「あえて面白く表現しない面白さ」『歓喜の歌』の小林薫が語る“面白さの量”

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『歓喜の歌』 小林薫 photo:Yoshio Kumagai
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いま、最もチケットが取れないと言われている落語家・立川志の輔の同名新作落語を映画化した『歓喜の歌』。年の瀬迫る12月30日、小さな町の市民会館を舞台に、そこで働く飯塚主任が被るトラブルの数々を面白可笑しく描いた本作。優柔不断で事なかれ主義、責任逃れが常套手段という、ちょっとダメな男、飯塚主任を演じた小林薫さんに話を聞いた。

本作出演の話を最初に聞いたとき、小林さんは「流行りに乗ってるだけかな」と思ったと言う。
「いま、落語ブームですよね。芸として観て面白いというのもそうですが、落語界の徒弟制度、師匠がいて弟子がいて、なおかつ、芸を寝かして磨いていく時間、20年経って初めて味が出てくる芸、というか、そういう良さも含めてのブームだと思うんです。だから最初は、それに乗っかってる企画なのかな、と思って。『見てください。これが下敷きになっている作品です』と志の輔師匠の新作落語『歓喜の歌』のビデオを見たんです。それはもう落語として素晴らしい作品で面白かったんです。それで、監督と話したときに『映画的に撮ってください』とお願いしました。もちろん監督もその辺りは承知していらしたと思います。志の輔師匠が一人で全員の役をやるのと、俳優がそれぞれの役を背負って出てくるのとでは違いますからね」。

飯塚主任は、一言で言うと「ダメ男」。自分の失敗を他人のせいにするくせに、自分が被った被害については怒りまくる。
「魅力はないよね。むしろ人間が持っているズルさというか…。建前ってあるじゃないですか。公務員は人のために働きなさい、みたいな。公僕と言われるくらいだし。でもその通りに生きている人なんていないと思うんです。自分たちの中にもあるであろう、流れに身を任せてそつなく生きてというような、誰もこういう人を目指したくはないんだけど、なんとなく自分も同じようなことやってるな、というような人なんですよ。その辺が非常に面白いし、本音というか、ある種そういう姿をダブらせてみましたけどね。だから、積極的にこんな人になりたいというキャラクターでは全然ないよね(笑)」。

しかし、飯塚主任のそんな“ダメ”な部分が本作の面白さでもあるのだ。
「やる気ないでしょ? そのやる気のなさって、本人も分かってないところがあるんだよね。だけどこの人は自分が加害者なのにいつの間にか被害者面するところがすごくうまいんですよ。『参ったなー。あんなふうに言われてもなー』みたいな感じになっちゃう(笑)。そういう無責任で空回りしているような人なんだよね。愚かなんだけど、すごく面白い話だし、展開的にある種ドタバタなところもある。しかも、この男にいろんな問題を生じさせて追い込むんですよ。そういうふうに切羽詰らせた方が面白い、いろんな難題が降ってわいてくるみたいな感じで。そこだけでもかなり面白いから、僕はそれを過剰に面白く表現しようとしないように気をつけました」。

「面白さには量があるんじゃないかと思う」と言う小林さん。
「演じる側が、“こうすれば観ている人が面白いと思うだろう”と思っていると、観る側は“そういう面白さなのね”ってなっちゃうと思うんですよね。でも、この『歓喜の歌』はそこをあえて面白く表現しようとしないようにして、結果的に面白くなっていく話。でもそうする方が、むしろ膨らみが出て、観る側によってそれがさらに増幅されるというか…。これがこういう感じで面白いねという量が見えるよりは見えない方がより豊かな感じがするでしょ? すると、こちらが思っているよりも、面白いなと逆に思ってくれるかもしれないなと。だから、例えばコケて何か面白いことを作るというのはあまりしなくていいかなと思って演じました」。

《photo:Yoshio Kumagai / ヘア & メイク:Yukiko Kumagai》

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