちで考えるべきだという思いもあって、ドキュメンタリーでは捉えることができない、心をしっかりと捉えようとして劇映画という形にしたんです」。

「このウルゲンという主人公は映画の中の人物というだけではなく、この映画を撮っている私たち自身であり、私たちの心そのままでもある」と言うナーレンホア。本作には彼女のモンゴル人としての魂が込められている。
《シネマカフェ編集部》

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