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アカデミー賞候補へ“勝手に授与”vol.4 ポーリーにバンザイサン賞(三唱)!

日本時間で2月25日、ついにアカデミー賞が発表されました。が、その結果は各自ご覧いただくとして、このコラムではオスカー候補者、候補作品に勝手に賞を贈っています。

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アカデミー賞脚本賞にノミネートされた面々。サラ・ポーリーは前列右に
アカデミー賞脚本賞にノミネートされた面々。サラ・ポーリーは前列右に
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  • 『アウェイ・フロム・ハー君を想う』 -(C) 2006 The Film Farm/Foundry Films/pulling focus pictures
  • 『アウェイ・フロム・ハー君を想う』 -(C) 2006 The Film Farm/Foundry Films/pulling focus pictures
日本時間で2月25日、ついにアカデミー賞が発表されました。が、その結果は各自ご覧いただくとして、このコラムではオスカー候補者、候補作品に勝手に賞を贈っています。

このコーナーを締めくくるのは、『アウェイ・フロム・ハー君を想う』。この作品は、今年のアカデミー賞でジュリー・クリスティが主演女優賞に、サラ・ポーリーが脚色賞でノミネートされました。サラ・ポーリーと聞いて、「あれ?」と思った方もいるでしょう。そうです。『バロン』やら、『スウィート ヒアアフター』やら、『死ぬまでにしたい10のこと』やら、『ドーン・オブ・ザ・デッド』やら、『アメリカ,家族のいる風景』やらのサラ・ポーリー。彼女は本作で、脚本・監督を務めています。

2006年末、『あなたになら言える秘密のこと』のプロモーションで来日した際にインタビューをしました。そのとき、ちょうど長編初監督作品となる『アウェイ・フロム・ハー君を想う』を4月に撮り終えたのだと話していましたっけ。そのときの話によるとかなりしんどかったそう。当時の発言を引用すると…。
「私が成し遂げた中で、最もファンタスティックで最もハードなことだったわ。本当にものすごくハードだったの。準備に2か月、撮影期間は6週間、ポスプロに4か月、半年近くろくに寝ない状態が続いたのよ。これじゃ、女優の方がよほどラク(笑)。確かに、リサーチをしたりと女優も大変。でも大変の意味が違うの。女優としての苦労とは、自分をさらけ出したり、感情をぶつけるに十分なほど誰かを信頼したりすること。でも、監督の苦労というのは、いわば世界を背負うということ。自分の限界を超えているように感じるわ」。

そんな彼女が監督になりたいと最初に思ったのは20歳のとき。
「初めての短編を撮ったんだけど、初めは単なるおふざけのつもりだった。でも、映画を撮っている過程で、とにかく映画製作に恋してしまったの。だから映画学校に行ったわ。実際に素晴らしい監督とも仕事をしているけれど、そこが女優を続けながら、監督として自分の仕事をやることの利点ね。現場でも、素晴らしい才能を持った監督たちにいろいろ質問できるから。現場も映画学校のようなものだわ。それに、彼らがどうやっているか観察できるの。いい経験になるわ。特にアトム・エゴヤンには強く影響されたわね。映画を通じて、人生を興味深く、意義のあるものにできるのだと教えてくれた最初の人だから。ハル・ハートリー、ヴィム・ベンダース、マイケル・ウィンターボトムらからも多くを吸収しているわ。監督することと演技することは互いに影響し合っていると思う。どちらも経験することで、学ぶことはとても多い。監督として女優として成長する助けになる。これからも両方をやっていきたいわ」。

今回、アカデミー賞に脚本家としてノミネートされた彼女ですが、実は虚栄の街・ハリウッドからはやや距離を保ったまま活動しています。
「ハリウッドに異論があるとか、嫌いとかそういうことではないのよ。単に、トロントでの生活に幸せを感じているだけ。俳優でありながら、普通の人間として暮らせるところにね。自分の日常生活と仕事はきちんと分けておきたいタイプなの。トロントの映画業界も、互いに助け合ったりするところが気に入っている。ハリウッドより小さいし、インディペンデント映画も多いし、プレッシャーもないし。だからハリウッドに移ることは全く考えていないわ。取り残されるという心配も感じたことはないわね。実は、野心がないのよ。演技するのは好きだけれど、それで人生を変えようとは思わない。友達や家族から離れてまでとはね」。

野望がないなんて、この業界では珍しい! とにかく純粋に映画作りを極めていきたいなんて美しい! そんな彼女は、社会活動にも熱心です。
「私は活動をオーガナイズするのが好き。スポークスパーソンになるのは苦手なの。女優だから、やってといつも頼まれるんだけど。裏方に徹する方がよほど合っているのよ。だから、表に出ると不誠実な気がしてしまうの。先日、雑誌を見ていたら、グウィネス・パルトロウをはじめ多くのセレブが“アフリカを助けたい、エイズから命を救おう”というメッセージを発していたの。でも、その2ページ後ろには彼女が出ている香水の広告があったのよ。それを見てとてもナーバスになったの。これってとても危険だわって。女優は政治を語るべきじゃないと言っているわけじゃない。絶対にそうすべきだと思う。でも、そのほかの仕事の選び方次第で、関わってきた活動を卑小化してしまう危険があるということ。だから、映画のPRで政治を語ることにも慎重になってしまうの。あまりにも、活動が趣味か何かのようになってしまっている人もいるから。だからといって、彼らが活動すべきじゃないとは思わない。素晴らしい心から由来しているんだから。でも、彼らの解釈と判断はあまりにも複雑だわ」。

社会活動が活発なので、ハリウッドには彼女の言動に警戒するスタジオ(特に大手)もあります。そんな彼女ですが、よくぞ長年にわたり信念を貫き続け、よくぞアカデミーの候補作まで作ってくれました。こういった“映画界の良心”の活躍を見るのは嬉しいもの。受賞こそ逃しましたが、私は大満足。だから、サラ・ポーリーと『アウェイ・フロム・ハー君を想う』には、「バンザイサン賞(三唱)!」を贈ります。



© A.M.A.P.S.
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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