ファッション小噺vol.98 「あなたにとって、食べることとは?」

最新ニュース

『eatrip』
  • 『eatrip』
  • 『eatrip』
  • 『eatrip』
先日、食に関する素敵な映画を観てきました。クリエイティブフードディレクターの野村友里さんが初監督を務めた作品『eatrip』です。

野村さんには、以前フードディレクターとしてお話を伺ったことがあるのですが、アイディアいっぱいのとても素敵な女性。ケータリング、パーティなど、アパレルのイベントでも大活躍中です。仕事柄、人が食と関わる幸せな現場に立ち会うことが多いという彼女が、人間と食の関係について、それにまつわる空気感を記録したいと始めたこのプロジェクト。UAや浅野忠信、首藤康之といった著名人に加え、沖縄で自給自足生活を送る主婦、築地で働く問屋さんなどのインタビューが中心のドキュメンタリーで、人が集まり、美味しい食べ物と楽しい時間を共有できるという、シンプルだけれど極上の喜びを、改めて認識させてくれます。食べることが大好きな私は、この作品を観ていて、その幸福感を劇場にいながらにして食べる喜びを咀嚼していました。

帰り道、食べることについて、いろいろとつらつら考えていたら、「でも、食べる喜びに水をさされることもあるな」と嫌なことまで思い出してしまった私。食べる際に一緒にいる人のお行儀が悪いと、すごく気になってしまうのです。食べ方のことではなくて、むしろそれ以前のこと。
レストランなどに行くと「この味、濃すぎる」とか、「なんか美味しくない」などと言う人がいませんか? あれがとっても嫌なのです。お店を評価することが目的ならばしょうがありませんが、単に楽しい時間を過ごすためにやってきた場合、こういった否定的な発言は場の雰囲気を盛り下げるもの。もちろん、サービスが悪い、料理が冷めている、虫が入っていた! など、改善されて当然と思えることがあれば、お店の人に言うことが大切ですが、どうしようもないこともあります。そのひとつが、お店の味が口に合わないということ。あまりに味が酷い場合、つまり、プロとして料理を出す水準に達していない場合、それなりの対応をとるのは当たり前のことかもしれません(でも、日本でそんなお店に出会ったことはありますか?)。ただ、味覚は人それぞれ。美味しく食べている人の前で、「口に合わない」というような主旨のことを言ったなら、相手は「自分の味覚は洗練されていないのか」と嫌な気分になるはず(しかも、私の好きなお店なのと言って連れていったレストランで、それをやられたことが…)。ひとこと言いたがる人って、“自分が偉そうに見えること”を何よりも優先したいのでしょうか。楽しい時間を共有するつもりがない人とは、もう二度とご一緒したくないと思ってしまいます。

さらに、自分より一足先にお腹一杯になった人から、「もう食べられない」とか、「もうお腹一杯。気持ち悪くなった」など言われたことも。お腹一杯になったなら、だまってその幸せな気分に浸っていればいいのに。一緒にいる者としては、そんなことを言われたら、「まだまだいける」と思っていても、箸が止まってしまいます。

食事とは、お料理だけでなく、場の雰囲気やおしゃべりも大事なごちそう。“文句”という灰汁をふりまきたい人は、家で自分の好きなように手料理を作って食べていればいいのにと思うのです。

と、『eatrip』に登場する、楽しそうに食卓のありがたさを改めて実感しました。さらに、この映画の凄いところは、この映画が自分の食に関する考え方や思い出を引き出してくれるところ。食の安全が叫ばれる今、食べるということについて真剣に考える良い機会となってくれることでしょう。

食はいまや、美容&アンチエイジングの基本中の基本と考えられているとも。とある有名美容ライターさんにお話を伺ったところ、ブームとなっている自然派コスメ、オーガニックコスメ流行の発端は、食(オーガニック食材や自然食)なのだそう。“美しく生きる”ことに欠かせないということ、考えてみれば当然ですね。ところで、映画の中で何度か「良い食とは?」という質問が出演者たちに投げかけられました。そこで、自分でも考えてみたのですが、私にとっての“良い食”とは、「これでいいや」ではなく、「これがいい!」と思って食べられる全ての幸せな食事のこと。食事って、生きる糧であるだけでなく、心の糧でもあると思うから。

『eatrip』は初夏、全国にて公開予定(製作・配給:スタイルジャム)。美味しいものでも食べながら、気長に待ちましょう!

《text:June Makiguchi》

関連ニュース

今、あなたにオススメ
Recommended by

特集

page top