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ジャン・レノ インタビュー 三ツ星の人生の秘訣は、おいしい料理と気の合う仲間

パリの超高級レストランで20年間“三ツ星”の栄光を守り続けてきたシェフのアレクサンドルと、天才的なセンスを持ちながらチャンスに恵まれない若手シェフのジャッキー。水と油のような2人が出合い、存亡の危機にあるレストラン再興を目指す『シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』は、笑いと人情を盛り込んだフランスらしいコメディ作。威厳と親しみを兼ね備えた魅力的なシェフ、アレクサンドルを演じたジャン・レノに話を聞いた。

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『シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』ジャン・レノ
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  • 『シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』 -(C) 2012 GAUMONT - TF1 FILMS PRODUCTION - A CONTRACORRIENTE FILMS
  • 『シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』ジャン・レノ
パリの超高級レストランで20年間“三ツ星”の栄光を守り続けてきたシェフのアレクサンドルと、天才的なセンスを持ちながらチャンスに恵まれない若手シェフのジャッキー。水と油のような2人が出合い、存亡の危機にあるレストラン再興を目指す『シェフ!〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜』は、笑いと人情を盛り込んだフランスらしいコメディ作。威厳と親しみを兼ね備えた魅力的なシェフ、アレクサンドルを演じたジャン・レノに話を聞いた。

取材部屋に出入りするスタッフたちと「アリガト」と日本語まじりで談笑するジャン。こちらに気づくと、笑顔で「イコ、イコ」と言いながら、早速語り始めた。
「これは対照的な2人の出合いの物語だ。一人はスランプに陥り、もう一人は上昇気流に乗っている。年寄りと若者、愛を失くしてしまった男と、もうすぐ子供が生まれる男。それを料理の世界を通して描いている。私は料理というのは、人間そのものと言えると思っているんだよ」。

素材にさまざまな創意工夫をこらす料理という作業は、なるほど人間ならではのもの。ジャンはさらにシェフと俳優も似ていると話す。
「どちらも表現するのが仕事だ。今回シェフを演じるために、どんな準備をしたのかとよく聞かれるが、私は『彼はどんなシェフなのか?』ではなく、『どんな男なのか?』と考えるようにした。私はおいしいものが好きでレストランにもよく行くし、シェフの友人も大勢いる。だからこそ、技術的に彼らを真似るのが無理だと分かっていた。彼らのような包丁さばきを2か月で身につけるなんてできっこない。だが、窮地に立たされた男を演じることはできる。それが私のやったことだ」。

友人たちの仕事ぶりを通して、料理の世界の厳しさも理解している。
「やる気がない者の居場所はないよ。調理シーンを撮影した料理学校には生徒の若者たちが大勢いたけど、みんな情熱を持っていた。規律ある軍隊のようだよ。シェフは絶対的な存在で、わずかなミスも許さない。料理に不手際があったりして、三ツ星レストランが星を1つ失ったとすると、損失は年間30万ユーロになるっていう話だ。厳しくもなるだろう(笑)?」。

昔気質ゆえにオーナーからは時代遅れの烙印を押されかけ、絶体絶命のアレクサンドルが愛娘に朝食を作りながら、「昔は料理が楽しかった」と呟くシーンがある。その感覚は「『グラン・ブルー』が大ヒットした直後に私も味わった」とふり返る。
「すべてに興味を失った時期があった。有名になるにつれて周囲の自分を見る目が変わってくる。それを理解し、慣れていかなきゃならない。だが同時に、スクリーン上の姿は本当の自分じゃないことも忘れてはいけない。本当の自分はここにいるんだから」と自分の胸を叩いてみせる。「アレクサンドルは才能あるシェフで、料理が大好きだった。どうして自分を見失ったのか? お金や、料理以外のいろいろなものを気にするようになったからさ」。

一方で、腕は確かだが、自信過剰なジャッキーは「自分のためだけに料理をしている」とプロ意識の欠如を仲間から指摘される。「彼はシェフよりも料理人気質が強すぎるんだね。アレクサンドルといいバランスがとれる(笑)」。

ジャッキー役のミカエル・ユーンとの息はぴったりだ。
「ミカエルのことは何年か前から知っていた。とてもいいやつだよ。演技はダンスのようなものだ。パートナーがいいダンサーなら、自分もダンスが上手く見える。経験を積めば、一人でどう踊ればいいかも分かるようになるけれど、やっぱり踊りのうまいパートナーはいた方がいいね。その方がずっと楽だ(笑)」。

2人とも着物がよくお似合いでした、と日本人に変装するシーンに言及すると、笑いながら「あれは私のアイディアなんだ」と話してくれた。
「脚本では、ライバルの店を偵察するために女装するとあったが、それは別の作品でもうやったことがあったし、それほど面白くない。日本の鎧をコレクションしている友人がいたので、じゃあこのシェフは着物を集めていることにすれば? と提案したら、監督が喜んでくれてね。で、日本人になったわけさ」。

ダニエル・コーエン監督とは撮影前に話し合いを重ねたと語る。
「毎週土曜日に脚本会議さ。フランスでは珍しいことだと思う。アメリカ映画との大きな違いだ。アメリカでは納得いくまで何度も脚本を練り直す。『マディソン郡の橋』なんて、15年くらいかけたって話だ。いい脚本なら問題ないんだよ。ジャック・オディアールの脚本なんて最後のページまで完璧だ。でも、それは滅多にないこと。脚本は何度も練り直すことが大切だ」。

出演作を選ぶときは「つい“人”を優先してしまう」とも。「いいストーリーが大切なのは分かってる。でも、好きな仲間から『これやろうよ』と言われると、断れない。もう一つは、自分の本能を信じることかな。うまくいくこともあるし、間違えたと思うこともある(笑)」。

やはり大切なのは、人。「3か月間一緒に仕事をすることになるからね。もし嫌だと思ったら、行っちゃだめだ。いくらギャラが良くても、だ。毎朝6時に起きて働くんだよ。金のため“だけ”だったら、死んじゃうね」と言うと、豪快に笑った。

《冨永由紀》

好きな場所は映画館 冨永由紀

東京都生まれ。幼稚園の頃に映画館で「ロバと王女」やバスター・キートンを見て、映画が好きになり、学生時代に映画祭で通訳アルバイトをきっかけに映画雑誌編集部に入り、その後フリーランスでライター業に。雑誌やウェブ媒体で作品紹介、インタビュー、コラムを執筆。/ 執筆協力「日本映画作品大事典」三省堂 など。

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