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映像の魔術師・ターセム 限りない想像力と執念で完成させた『落下の王国』

鮮烈な監督デビューを果たした『ザ・セル』('00)から7年。ナイキやペプシなど数多くのCMディレクターとして、斬新な美的センスを発揮し、多くのクリエイターを魅了してきたターセム監督。その彼が次に完成させたのは、心と身体に傷を負った青年と無垢な少女が繰り広げる、“大人のためのファンタジー”。構想26年、撮影に4年の歳月をかけた『落下の王国』について、ターセム監督に話を聞いた。

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『落下の王国』 ターセム監督
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鮮烈な監督デビューを果たした『ザ・セル』('00)から7年。ナイキやペプシなど数多くのCMディレクターとして、斬新な美的センスを発揮し、多くのクリエイターを魅了してきたターセム監督。その彼が次に完成させたのは、心と身体に傷を負った青年と無垢な少女が繰り広げる、“大人のためのファンタジー”。構想26年、撮影に4年の歳月をかけた『落下の王国』について、ターセム監督に話を聞いた。

映像美で魅せる、めくるめく冒険ファンタジーの世界


ある理由のために青年は、少女に6人の勇者による愛と復讐の冒険の話を始める。監督は、完璧なファンタジー世界を作るため、CGに頼ることなく、世界24か国以上、世界遺産13か所という贅沢なロケを敢行した。中でも、ヒマラヤ山麓で撮影された広大な砂漠シーンで、一列に並ぶ人と馬、そして山々が連なるさまは叙情的であり、圧巻である。全部のシーンに苦労話があるというターセム監督だが、どこか楽しげな表情でその裏話を明かす。
「砂漠シーンのロケ地は1年間に9か月雪が降ってるような場所で、日が沈むと気温が急激に下がってしまうので、馬はすぐに鼻血を出してしまい、人間もほとんど自由に動けなくなってしまうんです。でも、ここは砂漠と山以外何もない場所だった分、人間と風景が一体となって映像に映ったんです。映像を見る限りではどのくらいの距離から撮っているか分からないと思うけど、実は何マイルも離れた僧院から撮影していたんですよ」。

壮麗な建築や自然を彩るのは、前作に続きタッグを組んだ石岡瑛子による、色鮮やかな衣裳の数々。赤、黒、緑、黄色…と戦隊ヒーローを彷彿とさせる勇者たちの衣裳は、それだけで登場人物たちのキャラクターを物語る。衣裳については、石岡さんと2人の共同作業として決めていったそうだ。
「僕はインド人なので、すごくはっきりした色が好きなんです。でも、デザインはあくまで全体のアートディレクションのカギとなるロケ地のイメージに合わせて作ってもらいました。1つだけ、(悪役の)オウディアス総督の衣裳に関しては彼女とは意見が合わず、ずいぶん苦労したけど、結果的には、石岡さんはとても鮮明にそれぞれのキャラクターのイメージを作り上げてくれたので、大変ありがたかったです」。

例えば、蝶々を探し求めるイギリス人の博物学者・ダーウィンには山高帽、蝶々の羽の模様が入ったファーを着せるなど、遊び心もたっぷり。ちなみに、監督のお気に入りの衣裳は?
「どれもこれもぴったりなので、選びようがないね(笑)」。

「頭がおかしくなければこの映画は出来なかった」

本作を語る上で欠かせないのが、ヒロイン・アレクサンドリアを演じたカティンカの存在。彼女の無垢で人懐っこい表情と演技が、物語に人間の温もりを加えてくれる。ルーマニア出身の無名の少女を敢えて起用した監督は、撮影を通して彼女が女優として素晴らしく成長したと称賛する。
「僕がアレクサンドリア役に求めていたのは、『ポネット』のような女の子だったんです。実は4歳くらいの子を探していたんですが、カティンカは当時6歳でした。でも英語を喋れないことが2歳差をカバーしてくれるかなと思って、彼女に決めました」。

とは言え、言葉が通じないことが撮影の障害にもなったのでは?
「もちろん大変でしたよ! 撮影は1日1シーンのみというペースでしたし。でも逆に、そのおかげで、彼女は“演技”をするのではなく、自由に、そして自然にふるまうことが出来たんだと思います」。

最後に、全てを賭けて本作を完成させ得たその原動力を尋ねたところ、「僕は頭がおかしいんだよ!」とずばり言い切ったターセム監督。
「狂うということには良いものと悪いものがあるけど、僕は映画を作るにあたって良い狂い方をしてたんだと思います。狂気みたいのがなければ、ここまでの映画は出来なかったよ!」

少年のような目の輝きととても語り尽くせないといった勢いで語ってくれたターセム監督。その無限の想像力が、次はどんな形となって現れるのか、期待が膨らむばかりである。
《シネマカフェ編集部》

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