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『レンタネコ』市川実日子 心の穴ぼこは「埋める」から「ほうっておく」へ

友だちや恋人、家族、同僚…誰かしら傍にいたとしても、なぜか寂しさに襲われるときがある。そんな心にぽっかりと空いた穴ぼこを埋められるモノは人それぞれで、映画『レンタネコ』に登場する人々の場合は“猫”の存在がその穴を埋めてくれる──。「♪レンタ〜ネコ、ネコ、ネコ。寂しいヒトに、猫、貸します」と呼びかけながら、穴ぼこの空いた人と猫との出会いを手伝うヒロイン・サヨコを演じた市川実日子。30代を迎え、大人の女性に近づきつつある市川さんの心の中にも確かに寂しさはあった。市川さん、その寂しさとどう向き合っているんですか?

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『レンタネコ』市川実日子 photo:Yoshio Kumagai
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友だちや恋人、家族、同僚…誰かしら傍にいたとしても、なぜか寂しさに襲われるときがある。そんな心にぽっかりと空いた穴ぼこを埋められるモノは人それぞれで、映画『レンタネコ』に登場する人々の場合は“猫”の存在がその穴を埋めてくれる──。「♪レンタ〜ネコ、ネコ、ネコ。寂しいヒトに、猫、貸します」と呼びかけながら、穴ぼこの空いた人と猫との出会いを手伝うヒロイン・サヨコを演じた市川実日子。30代を迎え、大人の女性に近づきつつある市川さんの心の中にも確かに寂しさはあった。市川さん、その寂しさとどう向き合っているんですか?

30代を迎えて変わった“穴ぼこ”の受け止めかた

「以前は、かわいい文房具や素敵な洋服を買ったり、友だちと会ったりして穴ぼこを埋めようとしたこともありました。今でも無意識にそうしているかもしれないけれど、埋めるために何かをしても埋まらないときもあるんですよね。それに気づいてからは、敢えて何かをしたりしないように。ああ、穴ぼこ空いているな…って、空いていることを受け止めて知っておくことも大切だと思うんです。だから今はほうっておきます(笑)。そんなふうに思えるようになったのは、20代を経て30代を迎え、年齢を重ねたからなのかもしれないですね。共演した田中圭さんとも“穴ぼこ”の話をしてたんですけど、(20代の)田中さんは『えーっ! 僕はすぐに埋めます!』って言っていましたから(笑)」。自分自身の気持ちを素直に受け止められる年齢であることも、荻上直子監督がサヨコ役に市川さんを選んだ理由のひとつなのだろう。監督は「市川さんが持っている少年っぽさを出せる最後のタイミングだったんじゃないかと思っています」と、今の市川さんの魅力をスクリーンに映し出している。

荻上監督といえば、デビュー作の『バーバー吉野』を始め、『かもめ食堂』、『めがね』『トイレット』と、新作ごとに様々な形で人とのつながりを描いてきた監督だ。『めがね』に続いてのタッグを組む市川さんは、荻上監督の“らしさ”について「ファンタジーとリアルが入り混じっている世界を創り出す監督」と表現する。「寂しい人にネコを貸すという、ありそうでなさそうな物語は、見方によっては不思議な話とも思えるけれど、気づくと自分と重ね合わせたり、(その世界観を)自分の中で探していたりするんですよね」。中でもファンタジーとリアルを強く感じたのは、サヨコが川辺で立ち尽くすとあるシーン。「あれ…みんな何処に行っちゃったんだろうって感じるあのシーンには、いろいろな意味があると思うんです。具体的な言葉にはしていないけれど、あの感覚、なんか分かるんです。(周りに人がいるのに)突然、ひとりになってしまう感覚ってありますよね? 普段、感じていても言葉にしていない、でも確かに感じ続けていることが、あのシーンに描かれていて。うん、ファンタジックなのにリアルなんですよ」。

「猫との距離がぐっと近くなった」撮影現場

リアルなキャラクターとしてサヨコの前に現れるのは、夫と愛猫に先立たれた老婦人、単身赴任中の中年男、自分の存在意義に疑問を感じている受付嬢。寂しさゆえの穴ぼこを抱えた彼らに「寂しいまま、なんて絶対にいけません」と、サヨコは猫を貸す。祖母の遺した一軒家に17匹の猫と住み、見ず知らずの人の寂しさを埋めることを仕事にしている彼女を、市川さんは「傍から見ると、ひとりでも楽しく生きてそうに見えるんですけど、彼女自身は自分は孤独だって感じていると思うんですよね…」と代弁する 。“今年こそは、結婚するぞ”と習字で目標を書いては壁に貼っているのも、孤独から脱したいという願望の現れなのかもしれない。市川さんも、意外にも結婚願望の強いサヨコに共感。「ひとり暮らしを始めた頃は楽しかったと思うんですよね。すべての時間を自分のために自由に使えるという醍醐味もあるし。でも、寂しさって突然にやってくるもので…たまーに寂しくなるんですよね」と、哀愁をふくんだ笑みを浮かべる。

そんなサヨコの寂しさをからかうように、何かとちょっかいを出してくる謎の隣人を、ラジオDJとしておなじみの小林克也が、まさかの女装で演じているのも面白い。「本番で笑わないようにするのが大変でした(笑)。普段のしゃべり方はとても男らしい方なので、なおさら可笑しいんです。サヨコとの絡みも面白いし、何よりもあんなに正直に話してくれる隣人っていいですよね(笑)」と語るように、小林さんの演じる隣人のセリフは笑いと共に心にしっかりと突き刺さる“何か”を持っている。また、17匹の猫たちからは猫と暮らす良さ、動物が与えてくれる癒しを感じるはず。もともと犬派だった市川さんも「猫との距離がぐっと近くなった」と、猫に囲まれた現場をふり返る表情はなんとも和やかだ。

「同居人」のような猫の存在

「サヨコは、猫〜! っていうように極端にかわいがるタイプではないので、ほどよい距離感を保ちつつ、猫は猫、サヨコはサヨコっていう感じで現場に臨んでいました。人でも猫でもすべてを同じ目線で見ることのできるキャラクターなんです。だから、17匹も猫がいても違和感がないというか…。撮影に入る前に監督が、猫に何か強要するということはせず、でも猫待ちということもせず、猫に自然なままでいてもらうスタイルで行きますと話していて、本当にそういう撮り方でしたね」。たしかに、サヨコと暮らす猫たちはペットというよりも同居人のような存在。荻上監督自身が長年猫を飼っているということもあり、彼女がつねに感じていた「猫に癒されたり、猫から与えられたものが多かったので、この映画はそのお裾分けという気分もあります」というメッセージも込められている。撮影を終えた今、市川さんもしっかりとそのお裾分けを受け取り「猫と暮らしたくなりました」と、猫との暮らしに惚れ惚れ。敢えて穴ぼこは埋めないようにしているという彼女の穴ぼこを『レンタネコ』の猫たちがごく自然に埋めたように、この映画を観た人の穴ぼこも、猫と人間、愛しいキャラクターたちがきっと埋めてくれるはず──。

《photo:Yoshio Kumagai / text:Rie Shintani》

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