「シガーと24時間一緒にはいられない」ハビエル・バルデム『ノーカントリー』を語る

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『ノーカントリー』 ハビエル・バルデム
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本年度アカデミー賞8部門ノミネート、作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の4冠に輝いた米映画『ノーカントリー』は、ある男がテキサスの町で麻薬密売にからんだ大金を発見し持ち去ったことで謎の殺し屋と警察が動きだす…という逃走劇を描いたサスペンス・スリラー。本作で殺し屋アントン・シガーを演じ、見事オスカーを手にしたハビエル・バルデムが公開直前に急遽来日! 世界中で絶賛されているこの話題作について話を聞いた。

『ハモンハモン』('92)、『夜になるまえに』('01)、『海を飛ぶ夢』('04)など話題作に出演、いまやスペインを代表する演技派として注目を浴びているハビエル。今回は非情な殺し屋・シガーを演じ、なんとも不気味な存在感を放っている。まず目を引くのはその外見。特におかっぱ頭が印象的だ。
「あのヘアスタイルはコーエン兄弟のアイディア。僕はあまり好きじゃないけれど(笑)、シガーというキャラクターの几帳面な性格、数学的な性格を出すにはもってこいの髪型だったと思うよ。コーエン兄弟の素晴らしいところは、そんな笑える髪型から怖さを引き出し、それを増幅させることなんだ」。

またシガーが殺しに使うのは普通の拳銃ではなく、ホースの先から圧縮した空気が飛び出すエアガンのようなもの。
「全ての武器は本の中から引用しているけれど、あの小道具を渡されたときは家畜を殺すためのキャトルガンだとは分からなかった。とにかく重くて使いにくかったよ」。

外見だけでも十分異様だが、より完璧な殺し屋像を作り上げるために動きにも制約をつけたのだと言う。
「スクリーンにシガーが現れた瞬間、観客にギョッとしてほしいというか、この人は何か違うという居心地の悪さを感じてほしいと思ったんだ。だから台詞が少ない分、動き(肉体)で表現しなければならないとコーエン兄弟と話し合った。人を殺すときは的確な動きで素早い行動をとるけれど、例えば水を飲むといった日常生活の動きはスローというように、仕事(殺し)と日常生活がシンクロしていないキャラクターを作り上げたんだ」。

顔色ひとつ変えずに人殺しをしていく冷徹マシンのような男を演じることは難しくなかったのだろうか。
「どんな役にも言えることだけれど、その役に共感できなくても理解することができれば演じることは可能だと思う。でもこのシガーとは24時間一緒にいることはできなかったね。毎回撮影が終わるたびに自分の中からシガーを追い出していたよ(笑)」。

『ブラッド・シンプル』('84)を観て衝撃を受け、コーエン兄弟といつか一緒に仕事をしたいと思っていたというハビエル。実際に彼らと仕事をしてみた感想は?
「『自分は本当にコーエン兄弟の映画に出ているのか!?』と、撮影中に何度もつねって確認したほど嬉しかった。どんな監督かって? ジョエルとイーサンの間には矛盾がないんだ。2人で1人というイメージが強い。スタッフやキャストにとても優しいし、何ていうのかな…彼らには奇妙な面白みがあっていつもみんなを笑わせてくれるんだ」。

そんなコーエン兄弟のユニークさは映画の随所にも散りばめられている。ハビエルの起用にもある理由があるのだとか。『ノーカントリー』のキャストのなかでハビエルが異郷であること、それがシガーのキャラクター作りに一役買っているのだと言う。
「映画ではシガーはどこから来たのか分からない人物として描かれている。スペイン人の僕はアメリカ人キャストの中にもテキサスの風景にも属していない。だからコーエン兄弟は国籍がなく浮いたキャラクターを僕に持ちかけたんだ。狂っている(すごい)と思うだろ(笑)」。

最初から最後までハラハラドキドキ、緊張感が途切れないことも『ノーカントリー』の面白さのひとつ。
「観ているみんなは恐いだろうけど、演じている僕自身は全然恐くない(笑)。そう言えば日本に来るときの飛行機で隣の人がちょうど『ノーカントリー』を観ていたんだ。目のあたりまで毛布をかぶって恐がっているから、少しでも愛想よくしようと思ってニコっと笑いかけてみた。そしたらもっと恐がっちゃったよ(笑)」。

《text:Rie Shintani》

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