ウォンビン インタビュー 成熟した男の瞳で、新しい愛を魅せる

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『アジョシ』ウォンビン photo:Toru Hiraiwa
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「よろしくお願いします」と取材部屋に入ってきた瞬間、彼をとりまく半径5メートル、いや10メートルの景色がワントーン明るくなり、艶っぽい空気がそっと流れ出す…。ウォンビンという俳優は、そんなオーラを感じさせる正真正銘のスターだ。第一次韓流ブームの火付け役、韓流四天王としての活躍を経て、青年から大人の男へ、アイドルから深みのある俳優へ、一歩一歩、確実に前進してきた者の存在感は圧倒的、その一言に尽きる。そして、彼が『母なる証明』から2年ぶりの主演作として選んだのは、アクション・エンターテイメント『アジョシ』。念願だった初の本格派アクションに挑んだだけでなく、これまでに見せたことのない悲哀と狂気と愛に満ちた男テシクを演じ、さらなる新境地を拓いた。ウォンビンが求め、伝えたかったものとは何だったのか。その真意に迫った。

初めて出会った「大人と子供が理解し合い、寄り添う愛」

撮影に入る何か月も前から過酷なトレーニングを積み、まるで自分の体の一部のように銃やナイフを扱い、鍛え抜かれた肉体で次々と敵を倒していく──。華麗なアクションを披露するウォンビンは、たまらなく格好いい。ほとんどのアクションを自らこなしていることからも、彼がこの作品にどれだけ情熱を注いでいるのか伝わってくる。「複雑なアクションもあり、トレーニングが大変なときもありましたが、いままでとは違うジャンル、試みたことのないアクションだったので、苦労というよりも楽しみながら撮影をしていました。ただ、演技と並行してのアクションは少し大変でしたけれど(笑)」。穏やかな笑みを浮かべて撮影をふり返るが、元特殊工作員という設定を、完璧にリアルに演じるには、相当の努力があったはず。

「相手を一撃で倒す武術をみせる必要があったので、フィリピンの“カリ”やインドネシアの“シラット”など3種類の東南アジアの武術をミックスして、“テシクの武術”という一つのスタイルを作り上げました」。やはり多くの時間を費やしてテシクを作り上げている。スタイリッシュでスピード感のある戦闘シーンはこの映画の見どころであり、これまで隠されていたウォンビンの男性的なカリスマ性が露わになる劇的な瞬間でもある。特に後半、テシクとベトナム人の殺し屋ロワンとの1対1のハンドナイフを使った格闘シーンや、クライマックスに用意された1人対17人の対決シーンは、残虐さ、美しさ、凄まじいテシクの怒りが、交響曲を奏でるかのように描かれる、映画史に残る名シーンと言ってもいい。新しいウォンビン、これまでに見たことのないウォンビンの姿がそこにある。しかし、彼がテシクを演じることを熱望した本当の理由は、派手なアクションではなく、キャラクターの内面。「過去のある出来事がきっかけで深く傷つき、世間との関わりを絶って生きている男の心理状態に魅了された」と語る。

「最初に台本を読んだときに惹かれたのは、アクションではなくテシクの内面でした。とても孤独で、心に痛みを抱え、悲しみに満ちている…。そんなテシクのキャラクターに強く惹かれたんです。彼の隣に住む少女のソミもまた、世の中のどこにも身を寄せるところがない孤独な少女。1人の男と1人の少女が心を通わせていくストーリーは、胸に迫るものがありました。いままで僕は、兄弟同士の愛、家族同士の愛、男女の愛を演じてきましたが、この『アジョシ』と出会ったことで、愛の形はそれだけではないことを知りました。子供と一緒にあそこまでの愛を表現したのは今回が初めて。(家族ではない)大人と子供の愛も成立するんだなと、大人と子供が理解して寄り添っていく愛を表現することも可能だと知ったんです」。

新しい愛の形を知ったウォンビンは、テシクの感情のすべてを瞳に込めた。
「今回の役柄は、それほどセリフは多くありません。セリフで気持ちを伝える個所はかなり限定されているんです。近づきたいけれど近づくことができなくて、それでもお互いに理解しあって心と心を通わせているテシクとソミ。その気持ちを目で、眼差しで、伝えています。ただ目で演じようとしたのではなく、テシクの感情を台本に忠実に演じていけば、きっと目に表れるだろう、そう思って演じていました」。深い悲しみ、隠しても滲み出てくる優しさ、鋭い狂気…あらゆる感情を自在に表現するウォンビンの瞳は無敵だ。なかでも、生きる希望を失った男が、少女を守るために立ち上がる、上半身裸でバリカンを使って髪を剃るシーンは格別。静から動へ切り替わる瞬間をみごとに目で表現した印象的深いシーンのひとつだ。「テシクは以前、特殊要員だったという過去があります。髪を切ることで特殊要員の頃の自分に戻る、そんな意志の表れだと思ってあのシーンを演じています」と、テシクの心情を解説するウォンビンの瞳は、どこまでも透明で美しく、年齢を重ねたからこそ醸し出せる色気を帯びていた。

“アジョシ=おじさん”のイメージを覆した格好よさ

今年で34歳、芸歴15年を迎えるウォンビン。彼のフィルモグラフィーを改めて紐解いてみると、意外なほど出演作が少ないことに驚かされる。映画は『ガン&トークス』、『ブラザーフッド』、『マイ・ブラザー』、『母なる証明』、そして本作『アジョシ』の5本。だが、そのすべてが秀作。そこから垣間見えるのは、丁寧な作品選びだ。1作1作、丁寧に作品を選びながら、記憶に残る確かな演技力で、ゆっくりと我が道を進んできた。スローペースながらもパワーのある俳優人生を送る彼が、つねに心に留めていたキーワードは“愛”だった。

「よく『母なる証明』『アジョシ』はガラリと違う役柄ですね、と言われるんですが、僕自身はそれほど違いがあるとは思っていないんです。作品選びの基準は、しっかりとしたストーリー、シナリオ。その中に“愛”というコード、“愛”というモチーフが入っているかどうかに、かなりの比重を置いています。作品のなかにどれほどの信実が込められているか、キャラクターが信実を伝えられるかということも僕にとっては大切な基準です。また、今回の『アジョシ』では、わずかでもいい、人はこれほど変身できるんだという可能性も見せたかったんです」。いわゆるダサいイメージとして使われる“アジョシ=おじさん”という言葉を、強くて格好いい男を象徴する言葉に変えてしまったことも、ウォンビンだからこそ成し得たこと。

最後に「アジョシという役を演じたけれど、自分自身はまだアジョシ(おじさん)にはなりたくないな(笑)」と、はにかむ彼に、強い男とはどんな男なのか投げかけてみた。少し間を置いて返ってきたその答えは「気取らない男、わざとらしくない男ですね。そういう男性になりたい、近づきたいと日々思っています」。なんとも彼らしい答えだった。K-POPが勢いを増す新たな韓流ブームのなかであっても、ウォンビン健在! と、スター俳優の底力をみせ、守られる役から守る役へと変身を遂げたウォンビン。『アジョシ』を境に、“守る男”ウォンビンの新たな章がスタートした。

《photo:Toru Hiraiwa / text:Rie Shintani》

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