ヘレン・ミレン インタビュー “イマジネーションの旅”は続く

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『テンペスト』ヘレン・ミレン -(C) Startraks/AFLO
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  • 『テンペスト』 -(C) 2010 Miramax Films.All right reserved.
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「演じる」ということは、それほど魅力的で、まるで麻薬のように女優を惹きつけてやまないものなのか。英国を代表する名女優ヘレン・ミレン。歳のことを言うのは失礼かもしれないが、60代半ばにして、昨年と一昨年だけで計5本の映画に出演しており、中には『RED/レッド』のように大きな銃を手に激しいアクションが要求される作品も。一体何が彼女を動かすのか? まもなく公開となる『テンペスト』は、シェイクスピアの最後の作品。『アクロス・ザ・ユニバース』のジュリー・テイモアが映像技術を駆使して“映画”として作り上げた。シェイクスピアはヘレンにとって、生涯を通じて舞台で繰り返し演じてきた作品だが、今回、彼女は何を感じ、表現したのか——?

数多くのシェイクスピア作品に出演してきた名女優の新たな挑戦

シェイクスピアが“ゆるし”をテーマに書き上げたこの戯曲。謀略によってミラノ大公の座を追われ娘と共に流れ着いた孤島で12年。魔法の力を極めた主人公がついに自らを陥れた者たちへの復讐の機会を手にするのだが…。

今回の映画の何よりの特徴は、主人公のプロスペローの性別を変更し、プロスペラという女性としたこと。だがヘレンは映画の話が来る以前から、この主人公を女性として演じることは可能だと考えていたという。どのように役を作り上げていったのだろうか?
「特にジュリーとの間で話し合いといったことはしてないの。というのは、すでに原作のしっかりとしたセリフがあり、それは女性に置き換えても納得のいく素晴らしいものだったから。ジュリーから言われたのは、映画として撮る上で、芝居臭さをなくしてほしいということ。これまでに何度もシェイクスピアの作品に参加して、この『テンペスト』も違う役で何度も演じたことがあったから、そうした中で身についてきた芝居っぽさを落として、自然な会話をするというのはチャレンジだったわ。でも、女性だからこその難しさというのはほとんど感じなかったわね」。

だが完成した作品を観ると、プロスペラの“復讐”と“ゆるし”のはざまで揺れる心情やほかの登場人物との関係性において、女性であるがゆえの空気感といったものが確実に感じられる。
「そうね。例えば娘のミランダ(フェリシティ・ジョーンズ)との関係で、エモーショナルで心温まる部分、娘を深く愛しているという気持ちが強く出たと思うけど、それは女性ならではと言えるわね。それからエアリエル(妖精/ベン・ウィショー)とも単なる主従というだけでない、ソフトで知的な関係が築けたと思う。この部分もセリフは原作からほとんど変更されていないけど、より面白くなった部分ね」。

「やり尽くしてと思うこと? もちろんあるわ(笑)」

「シェイクスピアというのはいつでも何かを学べる深さがあるの。深く掘り下げるべきものがね」とヘレン。プロスペラの燃えるような“憎悪”と“寛容”で揺れる心理の変化の過程を女優として、彼女はどのように捉えたのか?
「あの復讐の思いを表現するということは、自分の女優としての個人的な経験や心理を役に重ね合わせていくことが演技の中で要求されたわ。それから“ゆるし”という部分に関しては、プロスペラがどのようにして死を迎えようとするのか——それはシェイクスピアが描こうとしたことでもあるのだけれど——自らの死に対して準備をする、ということが重要なテーマとして横たわっているの」。

それにしても、本作のプロスペラもそうだが、ヘレンの演技からは“円熟”や“老練”というよりも、荒々しいまでの情熱、熱さが伝わってくる。年齢を重ねるということについて、ヘレンはこんな言葉を口にする。
「年を取るということはもちろん、誰にとっても悩めることではあるけど、私は意外と上手にそこに向き合えたと思うわ。13歳、14歳の少女の頃は自分の欠点を挙げては『ああすれば良かった』、『こうなりたかった』なんて思っていたものだけど、年を重ねてそういうことを気にしなくなった。それが上手に年を取るコツかしら(笑)?」

では、冒頭の質問に戻ろう。すでにオスカーをはじめ、ありとあらゆる賞を手にし、大英帝国勲章まで受勲しているヘレンだが、それでも彼女が常に新たな作品に挑戦し、情熱を役にぶつける理由はどこにあるのだろう?
「いろんな俳優が言うのは『いまある仕事をもらわないと、干されちゃう』ということ(笑)。その心配は私もあるから、どんどんやってしまうのかもね。いろんな映画でいろんな場所に行けるのも魅力ね。『RED/レッド』ではハンガリーとイスラエル、この作品ではハワイで撮影できた。そういう好奇心でついつい受けてしまうのね(笑)」。

本当にそれだけ? 「もうやり尽くした!」と思ってしまうことは…。
「あるわよ! もちろんあるわ(笑)。時々『もう十分ね、やめようかしら』と思うわ。でも、少し休みを取ってのんびりすると不思議とまたやりたくなるの。自分の中では“不思議なイマジネーションの旅”って呼んでるわ(笑)。しばらく演技をしてないとこう思うの。『また、イマジネーションの旅に出ようかな』って」。

願わくばその旅路をいつまでも続けてもらいたいところ。70歳、80歳になっても新たな表情を見せてほしい。



© Startraks/AFLO
《text:Naoki Kurozu》

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