まもなく開幕するトロント国際映画祭の「マスターズ」部門にて最新作『空気人形』が上映される是枝裕和監督が、トロントへの出発を前に報道陣の取材に応じてくれた。『ヴィヨンの妻』の根岸吉太郎監督がモントリオール世界映画祭で最優秀監督賞受賞という快挙を成し遂げた直後の取材となったが、是枝監督には一切気負いなどない様子で、淡々とした口調で抱負を語った。5月のカンヌ国際映画祭に続いての海外映画祭への出品となるが、是枝監督はこのトロント国際映画祭がことのほか気に入っているとのこと。「(デビュー作の)『幻の光』以来、これまで全ての作品を上映してもらってるんです。9.11の事件があった年は行けなかったけど、それ以外は全て現地に行っているし、『幻の光』のときは初めて海外で売れたりと自分にとって出発点になった映画祭なんです」。ベルリン国際映画祭、カンヌ国際映画祭に次ぐ来場者数を誇り、世界でも有数の国際映画祭となっているが、その特徴はノン・コンペティションであり、観客賞(ピープルズ・チョイス・アウォード)が最高賞にあたるという点。「“市民”の映画祭なんですよね。僕自身、顔が思い浮かぶなじみの観客の方がいっぱいいますよ。“競いに行く”という感じじゃないんですね。(トロントは)食事がおいしくて、チャイナタウンで中華料理を食べるのが楽しみです」と、出発前からかなりリラックスしている。根岸監督がモントリオールで監督賞を受賞した点に話題を向けても「良かったと思います」と意識するでもなくニッコリ。加えて「奥田瑛ニさんが海外の映画祭で審査委員を務めている、という点も映画界にとって非常に大切なことだと思います」と真摯な表情で語った。意気込むという雰囲気を全く感じさせず、「楽しむ」という言葉が何度も口をついて出た。巨匠たちの作品が並ぶ「マスターズ」部門で、是枝作品はトロントの観客にどのように受け止められるのか? 朗報を待ちたい。『空気人形』は現地時間で9月13日に上映される予定。日本では9月26日(土)よりシネマライズ、新宿バルト9ほか全国にて順次公開。