『トウキョウソナタ』香川照之×小泉今日子 「セットに入った瞬間に夫婦になってた」

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『トウキョウソナタ』 香川照之と小泉今日子 photo:HIRAROCK
  • 『トウキョウソナタ』 香川照之と小泉今日子 photo:HIRAROCK
  • 『トウキョウソナタ』 香川照之 photo:HIRAROCK
  • 『トウキョウソナタ』 小泉今日子 photo:HIRAROCK
都内の小さなマイホームに暮らす、ごく普通の一家。何もおかしいことなんてなかったはずなのに、いつの間にか家族の間に溝が出来始め、気づけば一家はバラバラに——。世界がその才能に注目する黒沢清監督が初めて“家族”というテーマに挑み、その崩壊と再生を描いた『トウキョウソナタ』。本作で一家の主でリストラされたことを家族に言えない竜平と、“お母さん役”を演じることに疲れきった妻の恵を演じた香川照之と小泉今日子に話を聞いた。

それぞれの役を演じる上で、黒沢監督から何か要望やディレクションはあったのか尋ねると、香川さんは静かにかぶりを振った。
「監督は、そういう話をするのを嫌ってると言ってもいいくらい、細かい役作りや感情について説明をしない方なんです。脚本からすでに黒沢映画の空気感というのが伝わってきましたし、僕自身、全てを説明されずに、謎かけが残っている方が面白いと思える歳になってきました。ただ1点だけ監督に尋ねたのは『この映画は淡々としてますが、我々は淡々と演じ、それを監督がドラマティックに撮るのですか? それとも感情があふれそうなくらいに演じ、それを監督が淡々と撮るのですか?』ということ。すると監督は『間違いなく後者です。爆発しそうな感情を持って演じてください』と。それを聞いて『これは大変だぞ』と思いましたね」。

小泉さんもこの言葉にうなずきながら衣裳合わせの際のやり取りを明かしてくれた。
「監督がおっしゃったのは『これは家族の物語だけど、この一家の姿はそのまま東京であり、日本であり世界なんです。だから、そういう問題意識を持って映画の世界に立ってほしい』ということ。この言葉でずいぶんと役柄をつかみやすくなりました。それ以外に現場で細かいことは一切言われませんでした。簡単に動きの説明があって、実際に動いてみてそこで上手く感情が乗せられれば監督はすぐに『カメラ回します』って。監督のこうしたジャッジを信頼してました」。

香川さんと小泉さんの2人の間でも、事前の打ち合わせなどはほとんどないままに、最初から夫婦の空気が醸し出されていたと言う。香川さんは「良い映画というのはそういうもので、話し合う必要を感じなかった」と語り、こう続ける。
「結婚して20年ほどの夫婦なんですが、不思議と20年を経て退廃してるところからすんなり始めることが出来たんです。相手の人生に対して『きっといろいろあったんだろうな』と思い、それと同じくらい自分の人生についても『いろんなことがあったな』というのを感じつつも、口に出さない。夫婦ってそういうものだと思うんです。その感覚を撮影が始まる前から共有出来てたんですね」。

小泉さんはそれを「黒沢さんの魔法」と表現する。
「セットがあって、衣裳を着てメイクをしてその空間に入ったら、自然と夫婦・家族になれていたという感じです。それは役を超えた、私たちの持っている現場に対する愛情と言ってもいいのかもしれません。逆にいまはセットを離れても子供たちのことを見ていたいし、悪いことをしたら叱ってやりたいとも思う。自然とそういう感情になる、まさに魔法としか言いようがないですね」。

共演してみての互いの印象を尋ねると小泉さんからはこんな答えが返ってきた。
「香川さんが出演されている映画やドラマは拝見してましたので、すごく気になる俳優さんでしたし、共演したいという気持ちはありました。実際にご一緒させていただいて、なぜ共演したいと思ったのか、その答えをいただいた気がします。と言うのは香川さんの演技をそばで見ていると、本当に心が痛いんだろうな、本当に心が温かくなってるんだろうな、というのが伝わってくるんです。そういう方と共演しているとすごく安心できるんですよね」。

一方の香川さんは小泉さんについて「学生の頃からファンで、ドーナツ盤も持っていた」とを明かしてくれたが、実際に共演してみてかなり衝撃を受けたようで…
「普通は『昔からファンだった人と共演してる』とか考えるんでしょうが、小泉さんの場合すごく不思議で、スーパーアイドルとしてのイメージと今回の“疲れた母”のイメージの差が大きすぎるんですよ。ご一緒してすぐに『こっち(映画)の方が本当の小泉さんだろう!』って。だから、今年のサマソニ(SUMMER SONIC 08)に出てるのとか見ても『お母さん、何してるの? どうしちゃったの?』って思っちゃって(笑)。僕の中でこれまでの“アイドル・小泉今日子”と『トウキョウソナタ』以降の小泉さんは決定的に違う存在。それぐらい強烈でした」。

この映画で伝えようとしているメッセージについて「男を家庭で大事にしてやってください」と笑う香川さん。小泉さんも佐々木一家の食卓のシーンに触れつつ「私は昭和の女なので、お父さんがビールとつまみをやり始めて、女たちがその間に支度してみんなが揃ったら食べ始めるというのが心に残ってるし、そんな父親が好きでした。失われつつある古き良き家族の姿を、若い人たちに見てほしいです」と語った。

40代を迎え、さらに輝きを増す2人の名優が奏でるソナタをぜひ堪能してほしい。

《photo:Hirarock》

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