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「正統派ジャンルに切り込みたい」『拍手する時に去れ』チャン・ジン監督の映画論

舞台演出家として活躍する一方で、『ガン&トークス』、『小さな恋のステップ』の監督をこなし、『トンマッコルへようこそ』では原案と脚本を担当したチャン・ジン監督。“韓国の三谷幸喜”と呼ばれる彼の最新作がシン・ハギュン、チャ・スンウォン主演のクライムコメディ『拍手する時に去れ』だ。

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『拍手するときに去れ』 チャン・ジン監督
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舞台演出家として活躍する一方で、『ガン&トークス』、『小さな恋のステップ』の監督をこなし、『トンマッコルへようこそ』では原案と脚本を担当したチャン・ジン監督。“韓国の三谷幸喜”と呼ばれる彼の最新作がシン・ハギュン、チャ・スンウォン主演のクライムコメディ『拍手する時に去れ』だ。

本作はもともと監督が戯曲として書いた作品だ。
「ずいぶん昔に書いた作品なのであまり覚えていないんですが…(笑)。最初のきっかけは“殺人事件の捜査の過程を生中継してみたらどうなるんだろう”という好奇心から始まったんです。一般大衆というのは、最近は特にその関心事や好奇心の向きどころというか、見たがるものというのが、どうしてもメディア的なものに偏っていると思ったんです。その中で本当に大切なもの、例えば真実といったものが歪曲されてしまっているのではないかと思って、その過程みたいなものを描いてみたいと思ったんです」。

だからといって社会批判をしているかと言えば、そうではないようだ。
「確かに、そういう面が多少あるかもしれませんね。でも社会派ドラマというのは得てしてそうした面を備えているんじゃないでしょうか? でも、私も社会の中に生きている人間ですから、それを批判するのはあまり好きじゃないんです。作品の中のニュアンスとしてはある程度根底にはあるのでしょうが、作り手としてそれを意識しすぎて何かしらのメッセージを持たせなきゃと考えるのは、少し危ないことだと思うんです。80年代、90年代の頭くらいまではそういう傾向が強かったんですよね。当時の演劇というのはある種の社会批判の場になっていたりしましたから。芝居が政府に対する批判をしているという理由で捕まった演劇人もいましたけど、軍事政権の終わりと共にそういった雰囲気というのはなくなってきていると思うんです」。

舞台の演出と映画の監督ではやはり視点が違ってくる。この点について聞いてみると…。
「この質問は以前から何回もされていますが、答えるたびに少しずつ違っているような気がします(笑)。映画では、ストーリーテリングに非常に気をつかいます。演劇というのは、そのストーリーというよりも場面がどんどん展開していく面白さというのがあるんです。ある種、象徴的だったり、隠喩としての表現が多いと思うんですが、映画でそれをやってしまうとストーリーが分かりにくくなってしまうので、映画の時はじっくりと繊細に見せていくということが必要だと思っています。実際に演劇である作品をやったときに、みなさんから面白いという評判をいただいたんですが、場面、場面は面白くてもストーリー性が少し弱くなってしまうということがあったので、映画ではそれを補うように、ということを心がけました」。

本作は検事と容疑者の息詰まる対決が見どころの一つでもある。この検事に扮したのが『リベラ・メ』『風林高』のチャ・スンウォン。容疑者が『マイ・ブラザー』『トンマッコルへようこそ』のシン・ハギュンだ。
「韓国では“検事”というのはスマートだとか、クリーンだというイメージがないんです。むしろ凶悪犯罪の捜査に当たる力自慢の警察官とそれほど変わらないんです。だからチャ・スンウォンはピッタリでしょ? 今回はスタイルの良い検事というキャラクターでした。そういう意味では、チャ・スンウォンは韓国では最高の役者ですね。それにシナリオを渡した時に最もこの作品を気に入って、最も積極的だった。やっぱり本当に作品のことを気に入ってくれる人とやりたいと思います。それに彼は演技が本当に上手いから」。

そう言って笑う監督は、俳優を起用する上での重要なポイントについてこう語る。
「もちろんギャラです(笑)。それからお互いの信頼関係ですね。これが何よりも重要だと思っています。僕は俳優に対して『彼だったらやり遂げてくれるだろう』という信頼を持たなければならないし、俳優は『この監督だったら望む通りの映画を完成させるだろう』という信頼がなければならない。私は俳優、そして演出に対して、製作者の立場であるわけですが、一緒に作品をやっていると多少なりとも不満に思う部分が出てくるんですよね。でもそれはお互いの人間的な信頼があってこそ、乗り越えられることだし、注意していくことが出来ると思うんです」。

「正統派ジャンルに切り込んで、裾野を広げたい」と言う監督。「ホラーなのに夜のシーンが少しもないとか、メロドラマなのにキスシーンどころか手もつながないとか、それでもジャンルが成り立つような作品を作っていきたい」と語る。次回作も決まっているそうで、「来年の11月くらいにまた来日するかな」とうそぶいたりもする。なかなかお茶目なコメントが多いが、映画に対する情熱は確かにそこにあるのだ。チャン・ジン監督からしばらくは目が離せそうにない。
《シネマカフェ編集部》

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