※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

現実とファンタジーの境界線に住むうさぎの兄弟の物語は“不条理”が隠し味

2006年から2007年にかけて1年半の間、松竹系の劇場で本編、予告編の前に上映されていた2分ほどのショートアニメーション『ノラビッツ ミニッツ』。NHKで放映されている「ニャッキ!」や平井堅のミュージックビデオ「きみはともだち」のクリエイター、伊藤有壱氏が生んだキャラクターだ。オタワ国際アニメーション映画祭に2年連続ノミネートされるなど、海外でも評価の高い伊藤監督に話を聞いた。

最新ニュース インタビュー
注目記事
『ノラビッツ ミニッツ』 伊藤有壱監督
『ノラビッツ ミニッツ』 伊藤有壱監督
  • 『ノラビッツ ミニッツ』 伊藤有壱監督
  • 『ノラビッツ ミニッツ』
  • 伊藤有壱監督からシネマカフェ10周年お祝いのメッセージ
  • 『ノラビッツ ミニッツ』
2006年から2007年にかけて1年半の間、松竹系の劇場で本編、予告編の前に上映されていた2分ほどのショートアニメーション『ノラビッツ ミニッツ』。NHKで放映されている「ニャッキ!」や平井堅のミュージックビデオ「きみはともだち」のクリエイター、伊藤有壱氏が生んだキャラクターだ。オタワ国際アニメーション映画祭に2年連続ノミネートされるなど、海外でも評価の高い伊藤監督に話を聞いた。

このうさぎの兄弟に決まるまでにいくつか案を出したという監督。
「パンダとリスがいる『パンダリス』という話で、“あらパンダ、ご機嫌よろしくて?”って少女歌劇みたいな感じにしようと思ったんですけど(笑)、あっさりボツになりました。“パンダが竹を食べて、リスが松ぼっくりを食べて…ん? 松と竹で松竹じゃん!”って、かなり自信満々で絵も描いたんですけどね」と穏やかに笑う。もう一つの案はロバだった。
「かしこいロバが主人公で、あほな人間の子供を連れているんです。メキシコの荒れ地とかを歩いているとサボテンに突然襲われたりするんですよ。でも大体ハッピーエンドで、最後はロバが立ち上がって、アルマジロが楽器になって、短いバンドシーンで終わるんです。実際に演奏を頼む人まで決めていたのに、これもボツでした。20代前半から30代前半にかけての女性に受け入れられるようなキャラクターにすることになったんですね。それでうさぎになったんです」。

「目つきの悪いお兄さんのうさぎと、似ても似つかない目がくりくりした弟といううさぎの兄弟。僕ら人間が住むリアリティの世界とファンタジーの生き物が住む世界のどこかに境界線というのがあって、その辺りに住んでいるという設定に決まりました」。

この『ノラビッツ ミニッツ』にはテーマが2つある。
「まずミッションとして“楽しいオマケ”でなくてはならない。あくまでもオマケはオマケであって、それ以上でも以下でもないところ。いま、オマケにつられてお菓子を買う大人もいますよね。この作品のミッションが“楽しいオマケ”であるというのは僕にとっては非常に新鮮でした。しかもそれが劇場で、大スクリーンで観られるんですから。それから個人的な作家としてのポイントが“不条理”。以前から不条理なショートフィルムを作りたいと思っていたんです。ストーリーの起承転結は最低限で、かといってやり捨てているわけでもなくて。不条理というカテゴリーを上手く不思議な感じ、余韻の含ませ方も合わせて練り上げて作品を重ねていけたらと思っていたんです。『ノラビッツ ミニッツ』はそれを非常に良い形で試せました」。

…と、“不条理”というと例えばどんなことだろうか?
「僕は短編小説が好きなんです。例えばロアルド・ダールだったり(レイ・)ブラッドベリだったり、もう少し独特なところで言うと、ガルシア・マルケスとか。短編小説というのはコミックにも映画にもなりそうですよね。かと思えばビジュアルが絶対浮かばないときもある。ガルシア・マルケスの短編で、ある観光客も来ないような南米の小さな街で、みんなが祭りでざわざわやっている時にサボテンが一本迷い込んでくるんです。ざわざわしている人の中でうろうろしているだけでやがて消えていった…おしまい、みたいな(笑)。著者が何を考えていて、何を書きたかったのか、勝手に想像して分かったつもりになっているんだけど結局は分からないかのように、起承転結やストーリーテリングで収まらないものをアニメーションで表現するのが面白いと思ったんです」。

今回のDVDは劇場で公開された4エピソードと、DVDのみで観られるエピソード5が収録されている。今後『ノラビッツ ミニッツ』の長編化について聞いてみると、「長編向きじゃないんですよね」とあっさり笑う。
「だけど、ショートストーリーをいっぱい作りたいですね。できれば5分くらいのエピソードで本当にテレビで流せるくらい…26本とか。そういうのを作りたいなあ」。

インタビューの最後には、『ノラビッツ ミニッツ』に登場するキャロッツのイラスト(写真右上)を描いてくれた伊藤監督。“不条理”満載の伊藤ワールド、次はどんなキャラクターで私たちを楽しませてくれるだろうか?

『ノラビッツ ミニッツ』
発売中
発売・販売:松竹株式会社 映像商品部
価格:1,890円(税込)


『ノラビッツ ミニッツ』を知る5つのキーワード
http://www.cinemacafe.net/100dvd/shv/071109/
《シネマカフェ編集部》
【注目の記事】[PR]
page top