サラ・ポーリー監督「理由は自分でも分からない(笑)」 夫婦・結婚を描く「本能」

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『テイク・ディス・ワルツ』 サラ・ポーリー監督 -(C) 2011 Joe’s Daughter Inc.All Rights Reserved
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『エキゾチカ』『スウィート ヒアアフター』『死ぬまでにしたいこと』など、数々の秀作の中で、凛々しい存在感を見せていた演技派女優サラ・ポーリー。1999年に脚本・監督を自ら担当した短編映画を発表してからは、カナダのインディペンデント映画界を牽引する新進の映像作家としても注目を集めている。劇場用長編映画デビュー作にしてアカデミー賞脚色賞にノミネートされた『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』に続く最新作となるのが、若い夫婦の関係性を描いた『テイク・ディス・ワルツ』。新作の日本公開を前に、作品について、映画作りについて、胸に秘めたサラの想いを聞いた。

「夫婦関係」を描くことへの本能的な関心

まだ33歳という若さながら、鋭い洞察力と思慮深い演出、的確な心理描写で、その作品には成熟した知性すら感じさせているサラ。映画の題材として関心があるのは、夫婦という関係性なのだという。
「長編を撮る前にも何本か短編作品を撮っていますが、一貫してずっと夫婦の関係とか結婚生活をテーマにしてきて。その理由はなぜだか自分でも分からないんだけど(笑)、長期にわたる恋愛や結婚の関係というのは、一番自分の脆い部分だったり弱い部分、わがままな部分、人間のサガみたいなものが一番出るんじゃないかしら。そういうテーマに個人的に興味を持っているからだと思うの」。

プライベートでは、幸せな結婚生活を送る彼女だが、夫婦関係を描く際には自らの経験が反映されているのだろうか?
「自伝的な映画にはしたくなかったので、敢えて自分の具体的な体験を描くことは避けるようにしているんだけど、今回、ミシェル・ウィリアムズが演じた主人公・マーゴのように何となく満たされない虚しさや心の穴を抱えていて、それを何とか埋めようとする、というテーマに興味があるのよね。埋めようとすることで住む場所を変えてみたり、付き合っている人を変えてみたり(笑)、自分の人生を一転させて満ち足りてなかった部分を埋めたいけれど、必ずしもうまくはいかないというのは、個人的にとても共感できるし、もちろん体験した感情でもあるわ」。

では、リアリティあふれる夫婦の描写は、どこからアイディアを得ているのだろう。
「撮影開始の4週間ほど前から、ミシェルと夫役のセス(・ローゲン)と、お互いがまるで本物の夫婦のように、居心地が良かったりお互いを意識しなくなるほどまでにがっつりリハーサルを重ねていったの。だから本番ではアドリブでの演技もかなり多かった。結婚生活においてはほかの人には死んでも見せないような恥ずかしい行動や素の自分をさらけ出す部分があるので、そのくらい一緒にいてお互い居心地のいいレベルまで持っていくことでリアリティを出すことはあると思うわ」。

アドリブから生まれた、夫婦の会話

アドリブでの演技が多かったとのことだが、印象に残ったエピソードは?
「役者には自由に演じてもらうのがポリシーなので、大体カメラを回しっぱなしにしているの。フィルムが切れるまで10分とか15分とか回しっぱなしにすることが多いんです。その中で印象に残っているのは、まず1つ目に、“寂しい”と言うマーゴに対して“犬でも飼うか?”というくだりは台本にはなかったの。子供を作るかどうかという話に発展するんだけど、あれは脚本にはなくて全部アドリブ。それから、ソファの上でルーが仕事の電話をしているときに、横でマーゴがじゃれ合って邪魔するシーン、あそこも脚本ではト書きで『電話中のルーをマーゴが邪魔する』としか書いてなかったんだけど、カメラを回しっぱなしにして2人に任せたら、面白いシーンが出来上がったの。ミシェルとセスが早い段階からすぐ打ち解けていて、本当にオフスクリーンでも仲良くなれたというのはプラスだったわ。独特の親友のような、いい仲間みたいな雰囲気はそのおかげで出たと思うし、逆に仲良くなりすぎて、恋やロマンスという部分が2人の関係からなくなってしまったというのもすごくよく出ていた気がするわ」。

鶏肉料理研究家という夫・ルーのキャラクター設定も面白い。
「彼の職業を設定するときに、常に家にいる役にしようと思ったの。すごく家庭的な雰囲気のある職業で、だけど同時につまらない男に見える刺激のない職業を考えたときに、料理本を書いている男性、というのを思いついたの」。

主演のミシェル・ウィリアムズは、以前から女優サラ・ポーリーに注目していて、自らが演技をする際には“サラ・ポーリーならこのシーンをどうする?”とまじないのように考えることがあったという。そこで、サラにミシェルの起用理由について聞くと、サラ自身も「彼女の大ファンなの」という答えが。
「特に近年は素晴らしい作品にたくさん出ていますが、彼女にはどこか自虐的な、自分を嘲笑うような雰囲気があるの。そこから生まれてくる弱さや脆さという部分をすごく上手に演じられる女優だと思う。そういう自虐的なところ、自分がダメだと分かっているところを見せることによって、観客がマーゴの取った行動や決断に必ずしも賛同はしなくても、何となく彼女に共感できる、彼女をかわいそうだとつい思ってしまう。そういう部分でもこの役は彼女にピッタリだと思うわ。また、彼女独特の少女らしさ、特に思春期っぽい感じ、大人になりきれない思春期の微妙な感じを彼女はうまく体現していると思う。個人的に思うのは、最近人々の精神年齢が、どうも成長が遅くなっているということ。特に女性は20代後半になっても“私、まだ思春期だわ”と思っている人が多くて、大人になることを先延ばしにしている人が多いから」。

名監督たちから学んだ、映画作りの姿勢

ところで、サラの作品ではキャラクターの心理描写が非情に繊細でリアルだが、それを実現するうえで意識していることは何なのだろう。
「自分で脚本も手がけているという点で、一人ひとりのキャラクターの性格や内面を自分できっちり把握しているというのもあるかと思うけれど、ただ自分自身が女優として長年やってきた中で、時には俳優の方が監督や脚本家よりもキャラクターを理解している部分があると思うの。だから私は監督として、俳優にかなり自由を与えるタイプで、ヘタにこのキャラクターはこういう人物だと説明せずに、自分たちの解釈で演じてもらうように仕向けるのが好き。こちらから感情表現について演技付けをしたということはないわ」。

これまで、女優として数多くの名監督と組んできたサラ。自身の作品づくりで影響を受けたことはあるのだろうか。
「女優としていろいろな素晴らしい監督と一緒に仕事をしてきて、いま監督の立場になって思うのは、役者への接し方や演出の仕方というのは様々なやり方があるのだと学んだこと。引き出しが多くなったとも言えるわ。中でもイザベル・コイシェやアダム・エゴヤンはもちろん、ヴィム・ヴェンダースからはものすごく学ぶことが多かったので、そういう影響や体験は生かされていると思いますね」。



特集:埋められない、この気持ちって?
http://www.cinemacafe.net/ad/waltz
《text:June Makiguchi》

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