非情のヒロインを通して、ケン・ローチが良心とは何かを問う『この自由な世界で』

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『この自由な世界で』 -(C) Sixteen Films Ltd, BIM Distribuzione, EMC GmbH and Tornasol Films S.A.MMVII
  • 『この自由な世界で』 -(C) Sixteen Films Ltd, BIM Distribuzione, EMC GmbH and Tornasol Films S.A.MMVII
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イギリスの名匠ケン・ローチがカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『麦の穂をゆらす風』に続いて放った長編は、ロンドンの片隅でたくましく生きるシングルマザーの物語。働いていた職業紹介会社を納得のいかない理由で解雇されたヒロイン、アンジーは、ルームメイトの女性を仲間に誘い、持ち前のバイタリティで職業紹介所を自ら立ち上げることに。移民労働者たちに日々の仕事を世話しながら、ビジネスを軌道に乗せようと奔走する。しかし、不法移民に仕事をあてがう方がより儲けになると知った彼女は…。

タイトルにある“自由な世界”とは、なりふり構わないアンジーと、彼女の行為を許すどころか、望んでいるようにさえ思える社会に対する皮肉。ふてぶてしいまでのタフさと、自分の幸せのためには誰かの犠牲が必要なときもあるという未熟な理論を掲げ、弱者でありながら弱者を踏みつけにするアンジーは、偽善的な共感を許さない稀有なヒロインだ。そんな彼女の非情さが痛みを教え、自己中心的な貪欲さが良心とは何かを問いながら、社会システムに鋭い批判の目を向ける、極めてケン・ローチらしい一作。オーディションを経てアンジー役を獲得し、英国インディペンデント映画賞主演女優賞などにノミネートされたキルストン・ウェアリングの眼差しの演技も忘れがたい。

《text:Hikaru Watanabe》
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