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「登場人物は僕と妻」イスラエルが誇る人気作家の初監督作『ジェリーフィッシュ』

何をやってもうまくいかないウエイトレスと、なぜか彼女の後ろをついてくる浮き輪を持った迷子の少女。互いに心の内を伝えきれない新婚夫婦。故郷に息子を残してきたフィリピン人のヘルパーに娘とすれ違ってばかりの老女。現代のイスラエルに生きる人々の姿を描いた、どこか切なく、そして生への愛おしさを感じずにはいられない物語『ジェリーフィッシュ』。本国イスラエルではその名を知らぬ者はいないほどの人気作家として活躍し、本作で初めてメガホンを取ったエトガー・ケレット監督に作品に込めた想いを聞いた。

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『ジェリーフィッシュ』 エトガー・ケレット監督
『ジェリーフィッシュ』 エトガー・ケレット監督
  • 『ジェリーフィッシュ』 エトガー・ケレット監督
  • 『ジェリーフィッシュ』 エトガー・ケレット監督
  • 『ジェリーフィッシュ』 (C)- 2007 - Les Films du Poisson / Lama Productions LTD / ARTE France Cinema
何をやってもうまくいかないウエイトレスと、なぜか彼女の後ろをついてくる浮き輪を持った迷子の少女。互いに心の内を伝えきれない新婚夫婦。故郷に息子を残してきたフィリピン人のヘルパーに娘とすれ違ってばかりの老女。現代のイスラエルに生きる人々の姿を描いた、どこか切なく、そして生への愛おしさを感じずにはいられない物語『ジェリーフィッシュ』。本国イスラエルではその名を知らぬ者はいないほどの人気作家として活躍し、本作で初めてメガホンを取ったエトガー・ケレット監督に作品に込めた想いを聞いた。

物語の着想は、監督の妻であり、本作の脚本と共同監督を務めたシーラ・ゲフェンの幼い頃の体験から得た。
「シーラが3歳の頃の話です。家族で海に出かけたときに、彼女が浮き輪をつけて海の中で遊んでいると、両親がケンカを始めて、彼女のことを忘れていなくなってしまったことがあったそうです。時間としては長くはなかったそうですが、海の中にぽつんと残され、自分の意志とは違う方向に流されるのは、子供にとって何とも言えない恐怖体験だったようです。この物語で描かれているのは、自分の意志に反して、世間の大きな流れに飲み込まれながら生きる人々の姿ですが、シーラのこの体験から物語のイメージを広げていきました。ちなみに、一人一人のキャラクターやエピソードに関しても、そのほとんどが私とシーラの性格や体験を投影しています。あの新婚夫婦はまさに僕らです(笑)」。

初挑戦となった映像での表現、そしてシーラとの共同での作業についてケレット監督はこう語る。
「僕の仕事は常にビジュアルと共にあります。僕にとって小説を書くということは頭の中に思い描いたビジュアルを文字で表現するという作業なんです。今回は、これまで文字にしてきた部分を映像として具現化していく作業だったので楽しかったです。ただ、シーラと作品のイメージを共有するには少し時間が必要でした。と言うのも、この映画に出てくる人物はみな、僕でありシーラなのです。特に、ウエイトレスのバティアや新婦のケレンは彼女そのものと言えます。ですので、彼女にとってはあまり受け入れたくない性格や言動もあり、撮影当初はとても批判的な視線でバティアやケレンを見ていました。この点については僕の視点が正しいという確信がありましたので、彼女とじっくり話をして映画として描くべき姿を理解してもらいました」。

また、劇中ではホロコーストや周辺諸国との問題など、イスラエルが抱える歴史的な背景を感じさせる描写が幾度となく登場する。監督自身もホロコーストの生存者の第二世代であるが、この作品でことさらに“イスラエル”という部分を強調するつもりはないという。
「製作の過程でそうした部分を意識したことはありません。むしろ物語を普遍的に描くことを常に考えていました。確かに映画の中で“ホロコースト”や“第二世代”といった言葉やアラブ人を意識したセリフが登場しますが、決してこれらは象徴的な意味を持つものではありません。そこで生きる我々にとっては、生活の一部であり普遍的なものなのです。これまでのイスラエル映画では、どうしても殴ったり、叫んだりするようなアグレッシブさが強調されて描かれていたと思いますが、この映画にはそうした特徴はありません。そういう意味で“新しいイスラエル映画”として観ていただければと思います」。
《シネマカフェ編集部》

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