「この作品で監督をやめてもいいと思った」阪本順治が秘めた『闇の子供たち』の覚悟

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『闇の子供たち』 阪本順治監督
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  • 『闇の子供たち』 -(C) 2008映画「闇の子供たち」製作委員会
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親の借金のカタとして売買される子供たち。大人たちの歪んだ欲望のはけ口とされ、中には違法な臓器提供の犠牲となる者も。そして、何より子供たちを売買する大人がいるという現実——。タイにおける子供たちの人身売買をテーマにした『闇の子供たち』。我々日本人にとっても決して他人事ではない“闇”に切り込んだ阪本順治監督に話を聞いた。

原作は梁石日の同名小説。重く、目を背けたくなるような現実を綴った原作の映画化を、監督はどのように決断したのだろうか?
「極端な言い方かもしれませんが、そもそも、日の当たらない場所にわざわざ光を当てて、世間にさらけ出すというのが、映画のあるべき姿だと思うんです。だから、この“闇”を提示されたとき、『あなたは光を当てないんですか?』と問われているような気がして、そこから逃げようとしない自分がいました。僕は決して映画監督を“続ける”ことを目的に映画を撮り続けているわけじゃない。もしかしたら、この作品で自分の映画監督としてのキャリアが終わるかもしれない。でもピリオドを打つにしろ、この作品でならいいかな、とも思いました」。

監督はインターネットや書籍でリサーチを開始し、脚本作りに着手。その過程で、原作とは異なるエンディングを導き出す。特に、主人公の新聞記者・南部がたどる結末は衝撃的であり、この問題に対する監督の強い覚悟を感じさせる。
「これまでも僕は常に、自分自身に問い返す形で映画を作ってきました。今回は異国のタイを舞台に、あの国のアンダーグラウンドを描いてはいますが、あくまでも僕を含めて日本人にはね返ってくる物語にしたかったし、そうでなければ意味がないと思いました。決して“主人公=僕”というわけではありませんが、物語の中心にいる彼に、最も厳しい現実を背負わせなくてはいけないんです」。

南部を演じた江口洋介さんとの間で、どのようなやり取りがあったのだろうか?
「江口くんは役作りをするとき、自身とその役柄を重ね合わせて、ヒントを見つけていくらしいです。でも、今回に関しては『どう自分をこじ開けても、南部と自分の間に共通する部分が全く見つからない』と悶々としてましたよ。そこで僕が言ったのは、彼は精神的な監禁状態にある。そして一人のときは心の闇と闘っているんだ、ということ。江口くん自身にとっても、この役をやることは闘いであり、相当苦しんでいました。それが、南部の苦悩と重なってスクリーンに映し出されていると思います」。

劇中では、人身売買を追及しようとする動きに対する、マフィアの妨害も描かれているが、実際のタイの撮影で妨害などはなかったのだろうか?
「最初はすごく心配でした。僕はいいとしてもスタッフやキャストの身に何かあったらと考えると…。ただ、撮影が始まったらもう粛々と進めていくしかないんです。なぜ子供たちを商品にするマフィアがいるのかというと、それは買う奴がいるからなんですよ。そう考えると気持ちが落ち着きましたね。実際には何の問題もなく撮影を終えました」。

先日公開を迎えた監督作『カメレオン』では、本作とは全くテイストの異なる世界が描き出された。「『カメレオン』で映画を作る喜びを取り戻した」という言葉から、『闇の子供たち』の撮影を通して監督が抱えていた重圧の大きさがうかがえる。
「夜な夜な『自分の仕事って何なんだ?』と煩悶してましたからね。そこへいくと『カメレオン』では、“映画を作る”という単純な場所に戻れた。役者に『じゃあ、もう少し痛い目に遭ってみようか?』って笑顔で言えましたし(笑)」。

この苦労・重圧と引き換えに完成した『闇の子供たち』で阪本順治は確実に、ある一つの到達点に達した。監督の覚悟、そして映画で描かれる現実から目をそらさずに受け止めてほしい。
《text:cinemacafe.net》

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