【シネマモード】『ワン・デイ 23年のラブストーリー』女流監督に訊く、23年の愛の軌跡

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『ワン・デイ 23年のラブストーリー』 -(C) 2011 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
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描かれているのは、“7月15日”だけ。映画『ワン・デイ 23年のラブストーリー』は、運命のその日だけを切り取っていくことで、23年に及ぶある一組の男女、エマとデクスターの愛の軌跡を、独特かつ斬新な手法で描いた愛の物語です。出会い、喧嘩をし、すれ違い、相手への愛を思い知る。積み重なっていく何気ない日々が、どれも貴重な愛の証となっていくさまを、最高にロマンティックで、最高にドラマティックなラブストーリーとして仕上げたのは、ロネ・シェルフィグ監督。コペンハーゲン出身の国際派女流監督である彼女は、『幸せになるためのイタリア語講座』でベルリン国際映画祭銀熊賞、『17歳の肖像』でサンダンス映画祭観客賞を受賞しているほか、アカデミー賞にもノミネートされる実力派です。そこでシネマカフェでは、いま世界が注目するシェルフィグ監督とのインタビューを通して、作品、そして監督自身の魅力に迫りました。

「脚本を読み終えた瞬間に泣いたのよ」

「これはラブストーリーで、とても感情豊かなストーリーで、とても機知に飛んだ脚本なの。この数時間で、エマとデクスターが変化を遂げる20年のドラマを見られるわ。あってはならない悪い決断もあるけれど、2人が味わう幸せや楽しみも多いのよ」。作品についてこう語るシェルフィグ監督。個人的にもとても気に入っているというこの物語は世界中で賞賛されたデイヴィッド・ニコルズの同名小説が原作で、ニコルズ自身が小説を脚本化しています。映画製作が進むと、すぐに監督候補としてシェルフィグの名前が挙がったとか。オファーを受けた彼女自身も快諾したのだと言います。
「初めて脚本を読んだとき、まだ知らない友達が書いたんじゃないかと思ったわ。すごくユーモアが伝わってきたし、エマとデクスターの愛や友情に簡単に感情移入できた。それにとても感動的な物語だから、脚本を読み終えた瞬間に泣いたのよ」。

7月15日だけを23回切り取っていくというユニークな語り口についてはこんな風に捉えているそう。
「主人公であるエマとデクスターは7月15日に大学を卒業する。その日の夜に出会い、関係を結びそうになる。それから同じ日の2人の人生模様を見ていくの。必ずしも毎年2人が一緒にいるわけではないけれど、20年間の同じ日の2人を通して、2人が成長し、それぞれの恋愛体験を通して、お互いに誰よりも愛している存在だと気づいていくのよ」。

結ばれそうで結ばれない、愛しているのに気づかない。そんな2人にもどかしさを感じる人も多いはず。監督自身は、エマとデクスターの関係についてどこに共感したのでしょう。
「答えになっているか分からないけど、私は2人がお互いにいいところを引き出しているところに共感したの。やはりエマはデクスターの自信を引き出したと思うし、デクスターはエマにとって父親以外でいつもそばにいる唯一の男性だった。エマのおかげでデクスターは“愛とは何か?”に気づくのよ。私はこの映画を撮るにあたって、何人かのジャーナリストに“男女の友情はあり得るのか?”と質問したのだけど、その答えは私の口からは言わないわ(笑)。ただ、私自身はそういう男女の友情はあると信じているわ。脚本の中で一番好きだったのが、2人がお互いのことをちゃんと想い合っているところだったの。デクスターはほかの女性と結婚したし、エマと一緒にいないときもあるけれど、この映画の中ではずっと2人の友情が唯一生き延びているの。それがこの映画の素晴らしさなの」。

アン・ハサウェイの個性を通して輝く、ヒロイン・エマ

エマという人物は、まじめでしっかり者。自分の意見も情熱も持ち、倫理観も高く、仕事熱心。「弱点と言えば、大学で一番かっこいい男子学生のデクスターに惹かれているところ」と監督。ともすれば、地味で目立たない女性にも見えてしまうが、そんなエマに息を吹き込んだアン・ハサウェイについての印象とは?
「彼女のこれまでの作品は知っているけど、他に類を見ない、信じられないほど才能豊かな女優で、彼女だからこの作品をうまくやれたと思っているわ。エマが体験する長い間の変化をよく理解している。それを見事に体現しているだけでなく、同じ年頃の女性が誰でも共感できるように演じているわ」。

アンは、たまたま脚本を初期段階で読んでいて、シェルフィグ監督がメガホンを取ることになったと聞くと、すぐにコンタクトしてきたのだそう。
「アンはロンドンまで飛んできて『どうしてこの役をくれないの?』と言ってきたの。アンにはエマのユーモアと強さがある。経験もあって、誰より役の温かさやか弱さを出せる女優よ」。

アンがエマという役を、観る者が感情移入できる存在にしてくれたとシェルフィグ監督。「違う解釈はいくらでもあるでしょ。イギリスの小説は何度も映画化されるから、20年後にはまた違う解釈が生まれるでしょうね。でも彼女は情感がたっぷりで、温かくて、深みがあると同時に、重たくなくて、敏捷性もある。その両方を備えた彼女はまさに映画スターよ。彼女なしではこの作品は想像できない。もちろんキャストによってイメージされるものは違うわ。この手の作品は、違う俳優なら、また違う映画になったのでしょうけど、彼女はこの作品にとって素晴らしい贈り物だったと思う。彼女の経験や才能はもちろんだけど、何より彼女の個性がエマを通して輝いているわ」。

一方、もう一人の主人公であるデクスターが、何かとエマに戻っていく関係についてはこう話しています。
「シークエンスが変わるごとにデクスターは新しい恋人を連れているわ。とても人を楽しませる魅力的な男性で、一緒にいて気持ちのいい人。デクスターはみんなを楽しませるし、そんなに我が強くない。でも後年、彼は辛い体験を通して、自分というものを理解していくの。でもいつもみんなの期待に応える人ね。エマは彼のことを見抜いていると思う。出会った瞬間に彼を分かっている。そして彼を愛する。デクスターも後でその気持ちに気づくけど、最初から彼女のことを愛しているからよ。演じたジム・スタージェスは一貫してデクスターに好意的だったわけじゃないけど、でもスクリーンの中ではデクスターは外見的にはとても上品で、魅力的だったのがよかったわ。ジムが演じてくれたおかげで、さらに楽しめるものになったんじゃないかしら」。

物語や俳優たちの競演はもちろん、激動する時代の変化が楽しめるのも、本作の魅力の一つ。
「マーガレット・サッチャーが首相だった時代や、アメリカではレーガンが大統領だった時代、ちょうどベルリンの壁が崩壊した89年あたりが中心。これがちょうど作品の始まる時期なので色々と事件はあるけれど、ラブストーリー自体はこういった時代背景との繋がりは意識しなかったの。というのも、時代の変化というものがこのストーリーを圧倒することは避けたかったから。衣裳や化粧、小道具など遊べる要素はあったし、ファッションもロンドンぽい感じにしているけど、感情をきちんと引き出すためにそういった要素は敢えて抑え気味にしたの。デクスターの方がエマより時代性と関連していたわね。車だったり、TV局に勤めていたり、音楽的なものだったり。ある意味で彼は時代の被害者というか、犠牲になった部分はあるわ。エマはどちらかというとクラシカルで、フィクショナルなキャラクターだった。彼女はいまの時代に比べて、自分が人生で何を求めているのかを見つけるのに苦労している気がするわ」。

ラブストーリーを1日ずつ切り取る作業

23年間のラブストーリーを切り取っていくというスタイルについて、面白かった点、苦労した点について聞いてみると、「これは本当にいろんなことが楽しめた映画で、フィルムメイキングのいろんな側面を引き出せた映画だったわ」と当時をふり返ります。
「シーンによってはすごく生き生きしてエネルギーあふれるシーンもあれば、もう少しダークで感情深いシーンもあり、いろんな映画的な言語を引き出せたのではと思います。撮影においても、クレーンでダイナミックな雰囲気の中での生き生きしたシーンを撮ることもあれば、それとは対照的な人物のクローズアップのシーンなども撮ったわ。私の他の作品と比べると、色や音楽を多用しているから、いろいろな要素を一貫性のあるものにしなければならなかったの。いろいろな場所で撮影しなければならなかったし、いろいろな人が入れ替わり立ち変わり登場するし、グラフィックデザインにおいても多種多様なものを使用したので、観客が観たときに安心して観られるような、いい作り手が作っていると分かるような、統一感を見せるのに気を遣ったわ。そして、撮影自体は7月から9月まで及んだのだけれど、夏の雰囲気を出さなければならなかったので、順番も前後したしフランスにいる間にパリとブルターニュのシーンをまとめて撮ったりもしました。こういった撮影は役者に負担がかかるわね。時系列で撮影していくのは私の夢でもあって、以前にもやったことがあるのだけど、やってみたら意外とそんなにいいものでもなかったの。いずれにしても、映画の中で時系列の自然さが出ていたのならとても嬉しいわ」。



::アン・ハサウェイ interview coming soon!
《text:June Makiguchi》

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