ノイローゼぎりぎりでMに目覚めた? “ミッチー”ではない3人の及川光博がここに! 

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『クローンは故郷をめざす』 及川光博 photo:HIRAROCK
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「みなさんの大好きなミッチーは、この映画のどこにも存在しません——」。そんな言葉で、“ミッチー”こと及川光博は、初主演映画『クローンは故郷をめざす』における自身の役柄を表現した。及川さんが演じたのは“3人の”高原耕平。宇宙飛行士として殉職した本来の耕平と、誤って少年時代の記憶のままで蘇ったクローンの耕平、そして完全な成功例として再度蘇った耕平と、3パターンの同一人物を演じ分けた。これまで、あまたの個性的な役を演じてきた及川さんをして「過去最高に疲れた作品(笑)」と言わしめた本作について話を聞いた。果たして冒頭の言葉の真意はどこにあるのか?

これまでの積み重ねを脱ぎ捨ててカメラの前に立つ“恐怖”

今回、監督を務めたのは、これが長編映画初挑戦となる中嶋莞爾。そのこだわり抜いた演出を及川さんは「針の穴に糸を通すようだった」とふり返る。
「監督の指示は非常に細かくて、ノイローゼになるかと思いました(笑)。そこまで自分を追い詰めて、なおかつ心が折れることがなかった。それがこの作品に出演してよかった、と思えるところですね。どちらかと言うと、僕はSなんですが、この作品を通じてMっ気に目覚めたかな、と(笑)」。

さらに、ミュージシャンとしてのライヴでのパフォーマンスやこれまで出演してきた映画やTVドラマでの演技と、今回の映画の決定的な違いについてこう語る。
「普段のアーティスト活動は、言わば自分の頭の中で描いた完成予想図に、1ミリでも近づけていく作業なんですが、今回は全ての判断を監督に委ねました。現場では、僕の持っているパブリック・イメージや“ミッチー”というキャラクター性が全く必要とされませんでした。テクニカルな意味での“演技”というものを封印されて、積み重ねてきたスキルを取っ払った状態でカメラの前に立つということが、これほど恐ろしいものなのか、と改めて感じました」。

この映画に参加することで、これまで築き上げてきた“ミッチー像”をあえて自らの手で一度捨て去ることを選択した。そこには、“演技者”及川光博のストイックなまでのあくなき向上心が見える。
「監督も、サービス精神やエンターテイメント性を重視してきた僕の“裏側”を暴きたいという欲求があって、僕を起用したみたいなんですけど(笑)、僕自身、自分の内面と向き合わざるを得なくなったとき、自分が演技者としてどれくらい魅力的なのか、ということを知りたかったんです。どちらかと言えば器用なタイプだと思いますし、これまでも個性的な役ばかりいただいてきて、演技の幅の広さという意味ではある程度の自信はありました。でも技術的な意味ではなく、存在感がどれほどのものなのかというところに興味がありました」。

“どうしたいか?”ではなく“どうあるべきか?”

その上で、先の「全てを監督に委ねた」という言葉通り、徹底的に及川さん自身の主観を排して3人の高原耕平を作り上げていった。
「脚本を読むとどうしても『自分だったらこうやって…』という思いが出てくるものですが、主観を主張し続けることは全く作品のためにならないということを実感しました。そこは一つ成長出来た部分だと思います。大事なのは“自分がどうしたいか?”ではなく“どうあるべきか?”ということ。実際、僕自身、演じるときはわりと冷静です。“役に成りきる”という表現がありますが、全く別人にはなれない。脚本を読み込んで想像力をフルに活用して、そこに説得力をプラスするだけですよ。そこが腕の見せどころですから(笑)」。

こうして完成した作品について及川さんは「魂と肉体、生と死のお話」と語る。
「観る人によって感想や印象は全く違ってくるでしょうね。分かりやすい結論がないからこそ、完結していると言えるのかも知れません。個人的には、生きていくことへの覚悟、もしくは生きているという事実がそのまま描かれているように思えました。風に揺れるススキの中で迎えるラストシーンの耕平の姿に何を感じるか——。みなさんがどういう感想を持たれるのか興味があるし、僕の新しい一面を楽しんでいただけたら嬉しいですね」。

独特のユーモアを交えながら、終始、気さくな口調で質問に答えてくれた及川さん。インタビューの中で「この映画に参加して、監督をやってみたいと思いを強くしましたね」とも。“表現者”として、この先どのような顔を我々に見せてくれるのか? ミッチーはまだまだ止まらない。

《photo:Hirarock》

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