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『新しい靴を買わなくちゃ』中山美穂×向井理インタビュー「自然と」縮まった距離

「やりきった感じがします」と力強く言い切った次の瞬間、「いや、そうでもないな」と即座に前言を撤回。落ち着いた口調なのに目まぐるしくて…

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『新しい靴を買わなくちゃ』中山美穂×向井理 / photo:Naoki Kurozu
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「やりきった感じがします」と力強く言い切った次の瞬間、「いや、そうでもないな」と即座に前言を撤回。落ち着いた口調なのに目まぐるしくて、クルクルといろんな表情を見せるのに妙に潔さを感じさせる。中山美穂は奔放だ。向井理は呆れるでもあきらめるでもなく、面白がるでもなくただ静かな笑みを浮かべて見守っている。「ちょっと抜けたところがある」とは、向井さんが中山さん演じる主人公・アオイを評した言葉だが、アオイに中山さんを重ね合わせて出てきた言葉のような気がしてくる。数々のヒットドラマを手がけた北川悦吏子が脚本・監督を務め、岩井俊二がプロデュースのみならず撮影監督としても参加。全編パリでのロケで撮影された『新しい靴を買わなくちゃ』。中山美穂と向井理――最高の舞台で展開する甘さと切なさが入り交る恋のパズルのメインピースを担う、これ以上ない組み合わせである。そんな“最強のふたり”に話を聞いた。

「戦争でしたよね、ホント」(中山)

撮影の初日が中山さんと向井さんの初対面。撮影はテストを殆ど行わないまま、いきなり本番でセーヌ河のほとりでアオイとセン(向井さん)が偶然の出会いを果たすシーンから始まった。中山さんは「前情報を入れたくなかったんです。『はじめまして』の挨拶で目の前にセンくんが現れたって感じでした」とそのときの様子をふり返る。このシーンに限らず、映画を通して2人の距離感が少しずつ縮まっていくさまについて中山さんの口からは幾度となく「自然に」という言葉がもれる。
「2人でそんなに話したことはないですね。次から次へと撮っていかないといけないスケジュールだったので。いきなり本番から始まる環境で、出たとこ勝負のところもあり、ワンシーンごとに互いに探り合って芝居を作っていったんじゃないかと思います」。

向井さんも、中山さんの言葉に頷きこう続ける。
「どんな人なのかな? と探りながらやっているところはありましたけど、考える余裕を与えられない現場でした(笑)。日々セリフの変更があり、現場に入ったらすぐテストもなく本番で、こういう風にしていこうという資料も与えられなかったですから。そうやって過酷な現場を乗り越えていくことで、“戦友”じゃないですが、何か感じるものはありましたね」。

美しいパリを舞台にしたラブストーリーで“戦友”という言葉が出てくるとは意外だが、中山さんも「戦争でしたよね、ホント」としみじみ。特に中山さんが、北川&岩井コンビによる“仕掛け”として強く印象に残っているというのが、アオイとセンがバーを訪れるシーン。「ドアを開けて入っていったらもう本番だったんですよ」(中山さん)、「顔見合わせちゃいましたよね(笑)」(向井さん)。だがこの瞬間、中山さんはある手応えを掴んだという。
「お互いに笑い合っちゃって、そこで『あぁ、大丈夫だな』って思ったの。これは大丈夫、どんな環境でもやっていけるって。あのシーンのことはすごく良く覚えてます」。

中山さんがパリで暮らし始めて9年。この街での撮影ということに特別の思いもあったのでは? 
「そう思ってたんですが、いざ入ってみると“現場”という空気――ずっとやって来た感覚に戻ってしまって、そうなるとどこで撮影していても同じなんですね。全てが終わって初めて『あ、パリだったんだ』という感覚でした」。

セーヌ河にエッフェル塔に凱旋門と次々とパリの名所が映し出されるが、向井さんは単なる“観光映画”ではないところがこの映画の魅力だと強調する。
「もちろんパリのロケーションは映画にとって武器だと思いますが、そこに媚びて『パリってすごいでしょ?』という感じがない、浮ついてないところがいいなと思います。パリで撮影となると(観光名所を映し込んだ)簡単な方に行きがちだけど、あまり分かりやすい方向に行ってない。ライティングもキレイですが、天候に恵まれたところもあるし、何より岩井さんに自然光をうまく使っていただいた。パリで撮影しているというよりも、たまたまそこがパリだった、それがカッコいいなと思います」。

「常にもっと良い“靴”を」(向井)

「ある程度、年を重ねていくと誰でも1つや2つ、悲しい出来事がある」――。中山さんはひとりパリに暮らすアオイの生き方についてそう語る。一方で、演じる上では「そういう背景をアオイは背負っているけど、あまり重くしたくなかったし、笑顔で表現できればと思った」とも。中山さん自身、同じ場所で立ち止まっているような感覚にとらわれることは? そこから“新しい靴を履いて”歩き始めた経験は? そう尋ねると、少しだけ困ったような表情で「ありますよ」という答えが返ってきた。ぜひともそれが何かを教えてほしいのだが…。「でもなぁ…」と少し考え込むように間を置いたかと思うと、突然フッと感傷を断ち切ったかのように優しい笑みを浮かべてこう続けた。

「この作品に出させていただいて、撮影が終わって映画が完成して、私自身が“新しい靴を買わなくちゃ”って背中を押してもらった気がしてますね。何だろう…? いままでとはテイストが違う作品で、すごく自然に演じられたこともあり、いろんな出会いもあって…ミラクルな感じがしてるんです。いい経験をさせていただきました」。

同じ問いを向井さんにもしてみよう。ここ2年ほど常に映画やドラマに途切れることなく出演し続けており、逆に「同じ場所に留まり続けること」が難しい状況であることは承知しているが…。
「立ち止まって…うーん、あるような、ないような(笑)。仕事をしているとやはり毎回、現場は変わって、何か月かごとに違う役柄で違う職業を演じるのでそんなにゆっくり立ち止まっているということがない気がします。ただ、どんどん違う靴を履いて歩いて行かないといけないとは思いますね。成長して、常にもっと良い靴をとは思います。自分自身をそう仕向けているところはありますね」。

最後に“恋愛の神様”北川悦吏子が紡ぎ出すセリフについて。「セリフが多い役だった」と向井さんがふり返るように、アオイとセンは何気ない冗談から相手の気持ちを確かめるかのような駆け引き、心の内の本音まで多くの、本当に多くの言葉を交わす。2人のお気に入りのセリフややりとりは? 向井さんは、センがアオイさんとお酒を飲む中でいろんな思いを吐き出していくシーンを挙げる。
「多分、そういうことをしない人なんだろうと思ってたので、それをアオイさんに対してだけやるのは何でなんだろう? と考えたり。彼の悩みを僕が100%理解できるわけじゃないけど…でもなんか分かる。全然知らない人でも共感できる言葉、悩みがあるその一連の流れが好きでしたね」。

では中山さんは?
「どれも好きですが『たいていのことは大丈夫よ』というセリフ、あれはなんか好きでしたね。実感こもっちゃいました。うん、大丈夫ですよ(笑)」。



特集「パリ、恋、4人の場合」
http://www.cinemacafe.net/sweet/shoes/
《photo / text:Naoki Kurozu》

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