オリヴァー・ストーン監督インタビュー 「お金? 危険な麻薬だね(笑)」

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『ウォール・ストリート』 -(C) 2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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  • 『ウォール・ストリート』オリヴァー・ストーン監督
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成功、挫折が渦巻くニューヨークのウォール街を舞台、いや“主人公”に、人間の欲望をえぐり出した映画『ウォール街』。発表から20年以上経ても物語が鋭さを失うことはなく、特にマイケル・ダグラスが演じたゴードン・ゲッコーという強烈なキャラクターは、いまなお金融関連のニュースや論評にしばしば引用されるほどである。この栄光と挫折を背負ったカリスマが再びスクリーンに帰ってきた。8年におよぶ服役を経て彼は何を学び、ウォール街で何をしようとしているのか? メガホンを握るのはもちろん、前作に続いてオリヴァー・ストーン。続編『ウォール・ストリート』公開を前に来日を果たした監督に話を聞いた。

映画の中の時代設定は2008年。現実の世界ではリーマンショックが起こり、その後、世界的規模での景気の悪化が誘発されることになったが、監督自身、こうした現実の世界の経済状況をどのように見ているのか? そう尋ねると「I don't know...」という、にべもない答えが…。
「例えば日本の状況を見ても、私が見た限りで以前来たときよりも新しい建物が増えてるように見える。私が思っているのは、経済ってものは経済学者やエコノミストたちが考えているものではないってこと。生活のレベル、という点で広い視野で歴史を見れば、人々の暮らしが向上しているのは事実だろう? エコノミストたちが見ているのは、切り取ったほんの一部の状況に過ぎないわけで、そういう混乱を呼ぶだけの言説は注目するに値しないよ。私自身、経済について学んだことはいくらでも話せるけど…本当のところは分かんないっていうのが正直なところだよ」。

さらに「ただし、ひとつ確かなことがある…」と切り出し、アメリカ経済、そしてウォール街の在り方について辛辣にこう続ける。
「ウォール街は巨大化し、中にはとてつもない金額を稼ぎ出す人間が出現した。でもそこで生み出されたお金が社会に還元されることはない。その大きな利益が社会に貢献することはなく、自分たちの中だけで投資され、その中であらゆる活動が完結してしまってるんだ。銀行は、新しい企業に融資し、経済を活発化させるのが本来の仕事のはずだが、言ってみればそうした機能をすでに失ってしまっているんだ。ウォール街はアメリカの経済の中で意味のない存在となってしまった…それが私の考えだよ」。

マイケル・ダグラスにアカデミー賞主演男優賞をもたらすことになった強烈なキャラクター、ゴードン・ゲッコー。前作の公開後には、彼に憧れて投資銀行への就職を希望するアメリカの若者たちが増えたとも言われている。こうした現象には、監督としては複雑な思いもあるのでは?
「映画というものは作り物だけど、成功すれば本物に見えるという前提がある。80年代の頃は、ゲッコーという男は反道徳的であったけど、成功を敬う拝金主義的な社会の風潮を背景に、『自分もああなれるかもしれない』という英雄的な一面を持った存在だった。翻って今回の話では、彼は何もないところから、絶対に返り咲いてやるという意志を持ち、嫉妬に狂いながら天才的な力を発揮して大儲けする。こうなると、誰にでもできるようなことではなくて、前作と比べてかなりの(観客との)距離感があるんだ。ただ、私に言えるのは、あの役はすでにクリエイターの手を離れているということ。映画の中でゲッコーが見せる表情に、何を見るかはあなたたち次第ともいえる。実際、この物語、あの男の人生をどう終わらせるべきなのか…自分でも分からないよ。最後の場面で風船が出てくるけど、『ウォール街の新しいバブルは何なのか?』ということを象徴的に表していると言えるかもしれない。さっき、ウォール街の機能が実質的に終わったと言ったけど、それでも街がなくなることはないんだろうとも思っているよ。同様に人間もどうあっても死なずに生き続けるってことだね」。

そして今回、マイケル・ダグラスに加えて、その娘役でキャリー・マリガン、さらに若き投資家としてシャイア・ラブーフという新世代のスターがキャスティングされている。オリヴァー・ストーン作品といえば、先ほどのゲッコーの例を挙げるまでもなく、緊迫感の溢れるストーリーの中での魅力的なキャラクターたちの躍動が特徴と言える。彼らの魅力を引き出す秘訣とは?
「まず何より、キャスティングが大切だね、それが全てと言ってもいいほどに。だから、私はできるだけ多くの人に会うようにしているよ。自分で紙に書いたキャラクターが、俳優の登場によって変化し、膨らんでいくことも多々ある。だからこそ、自分のイメージを超える俳優をキャスティングするために多くの人に会うんだ。それから、リハーサルは時間ギリギリまで徹底的に、緊迫感を持ってやっているよ」。

さらに、シャイアとキャリーが演じたキャラクターについてはこんな“見解”を…。
「実は、ウォール街で彼らのような若者にたくさん会ったよ。お金はほしいし、社会に変革をもたらしたい。何より、理想に燃えている若い投資家にね。劇中の2人は、理想を求めてクリーンエネルギーの開発に投資するわけだけど、言うなればいまの若い世代は、小さな頃から温暖化やら、たばこの害やら、マイナスの要因ばかりを聞いて育っていて『何とかしないと』という理想を持って生きざるを得ないのかもしれない。そういうことも含めて、2人にはとにかく理想に生きる人物を演じてもらった。映画を観た人から『いい人過ぎてありえない』とも言われたけど、それもいいんじゃないか…“いい人”で結構だと私は思ってるよ」。

ズバリ、監督にとって金はどういう存在? 友人だろうか? それとも…。
「危険な麻薬だね(笑)。中毒になりかねないし、お金に溺れるなんて簡単なことだよ。でも、お金があるからこそ社会への貢献もできるんだ」。

この映画はニューヨークのあの一角に生きる者だけを描いた映画ではない。いまを生き、そして未来に何かを遺すことを使命として帯びる我々の映画なのだ。
《text:cinemacafe.net》

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