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【MOVIEブログ】24日/ロッテルダム

24日、木曜日。4時に目が覚めてしまったものの、何とかもう一回寝ることに成功し、6時に起床。7時にパンとチーズとハムの朝食をたらふく詰め込むのは、例年通り。昼も夜もまともに食べるかどうか分からないので、朝はたくさん食べるのでした。パンが美味しい!

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『Halley』
『Halley』
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24日、木曜日。4時に目が覚めてしまったものの、何とかもう一回寝ることに成功し、6時に起床。7時にパンとチーズとハムの朝食をたらふく詰め込むのは、例年通り。昼も夜もまともに食べるかどうか分からないので、朝はたくさん食べるのでした。パンが美味しい!

少しパソコンをいじってから、9時に外へ。冬のヨーロッパは、9時でもまだまだ薄暗い。気温は0度くらいかな。僕は寒いのは好きなので、あまり気にならない。変に生暖かいよりずっといいですね。いよいよ9時半から、今回の出張の記念すべき1本目で、オランダ映画のワールドプレミア上映を、業務試写で。

が、記念すべき1本目だから良いわけでは当然ないですね。スランプに陥った中年男性作家が、一方的な愛に溺れて破滅していく様をひたすら描いた本作は、多少画面に工夫を凝らしたものの、シナリオの平板さは如何ともし難い。しんどい。

続いて、また業務試写で、コンペティション部門の『Halley』というメキシコ映画。うん、さすがコンペ、これはなかなか素晴らしい。スポーツジムの警備員の男が主人公で、どうやら体が不調らしく、動作がとにかく緩慢で、ゆらゆらと歩き、まるでゾンビのよう…。それもそのはず、彼は本当にゾンビであることが分かってくる。体は崩壊しつつあり、帰宅すると傷口から湧いてくるウジを除き、点滴をして何とか日々をしのいでいる。

淡々とした描写に貫かれた、徹底したリアリズムの厳然たるアート映画で、ホラーの要素は一切なし。死んでも生き返ってしまう主人公は、不死身の肉体を持ってしまったが故に永遠の地獄を生きており、肉体と精神と魂と苦しみと、そしてキリスト教を通じた救いの有無が描かれる。度肝を抜く発想と、どこか形而上的な魅力を備えたこの作風は、やはりカルロス・レイガダスの影響下にあるのだろうか。素晴らしい。中南米の作家映画の相変わらずの充実ぶりを証明する1本だ。

それにしても、ゾンビ映画というジャンルが持つ奥深さには、今さらながらに驚かされるばかり…。

続いて、中国の現代アートの鬼才、アイ・ウェイウェイの新作『Ping’an Yueqing』。今作は、ある村の村長が交通事故で死んだ事件に、実は当局が絡んでいるのではないかとの疑惑を取材していくドュメンタリー。アイ・ウェイウェイの作品は機会がある限り見て行きたいのだけれど、本作は画面の繋ぎが目まぐるしく、証言に次ぐ証言で字幕を追うのもつらく(とても長いのに一瞬しか表示されない英語字幕)、不覚ながら疲れてしまった。再度、腰を落ち着けて見たいものだけど、次の機会があるかどうか…。

さて、同じ劇場の別のスクリーンで、『おだやかな日常』が上映されていたので、プロデューサー兼主演女優(のひとり)の杉野希妃さんのQ&Aをこっそり拝見。内田監督は新作の撮影で来ることが叶わなかったとのことで、杉野さんとエグゼクティブ・プロデューサーの小野さんがロッテルダムに参加なさっています。

実は、杉野さんから「ヤタベさんも出演者なのだから、一緒に舞台挨拶、出ません?」と誘われていたのだけれど、さすがにそれは丁重に辞退! 声の出演で作品に参加させてもらっただけでも光栄なのに、勘違いして調子に乗ってはいけないぞと、ひたすら自重であります。

16時半から、「Spectrum」という有名監督やその予備軍が集う部門で、『The enclosure of times』というフランス映画。監督のJean-Charles Fitoussiという人を僕は知らなかったのだけど、ストローブ=ユイレに師事していたとのことで、なるほどミニマルな画面に込められた映像がとても美しい。

フランケンシュタインの末裔とされるマッド・サイエンティストが主役のひとりで、しかしこれまたジャンル色は皆無な、パラレルワールド的SF風味のアート作品。直線的な物語は、あるようでない。フィックス画面のモンタージュが確信的なリズムを刻み、前半と後半とで映画のペースが変調し、とにかく想像力が刺激されて心地よい。

そして18時半から、「Bright Future」という若手監督を集めた部門の『Fine, Thanks』というスロヴァキア映画で、これはワールドプレミア。社会が経済危機に見舞われる中での、複数の家族の崩壊の物語。決して悪くはないのだけれど、あまりにペシミスティックな内容に、途中からいささかうんざりしてしまう…。

時差ボケの影響かな?意欲的な作品なのに、必要以上に疲れてしまい、このスロヴァキア映画にはとても申し訳ない気持ち。21時45分からもう1本見る予定だったのだけれど、どうにも眠くなってしまったこともあり、初日から無理するのは控えることにして、宿へ。

メールとこのブログを書いて、段々とモウロウとしてきたので、今日は我慢せずに早めに寝てしまおう。
《text:Yoshihiko Yatabe》

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