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映画で感じてファッションの秋Vol.2 ルブタンを履く女『あなたは私の婿になる』

先日、クリスチャン・ルブタンの発表会に行ってきました。ルブタン自身も姿を現した会場には、芸術的とも言える靴の数々が、テーブルの上でまるでご馳走のように並び、それはそれは美しく煌いていました。ルブタン氏自身が、「わたしの人生は思いがけない偶然の一致の連続です」と語っているように、パリの労働者階級の地として知られる12区で生まれ育った彼が、幼少期にMuseum of African Artで出会ったシャープなヒールの画に出会ったことを発端に、いまでは最も注目されるシューズ・デザイナーの一人となりました。

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クリスチャン・ルブタンの発表会より
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  • クリスチャン・ルブタンの発表会より
  • クリスチャン・ルブタン
  • 『あなたは私の婿になる』 -(C) Touchstone Pictures, Inc. All Rights Reserved.
  • ルブタン×デヴィット・リンチのコラボレーション
先日、クリスチャン・ルブタンの発表会に行ってきました。ルブタン自身も姿を現した会場には、芸術的とも言える靴の数々が、テーブルの上でまるでご馳走のように並び、それはそれは美しく煌いていました。ルブタン氏自身が、「わたしの人生は思いがけない偶然の一致の連続です」と語っているように、パリの労働者階級の地として知られる12区で生まれ育った彼が、幼少期にMuseum of African Artで出会ったシャープなヒールの画に出会ったことを発端に、いまでは最も注目されるシューズ・デザイナーの一人となりました。

そんな彼の作品は、そのドラマティックな人生を反映させているかのようにとても劇的。自らのブランド設立は1992年と意外にも最近ですが、独自のセクシーでフェミニン、かつ軽快なデザインと、シグネチャーとも言える“レッドソール”に惹き付けられる女性は多数。映画界にもルブタンをこよなく愛する女優たちは大勢います。ニコール・キッドマン、ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンスト、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ブランシェット、マドンナ、キャメロン・ディアス、アンジェリーナ・ジョリー。そして、元スーパーモデルで、現フランス大統領のサルコジ夫人、カーラ・ブルーニも愛用者の一人です。

さらに、映画界とのつながりはこんなところにも。2007年には、鬼才デヴィッド・リンチとコラボレーションを行い、カルティエ財団の回顧展のために“Fetish”と名づけられたシューズをデザイン。そのフェティシズム漂うシューズを、リンチがフォトグラフに収めるのですから、この上ないコラボです。

そんなルブタンのハイヒールを履く。これは、女性にとってひとつの“達成”ではないでしょうか。どんなにシンプルなブラックのパンプスでも、美しすぎる曲線と、真っ赤なアウトソールが、それはルブタンなのだと歩みを進めるたびに主張してしまう。ハイヒールを履くと、ただでさえ自然と背筋が伸び、不思議とワンランク上の女になったような気になるもの。なんともマジカルなアイテムなのですが、それがルブタンだと気持ちがさらに高揚。魔法に輪をかけてくれるのです。

先日あるテレビ番組で言っていたのですが、ブランド物を身につけるとその高揚感からかストレスが減り、女性ホルモンの分泌が活発になるという研究結果があるそうで。“どうでもいい格好”で人前に出るよりもお洒落をした方が、自然と身が引き締まり、自信もみなぎるということらしく、ブランド物による“引き上げ効果”は実在するようです。持ち物によってその人の価値が上がるわけではありませんが、気分が良くなるならそれはもうけもの。これはブランド物に限ったことではなく、自分に自信をもたらしてくれるお気に入りアイテム全てに言えることなのでしょう。

いい女になれたら、○○を買う。シャネル・スーツかもしれないし、エルメスのバーキンかもしれない。これさえ持っていればいい女だと思い込むのは勘違いというものですが、これが似合うほどのいい女になりたいという指標にするのは楽しいはず。経済的には今すぐに買えるものだとしても、それを自信を持って身につけるだけの余裕を目標とするのもおつなもの。だとしたら、ルブタンもそれが似合うだけのいい女になろうという指標になってくれるブランドのひとつなのかもしれません。

もしかすると、映画『あなたは私の婿になる』の主人公・マーガレットも、「いつかは…」とルブタンに憧れてきた女の子の一人だったのかもしれません。40歳になり、ニューヨークにある出版社の書籍部門で鬼の編集長と恐れられるようになった彼女のトレードマークは、膝丈のタイトスカートと真っ赤なソールのルブタンのヒール。社会的には絵に描いたような成功者ですが、プライベートは無味乾燥。ある日、カナダ人の彼女は、ビザの関係で強制退国させられることに。そこで思いついたのが、3年間も彼女の言いなりになってきた草食系男子の部下・アンドリューと偽装結婚すること。そう、彼女は日本のみならず世界に増殖中のクーガー女=肉食系女子なのです。常にかっちりとウエストの絞られたスーツは彼女の戦闘服。マーガレットを演じたサンドラ・ブロックも「彼女にとっては戦場で着る甲冑ね。タイトで、ぎゅっと締まっていて、最高な服よ。彼女は自分が美人だって自覚はあるけれど、その服装は美しく見せるためのものではないわ。自分自身を保つために、拘束したり強制したりすることに馴れているの。あの甲冑を脱がせたら、きっと破綻してしまうのよ」。

その仕上げをしてくれるのが、成功者としての証であるルブタン。それを履き続けることで、自らを鼓舞し続けようとするかのような彼女は、典型的な“肩肘を張った系”のキャリア女。例え田舎に行こうとも、ルブタンを脱ごうとはしません。彼女にとって、それは自分が成功者であることを忘れずにいる、お守りのようなものなのでしょう。ところが、アンドリューとの偽装結婚の過程で、プライドが少しずつ崩されていきます。女心の変化と、それに伴う外見の変化が、この映画の見どころのひとつなのですが、さて、どう変わるのかは観てからのお楽しみ。

最初は成功者の証として選んだブランドでも、それに頼り切るのではなく、もっと自然に接することができたなら、それこそがいい女の証なのかも。さて、マーガレットはどうなりますか。戦闘用の靴として用いていたルブタンを、本当に愛する靴のひとつとして扱える女性となる日がくるのか…。

好きだからそのブランドを選ぶ。なぜなら、その良さを本当に理解しているから。高級ブランドだというだけでそれを必要としているわけではないと思えたときこそ、本当に美しいものを見分ける力が備わったということ。そう思えたときこそ、それを自信を持って身につけることができるときなのでしょう。そんな風に履きこなすルブタンは、いっそう履く人を輝かせてくれるに違いありません。



クリスチャン・ルブタン公式サイト
http://www.christianlouboutin.com/
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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