世界の映画館vol.23 モンテビデオ「不器用だけど温かいウルグアイ」

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ウルグアイの首都・モンテビデオのシネコン photo:ishiko
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『ウィスキー』という中年の兄弟と中年女性の旅を描いた僕の大好きな映画がある。セリフは少なく、地味な映画だが、どこかほのぼのとさせてくれるウルグアイ映画だった。ウルグアイの首都・モンテビデオのシネコンで映画『カンフー・パンダ』のポスターを眺めていた。次の上映時間は18時。携帯電話を取り出し、画面表示の時計で次の上映まで5分しかないことを確かめる。ふと人の気配がして咄嗟に離れた。旅を続けているうちに防衛本能が刷り込まれ、自分に対する距離感に対して敏感になっていた。しかし、隣に立っていたのはシネコンのロゴが入ったユニフォームを着たスタッフである。彼はポスターを指しながらスペイン語で何か言っている。きっと「観たいのか?」と聞いているのだろう。僕は、「シー(イエス)」と答えた。しかし、彼は首を振ってどこかを指した。どうやら、この映画館ではなく、別のシネコンで上映しているようだ。

彼は手招きしてシネコンの外へ僕を連れ出し、歩き始めた。案内してくれるようだ。上映時間まで5分しかないのだが大丈夫だろうか? ただ、彼が持ち場を離れて案内するくらいだからきっと近いのだろう。決して話すわけでもなく、僕の方をチラチラ見ながら歩いていくだけである。後ろ姿から、どこか温かい人間性が伝わってくる。『ウィスキー』に登場する、不器用さは漂うが温かい人たちのように。

歩き始めて2〜3分くらいだろうか、もうひとつのシネコンに到着した。ドアまで開けてくれ、スタッフに一言二言かけていた。きっと僕が『カンフー・パンダ』を観たいことを伝えてくれたのだろう。「グラシアス!」と言うと彼は照れくさそうにはにかんで手を上げ、去って行った。チケットを用意しているスタッフの問いかけに分からないまま、全ての言葉に「シー」と答え、120ウルグアイペソ(約670円)を支払った。コカ・コーラのペットボトルが出てきた。「飲み物はいる?」という問いかけにも「シー」と答えたようである。スペイン語吹き替えの『カンフー・パンダ』を観ながら、久しぶりに飲むコカ・コーラはどこか懐かしい味がした。

(text/photo:ishiko
《text:cinemacafe.net》

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