【東京国際映画祭レポートvol.19】グランプリ有力候補『再会の街で』監督会見

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『再会の街で』監督のマイク・バインダー
  • 『再会の街で』監督のマイク・バインダー
  • 『再会の街で』
  • 時おり冗談を交えながら作品について熱く語ってくれた。
9.11で愛する家族を失った男と、一見幸せそうな人生を歩みながらも、愛を見失った男。大学時代のルームメイトであり、N.Y.の街で再会を果たした2人の交流を通じて、取り返しのつかない喪失を人はどうしたら乗り越えられるのかを問うた『再会の街で』。アダム・サンドラーとドン・チードルという実力派俳優を主演に配し、コンペティション部門に出品されている本作が10月23日(火)に上映され、マイク・バインダー監督の記者会見が開かれた。

監督はこの作品の製作、特にアダム扮するチャーリーのキャラクターを作るに当たって、かなり広範囲のリサーチを行ったという。「アダムと共に多くの9.11の遺族の方々から、本当に胸が締めつけられるような話を聞きました。また、9.11の遺族以外でも、事故や事件で家族を失った人から話を聞いたんです。ある遺族の話で印象に残っているのは、9.11のあの飛行機に乗っていたスチュワーデスの話です。事件の朝、彼女と彼女の夫は喧嘩をしたんだそうです。飛行機が乗っ取られ“もうだめだ”というときに彼女は夫に電話して『あなたを愛してるし、あなたが私を愛してることもわかってるわ。今朝のことは気にしないでね』と伝えたそうです。遺族の方々から聞いた、こうした話のひとつひとつの断片を繋ぎ合わせて、チャーリーという人物を作り上げたんです」。

そして演出する上では役者に対し「役柄に自分自身を投影すること」を要求したと語る監督。「私が脚本を書く段階でまず、物語の中に自分を投影したんです。同じことを役者にも求めました。魂を注ぎ込んでほしい、と。ですから例えば、ドンが演じたアランを見ると、ドンの人柄がにじみ出ていることがわかってもらえると思います」とのことだが、こうした監督の指示もあってか、アドリブの部分が多くあるという。これについては「『いいセリフだな』と思える部分はおそらく私が書いたところで、『あまりよくないな』というところは彼らのアドリブだね」といたずらっぽく笑った。

ちなみにチャーリーの容貌がボブ・ディランに似ているという指摘には「決して意図したことではないんだけど“もしチャーリーが髪を3〜4年切らなかったら?”と想定して伸ばしたら、ああなったんです。かつらをかぶせたらみんなが『似てるね』と。設定を変えようかという話もあったんですが、私は実はすごく気に入ってて、“さまよえる詩人”という感じがして良いということでそのままにしました」と説明してくれた。最後に、劇中で監督が描いたN.Y.の見どころと、監督自身が感じる9.11以降のN.Y.の変化について尋ねると「私が捉えたかったN.Y.は観光用によく見られるようなヘリコプターから撮影したN.Y.ではなく、人々が歩く歩道から見たN.Y.です。実は当初、映画のタイトルを『Empty City(空っぽの街)』としていました。1,500万人が住んでいようと、スクーターでビルの谷間を走り抜けるチャーリーにとっては、この街はまさに空っぽなんです。あのシーンは日曜の夜に撮りましたが、ニューヨーカーですら『あんなN.Y.見たことない』と驚いていました。そして9.11以降における最も大きな変化は、他国や他人の痛みや苦しみに共感できるようになったことではないでしょうか」と語ってくれた。

『再会の街で』は2008年正月、恵比寿ガーデンシネマほか全国にて公開。

「東京国際映画祭特集」
http://blog.cinemacafe.net/tiff2007/
《text:cinemacafe.net》

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