見上げてごらん、広い空vol.2 空のもっとその先へ。 『宇宙へ。』

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『宇宙(そら)へ。』 -(C) Dangerous Films (Rocketman) Ltd 2009
  • 『宇宙(そら)へ。』 -(C) Dangerous Films (Rocketman) Ltd 2009
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今回の皆既日食は、場所によっては6分以上という長時間にわたり観測できたそうで、天体ファンには絶好の機会だったようですね。とはいえ、あいにくのお天気で場所によって見えたり、見えなかったりと悲喜こもごも。自然のご機嫌ばっかりは、科学の力でもどうにもなりませんね。
 
そんな中、連日行われた報道によって私が初めて知ったのは、日食ハンターの存在。日食が観測できるところがあれば、世界のどこへでも馳せ参じる人々のことだそうですね。仕事は? 会社は? ご家族は? と訊ねたくなりますが、何を犠牲にしても見たいものがあるということなのでしょうか。

でも、そんな日食ハンターよりも、はるかに多くを犠牲にして、宇宙のロマンを追い続けた人々がいます。そう、宇宙飛行士たちです。今年はガリレオが天体観測を行ってから400年。そして、1969年にアポロ11号が人類初の月面着陸を成功させてから40年。その記念すべき、天文イヤーに公開されるのが、宇宙への夢を追い続けたNASAの歴史をまとめた映画『宇宙(そら)へ。』です。

これは、『ディープ・ブルー』、『アース』でヒットを記録し、ドキュメンタリー制作に定評のあるBBCが、NASAの貴重な記録映像に史上初めて無制限アクセスを許されたことから生まれた作品。NASAが設立以来、厳重に保管してきたものをたっぷり使っただけあって、ロケット開発や打ち上げにまつわる緊張の瞬間、失敗や成功の裏側、関係者の表情など、これまでに見たことのない宇宙開発の真実がまるで動く図鑑のようにしっかりと収められています。NASAの資料映像を基にしているので、話はもちろんアメリカ中心。宇宙開発は、アメリカとロシアの冷戦、軍事技術の開発競争と切っても切り離せないものなのに、その辺の話が全く無いな…と思っていたら、どうやらこれは“どんな犠牲を払っても、宇宙探査の夢を諦めない人々の物語”のよう。

リチャード・デイル監督によると…。
「人類による“宇宙への旅”を調査する過程で、私は現代の英雄たちに会う機会を得ました。実際に月面を歩いた男たちと握手ができたことは私の人生のハイライトと言えます。彼らが放つ圧倒的なオーラには惹き付けられずにはいられませんでした。しかし、彼らは神ではなく、私たちと同じ人間であり、“死”を免れない存在です。“死”を恐れる気持ちがあるはずです。それでも彼らはやり遂げます。そしてそのことこそが、彼らを勇気ある英雄にしているのです。NASAで働く人々を実際に見たときには、その情熱と献身に心打たれました。テレビでロケット打上げのシーンを見るだけでも十分に心躍る感動的な経験です。ロケットが地上から飛び立つ瞬間の力、その爆発、炎、煙、そして爆音はあらゆる想像を超えるものです。その驚異的な爆発的推進力の先端に、ほんの一握りの男女が座っているのだと考えるにつけ、この物語が、科学技術を語るべきものではなく、夢を実現する勇気を持つ人間のドラマであることは明らかなのです」。

ご存知の通り、人類は誰かの命を犠牲にしながら、宇宙へと一歩一歩近づいていきました。ロケットやスペースシャトルとともに消えていった命があります。でも、危険を十分承知の上で、彼らは命と引き換えにしてもかまわないと思うほどの“何か”を求めていたのです。

そんな勇気ある人々について思いを馳せていると、ある一つの疑問が浮かんできました。どんな犠牲を払っても辿り着きたい、解明したいと思っている宇宙は人類を黙って受け入れざるを得ないのではないかということ。人間は自分たちの住む地球ですら満足に守ることができていないのに、外に目を向けてしまってもよいものかということ。人類は進化せずにはいられない生き物。様々な技術発展により、あらゆるものに手を伸ばしてきました。それと同時に、夢や希望、好奇心だけでなく、多くのものを宇宙へと放ってきました。故障した人工衛星、ロケットの破片など、宇宙開発にともなって、年々その数は増えているのだそうです。推定約数千トンの宇宙ゴミ(=space debris)が、地球の衛星軌道上をどうすることも出来ずに漂っているのだとか。実際に、宇宙ステーションや人工衛星などが衝突の危機にあり、宇宙飛行士たちの命の危険性もあるのだとか。自分たちの行動が、ゆくゆくは自分たちに危機として跳ね返ってくるというのは、まさにどこかで聞いたようなシナリオ。とはいえ、自らが蒔いた種なら自分たちで何とかしなければなりませんが、“受け入れ側”としては迷惑な限りでしょう。

人類の行くところにトラブルあり。“ロマンを追求する”と言えば聞こえはいいけれど、行く先々で様々な問題を起こし続ける私たちの行動範囲が広がれば、どんなことになるのか見当はつくというもの。進化の弊害は、前回のコラムでも登場した手塚治虫の「火の鳥」に恐ろしいほどのリアルさで描かれていますし。

宇宙を愛すればこそ、考えなくてはならない問題もあります。膨大な資料映像の中からもし『宇宙(そら)へ。』第二弾が作られるならば、美しい話だけでなく、もうちょっと広く公正な視点で眺めたドキュメンタリーを観てみたいなと思います。

『宇宙へ。』公式サイト
http://www.we-love-space.jp/

世界天文年2009公式サイト
http://www.astronomy2009.jp/


《text:June Makiguchi》

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