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不協和音すらも魂に突き刺さる『4分間のピアニスト』

魂を懸けた4分間のピアノコンチェルト。希望を失った少女・ジェニーと偏屈な老ピアノ教師・クリューガー、この2人が出会ったそのときから、この4分間だけを目指して物語は動き始める。

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『4分間のピアニスト』 -(C) 2006 KORDES & KORDES FILM GMBH/SWR/BR/ARTE
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魂を懸けた4分間のピアノコンチェルト。希望を失った少女・ジェニーと偏屈な老ピアノ教師・クリューガー、この2人が出会ったそのときから、この4分間だけを目指して物語は動き始める。

登場人物たちはこの2人を始めとして押しなべて無口。誰一人自らを語ろうとはせず、みんなどこかに暗い影を引きずっている。それでいて、暗くジメジメした印象だけを残すかといえばそうではない。むしろ不思議なほど、観ているこちら側の魂が奮い立たされていくような感じさえする。

ではこの映画の何がそうさせるのか? それは映画の始まりから終わりまで何らかの形で常に響き渡る“音”である。それは美しいモーツァルトの旋律であり、けたたましいサイレンであり、優しく黄昏に溶け込むアコーディオンの音であり、クリューガーの記憶の中にとどまる爆撃音であり、ピアノを奪われたジェニーが木の机を鍵盤に見立てて力強く叩く音である。協和音と不協和音、騒音とハーモニーが押し寄せ、クライマックスへと導いていく。ジェニーは最後の4分間へと向かう過程で、この“音”を雨のように浴びて鼓舞され、挑発され、己の中の獣性とも言えるような荒々しい感情を目覚めさせていくのだ。

これまで吸収した全ての音を解き放つかのようなクライマックスの演奏は圧巻。その演奏直後のジェニーの表情を絶対に見逃さないでほしい。そこには決して明るい未来を見ることはできないが、誰にも負けずに“今”を輝くジェニーの生の炎を感じられるはずだ。
《シネマカフェ編集部》

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