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【MOVIEブログ】26日/ロッテルダム

26日、土曜日。今日も5時半に目が覚めてしまう。早起きなのはいいのだけど、夜がもたないのだよな…。今朝はゆっくりパソコンに向かい、少し溜めてしまった仕事を処理して、外へ。体感温度は、零下2~3度くらいかな。

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26日、土曜日。今日も5時半に目が覚めてしまう。早起きなのはいいのだけど、夜がもたないのだよな…。今朝はゆっくりパソコンに向かい、少し溜めてしまった仕事を処理して、外へ。体感温度は、零下2~3度くらいかな。

本日1本目は、10時半から。「Bright Future」部門で、メキシコのエンリケ・リベロ監督による『Mai morire』という作品。リベロ監督は前作『パルケ・ヴィア』(08年)がロカルノ映画祭のグランプリを受賞し、同年の東京国際映画祭でも上映され、来日も果たしています。メキシコの期待の若手として僕もとても期待している監督のひとりですが、2作目を作るのに4年かかったことになるのだなあ。本作は昨年11月に行われたローマ映画祭で上映され、ローマに行けなかった僕としては、今回のロッテルダムで最も楽しみにしていた1本。

冒頭、朝靄が立ち込める川面を静かに進む舟からのショットが、もう素晴らしい。息を呑む美しさ。ああ、映画を見る歓びに震えるのは、こういうショットに立ち会った時だと、心の底に感動がさざ波のように広がっていく。もう、このオープニングショットだけで、今年ロッテルダムに来た甲斐があったというものだ…。

年老いた祖母の面倒を見るために、田舎の実家に都会から戻ってきた女性の物語。文明から取り残されたような、貧しい土地での生活。土地に残る風習、死者との対話、消えゆく祖母の命。『パルケ・ヴィア』に見られた衝動的な暴力性は影を潜め、リベロ監督の新作は女性映画の装いをまといつつ、日常と「あちら側」をつなぐ川を媒介に、現実と夢、生と死、そしてその先に広がる人生を静かに見つめるまなざしを備えていた。ああ、これはいい。

上映後、4年振りにリベロ監督と感動の再会。「またトーキョーに行きたいよ!今作の方が前作より日本人に届くと思うんだ!」と監督。「是非来てほしい!」と僕。

続いて、13時から、バフマン・ゴバディ監督の『サイの季節』。昨年の東京フィルメックスでも上映されていますね。僕は見逃して悔しい思いをしていたので、今回見ることが出来てよかった。

気付くと、あっという間に夕方になっている。16時から、コンペ部門のアメリカ映画で、『It felt like love』という作品へ。現在開催中のアメリカのサンダンス映画祭にも出品されていて、エリザ・ヒットマンという若い女性が監督。

14歳の少女がヒロインの、青春前夜の時期の物語。夏休み。性に興味を持ち始め、背伸びして危ない体験に手を出しそうになるものの、やはり最後は踏み切れない、でもほんの少しだけ大人に近づく、そんな多感な時期を繊細に描いた内容、と言えばいいかな。アップを多用した手持ちキャメラのスタイルは、新鮮味こそないものの、低予算で若い監督が長編を撮るには有効な手段なのかもしれない。

続いて、18時45分から、またコンペ部門で『Soldier Jane』というオーストリアの作品。これが、何とも「人を食った」としか呼びようがない内容とスタイル!

富裕階級と思しき上品な中年女性がヒロインで、でも行動がいささか怪しい。高級ドレスを買うものの、店から出ると捨ててしまう。やがて、実は詐欺まがいの行為で金を稼いでいる存在らしいということが分かってくる。しかし、都会での生活に次第に追い詰められた彼女は、山に入り、消えていく。すると映画はいきなり転調し、舞台は農家に移る…。んー、これでは全く要約になっていないな。とにかく、何とも説明のしようがないのが特徴。

ドライでブラックで、どこか不条理なユーモアらしきものが漂い、展開はほとんどシュール。省略を多用し、観客の想像力を刺激しながら、ガシガシ画面を切り替えてくる。劇中ではゴダールやドライヤーが引用され、ダニエル・ホルス監督は相当な映画おたくに違いない。センスで撮っている作品、といったら監督は怒るかな。監督は、ウルリヒ・サイデル監督一派と聞いて、おおなるほど、という感じ。

上映後のQ&Aを聞いてみると、当初から脚本はなく、映画を作る「哲学」のもとにキャスティングを行い、俳優たちの実際の生い立ちやバックグラウンドを聞きながら、それをキャラクターに反映させて映画を作っていったとのこと。この分かったような分からないような製作プロセスも、何やら人を食っている。伝えたかったのは、「人間は何を欲するか」だそうな。とにかく、見応えがあり、力量があることも分かり、そして面白いことは確かなので、今後に注目することにしよう。それにしても、さすがロッテルダムのコンペ、今年も色々あるなあ。

本日最後は、21時45分から、「Bright Future」部門のブラジル映画で『Rio belongs to us』という作品。奇妙な、ミニマルな、ホラー風味のラブストーリーといった風情の実験的作品。この時間帯にはいささかつらかった…。

一日が早い。充実しているからなのか、それとも映画に浸かっていると時間がねじれてくるからなのか…。23時半に宿に戻り、本日も抗い難い眠気にKO。
《text:Yoshihiko Yatabe》

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