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幸せのきっかけはここにもvol.1 アフリカンドラムのリズムにも『扉をたたく人』

6月。と言えば、ジューンブライドですね。6月の花嫁は幸せになれると言われますが、“6月の花嫁”にならなくても、幸せになる方法はきっといくらでもあるはず。というわけで今月は、日常にもある幸せのヒントを描いた映画をご紹介します。

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『扉をたたく人』 -(C) 2007 Visitor Holdings, LLC All Rights Reserved.
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6月。と言えば、ジューンブライドですね。6月の花嫁は幸せになれると言われますが、“6月の花嫁”にならなくても、幸せになる方法はきっといくらでもあるはず。というわけで今月は、日常にもある幸せのヒントを描いた映画をご紹介します。

初回にご紹介するのは、『扉をたたく人』。2009年アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたことでも知られる作品です。この映画、主人公を演じるリチャード・ジェンキンスがとてもいい。もちろん彼が、オスカーノミニーです。

ジェンキンスが演じているのは、妻を亡くしてからずっとふさぎこみ、単調な毎日の中で、喜怒哀楽をほとんど見せない“閉じている”男。人との交流を避け、他者を受け入れることを拒絶した大学教授で、9.11直後のアメリカを体現したかのような人物です。

そんな彼が、偶然出会ったのが不法滞在者のカップル。いままでの主人公なら、カップルとは単に通りすがりだったはず。ところが、シリア出身の男性の方が、アフリカンドラム“ジャンベ”の演奏者だったことが、出会いを決定的なものにするのです。彼らとの、そしてジャンベとの出会いにより、数々の感情が生まれ始めるというシンプルな物語なのですが、ちりちりと微妙に動き始める主人公の心が絶妙なタッチで描かれていて、妙に泣かせるのです。

亡き妻がクラシックのピアニストだったこともあり、音楽が好きだった主人公は、アフリカのリズムに興味を持ちます。ここで少し心の強張りを緩めたことで、原始的で生命力に溢れたリズムが、次第に主人公の心に染み入ってくるのです。太鼓はかつて、コミュニケーションの手段として使われていたもの。確かに、トントントンと繰り返される音は、まるで扉をたたく音のよう。ジャンベの響きが、孤独な男の心の扉を叩いたということなのでしょう。

ジャンベを通した交流を機に、主人公は人と関わることを徐々に恐れなくなり、やがて、笑い、焦り、怒り、悲しみなどが見え始めます。これらの感情こそ、人を人たらしめているもの。物語はその後、9.11後のアメリカが持つ理不尽な側面を象徴するかのような、決して喜びばかりではない展開へと進んでいくのですが、それでも鑑賞後はどこか優しい気持ちになります。一人の“閉じた”男性が、幸せになるための足がかりを見つけて、“開いていく”様を目撃したことで心が温かくなるのでしょうか。

英語の原題は『visitor』。始めはちょっとSFっぽいなと思いましたが(笑=確か、以前こんなタイトルの宇宙人地球侵略ドラマがあった)、お見事。本編を観ていると、visitorという原題が持つ、より深い意味を感じられるはずです。

この作品で、男性を変えるきっかけを作ったのは、それまで縁のなかったアフリカのリズム。このリズムだって、人種のるつぼであるN.Y.では、実は、見回せば常に隣にあったのです。なかったのではなく、見ようとしていなかったし、聞こうとしていなかったということ。人生にはこんなことが多いのかもしれません。自分が閉じてしまうことで、なかったことにしてしまう数々のもの。そんなものにも、幸せのきっかけが隠れているのかも。だとしたら、まずは“閉じず”に“開く”ことが幸せへの足がかりなのかもしれませんね。

この映画を観ていると、以前観たフランスの秀作『愛されるために、ここにいる』を思い出します。こちらの“きっかけ”はタンゴ。『扉をたたく人』が気に入った方は、DVDをぜひ手にとって観てくださいませ。

《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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