『カケラ』安藤モモ子監督×中村映里子 ドM監督のスパルタ女優教育とは…?

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『カケラ』 安藤モモ子監督×中村映里子
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俳優・奥田瑛ニの長女などという言葉は彼女の説明にはふさわしくない。初監督作品『カケラ』を世に送り出した安藤モモ子。映画という道を選ぶ上での父親の影響ははっきりと認めているが、すでに本作はロンドン、パリ、ストックホルムなど海外でもセンセーションをもって迎えられ“監督・安藤モモ子”の名を轟かせている。そして彼女が本作の“不思議な”としか形容できない魅力的なヒロイン役に抜擢したのが中村映里子。撮影の日々、作品に込めた思いについて2人に話を聞いた。

原作は人気漫画家・桜沢エリカによる同名漫画。映画では、もうひとりのヒロイン、どこにでもいる大学生のハル(満島ひかり)と、失った身体のパーツを作るメディカルアーティストのリコ(中村さん)を中心に物語が紡がれていく。監督は漫画を読んで、印象的なセリフだけを抜き出し、その後は一切、絵を見ずに脚本を作り上げていったという。
「絵を見ると、自分がどう撮りたいのかが分からなくなって混乱しちゃうな、というのがありました。だから、まず文字だけを起こしてみて、そうすると桜沢先生の作品は、すごく詩的で印象的なセリフがいっぱいあって。その中でも、『自分って一体なんなのか?』というアイデンティティを探す物語だと私は受け止めました」。

確かに劇中、揺れ動くハルを軸にかなりストレートに“自分探し”が展開される。
「とにかく、いまの社会って愛の安売りが多すぎる。“何となく好き、ヤル”みたいな感じで愛がコンビニ化してる。それは哀しいことで、心と肉体のつながり——体で感じる感覚や痛みが心にコネクションしてるってことがすごく大事だと思うんです。自分は何者なのか? とアイデンティティを探すことから、自分を愛すること、他人を愛することが始まるんじゃないかって思って、そういった思いや自分の青春時代を思い切り、脚本に投入してます」。

そんな監督の思いがこもったこの物語の“核”。ハルを時に惑わせ、導いていくリコを、実際に演じた中村さんはどのように捉えたのか?
「もう、とにかく真っ直ぐで一生懸命。すごく自由な子に見えますが、自由でいるってことは本当の意味で心が強いってことだと思うんです。『女の子が好き』と堂々と言えるのも、すごく強い女の子だなと思うし。演じる上では、現場に入る前から監督には超スパルタでビシビシやっていただいてまして(苦笑)。監督は、私が逃げようとしている部分、心の奥にグサグサと入り込んできてくれて…そうなると、もう逃げられないし向き合うしかない。そこで、この作品を戦いきろうって決めたんです。とはいえ、撮影の前半の頃は本当に辛かったですよ…」。

そう語る中村さんは、劇中のリコとは全く結び付かない、おとなしげで、少し恥ずかしがり屋の印象をこちらに与える。監督によると今回は“逆キャスティング”。ハルとリコに関しては、あえて全く逆のタイプの女優をキャスティングしたとのこと。では、そのスパルタぶりを自称「ドSでドM」の監督自らに説明してもらおう。
「最初の時点で時間もあまりなくて『これはブチ込むしかないな』って(笑)。まず、彼女の“感情のスイッチ”を探すために、とにかく彼女が苦手とすること、嫌だと思うことを全部ぶちまけて、ぶち当てて…。感情の往復ビンタ100回って感じ(笑)。逆に、満島さんはすごく芯の強いタイプなので、とにかく無視し、放置する。『これ分からないです。どうしても掴めないんですけど、どうしたらいいですか?』って来るのを無言で蹴落としてました(笑)。その不安な感じがそのまま、うまくスクリーンに映ってくれましたね」。

では、その中で中村さんが「リコが掴めた」と感じた瞬間は?
「対抗する気持ちが生まれてきたときですかね。最初は休憩のときにトイレに駆け込んで泣いて『もう帰りたい!』って思ってたんですが、向き合うしかない状況に追い込まれたときにムカついてきたんです(笑)。イライラしてきて…それから『あー、絶対勝ってやる!』って。そこから、活き活きとした感情が自分の中で芽生えてきて、これがリコなんだなって分かって。後半はすごく楽しかったです」。

中村さん自身、撮影を終えて、リコではなく満島さんが演じたハルに“かつての自分の姿”を見ているとか。
「ハルちゃんの何となく生きている姿って私そのものだな、と。何がしたいのか? どうやって活きたらいいのか分からないまま、周りに言われて何となく生きてた。だから、映画を観ると『あぁ、こういう私いたなぁ』って。それが、この映画とモモ子監督に出会って、痛くてもいいから真っ直ぐに生きられる、人を愛せるって素敵だと教えてもらったんです。だから、いまはリコみたいになりたいですね」。

時に静かに、時に激しく揺れ動き、ぶつかり合うハルとリコの感情。その誕生の裏には2人の女優とひとりの“鬼”監督の、映画に引けを取らないリアルなぶつかり合いがあった——。監督のように“ドM”ではないという人も、“カケラ”が魂に突き刺さる痛みをじっくりと堪能してほしい。
《text:cinemacafe.net》
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