【シネマモード】秘密にしたい若気の至りを描くセレブ監督に注目。夫はあの人…。

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『50歳の恋愛白書』 - (C) Lam Duc Hien,Photographer、Central Films Sarl,Morena Films SL,BetterWide Limited,Lumiere International limited
  • 『50歳の恋愛白書』 - (C) Lam Duc Hien,Photographer、Central Films Sarl,Morena Films SL,BetterWide Limited,Lumiere International limited
  • 『50歳の恋愛白書』 -(C) Lam Duc Hien,Photographer -(C) Central Films Sarl,Morena Films SL,BetterWide Limited,Lumiere International limited
  • 『50歳の恋愛白書』 レベッカ・ミラー監督
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30代以上の大人のみなさんに質問です。あなたは、昔の写真を人に見せられますか? 昔と言っても子供の頃ではなく、10代〜20代の最も“若気の至り”が炸裂している時期のこと。いまからは想像できないようなお化粧、ヘアスタイル、服装をしていた頃の写真です。堂々と、この頃の自分は輝いていたから、恥ずかしくなんかないと言える人はいいでしょう。でも、いくら輝いていたとはいえ、いま見てみると、妙に小恥ずかしかったりするもの。しかも、現在のライフスタイルとはかけ離れた青春(例えば、荒れていたとか!)を送っていた人にしてみれば、昔の写真を見せることが、恥ずかしいを通り越して、いま持っている威厳を失ってしまいそうとか。大なり小なり、そんな過去を理由に、かつての自分を封印している人もいるのかもしれません。『50歳の恋愛白書』の主人公、ピッパ・リーのように。
 
50歳のピッパは、かなり年上のベストセラー作家と30年も連れ添い、子供も立派に成長させました。美しく、社交的で良き妻、良き母の代表のような女性です。みんなは「理想の女性」として彼女を見ていますが、実は彼女には秘密にしてきた過去が。すでに有名作家だった夫と出会ったのは、20代。身勝手な父、薬物中毒の母に育てられた彼女は、麻薬とセックスに溺れた青春時代を送っていたのです。自堕落な生活から彼女を救い出したのが、後に夫となったハーブ。ところが、2人は一緒になるために、大きすぎる代償を払いました。大きな代償の上に成り立った幸せ。その中で彼女は、“幸福な女”を演じ続けてきました。彼女の過去を知るものは、夫だけ。そんな環境の中で懸命に、良妻賢母を演じてきたのです。

そんな彼女が、夫との生活がすべてではないと知ったとき、そこにもしかすると意味はもはやないのかもしれないと気づいたときに、徐々に素の自分を取り戻していく…。そんなデリケートでパワフルな作品が。『50歳の恋愛白書』なのです。

この作品を執筆、監督したのは、レベッカ・ミラー。主演の二人(ロビン・ライト・ペン&ブレイク・ライブリー)だけでなく、モニカ・ベルッチ、キアヌ・リーヴス、ジュリアン・ムーア、ウィノナ・ライダーら、豪華キャストの競演が実現しているのも彼女のなせる業。主役級のスターたちが、「彼女と仕事をしてみたかった」と語り、本作への出演を熱望したという一目置かれた存在です。

彼女の正体は、女優として活躍した後、脚本家、監督業で頭角を現しはじめた人物。ストーリーテラーとしての腕は、脚本を担当した『プルーフ・オブ・マイライフ』などで実証済み。さらには、戯曲家アーサー・ミラーの娘にして、ダニエル・デイ=ルイスの妻という、超セレブ監督なのです。

まず、本作を映画化する前に、小説として原作である「The Private Lives of Pippa Lee」(映画の原題でもあります)を書き下ろしたという彼女。初めて構想を持ち始めたのは、いまから10年以上前、20年ぶりの旧友たちと再会したときだそう。「“若い頃は、無責任な行動ばかりとっていた子が、立派な母親、妻になっているのを見て、いったい何が起こったんだろう”と思ったの。ひとりの人間のアイデンティティがこれほどまで変わった時、果たして内面も本当にかわるのかしら」と。

このテーマに関心を持ちながらも、ピッパ・リーという重層的な女性を描くのには、かなり苦労したと言います。
「若き日の彼女と年齢を重ねた彼女、2人の人物を描かなければならなかったから。まったく違う人物なのに、同一人物だし。同じ人物だと思ってほしいわ。これは、 私たちにも、よくあること。若い頃を振り返って、“これは誰? 信じられない。あんなことをするなんて私は何を考えていたのかしら?”と思うことがあるわよね。時間軸で分割して自身を見つめることは、面白いと思ったし、人間としての成長、道徳観や趣味の変化にも興味があった。 私たちの人格は常に変化しているものであると同時に、軸となるものは変化しない。それが面白いのよ」と話します。

人生におけるドラマを、ありそうでなかった視点で深く見つめているミラー監督。さすがは、歴史に名を残す名戯曲家の血を受け継いだサラブレッドというほかありません。しかも、女優を経験しているだけあり、俳優たちにどう接すべきかも、良くご存知。
「大切なことは“言うべきでないこと”を知り、いかに何も“言わない”かだと思う。“言わないこと”は“言うこと”と同じくらい大切なの。実際、からかわれるの。“何か言いに役者に近づいたのかなと思っていると、向きを変えて何も言わずに戻ってくることが多い”って。シンプルな言葉で的確に表現できなかったり、私自身も求めているものがはっきりしない時は、私の言葉に影響されてほしくないの。とにかく何か言って、次にどうなるか見ようとは思わない。多くの場合、指示を出せば、役者はあなたのイメージどおりに演じてくれるから。大抵の場合は、黙っていたほうがいいのよ」。

なるほど、これならスターたちがこぞって一緒に仕事をしたがるわけです。しかも、ロビン・ライト・ペンは、実年齢より7歳も上の役だって「ここまで深みのあるキャラクターは演じたことがないわ!」と大喜びで熱演。45歳のキアヌにいたっては、35歳という設定の役を演じるのも抵抗無しなんですから。それにしても、このアンバランスはどういうことなんでしょう。43歳の女優が50歳を演じて、45歳の男優が35歳を演じ、15歳差のラブ・アフェアを展開してみせるという不条理。でも、そんなことは気にならないほど心に響く作品ですから、まあいいか。

《text:June Makiguchi》

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